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そもそも学校ビオトープとは その3

次の2冊の本を参考にして、学校ビオトープについて考える3回目。
・杉山恵一・赤尾整志監修(1999)『自然復元6 学校ビオトープの展開ーその理念と方法論的考察ー』信山社サイテック
・山田辰美編著(1999)『子どもが変わる 学校がかわる 地域が変わる ビオトープ教育入門』農文協
 (書名が長いので、これから、前者と『学校ビオトープの展開』後者        を『ビオトープ教育入門』と表記します)

考えておきたい学校ビオトープの意義

 2回目に、今までの校庭と学校ビオトープの比較表を載せました。
 そこでは、自然の復元だけでなく、地域に開かれた学校という点も重要と述べました。
 3回目では、「学校ビオトープの意義」についてもう少し考えてみます。
 学校にビオトープをつくり、持続可能性を考える際に、優先順位をつける場面に遭遇することもあります。「学校ビオトープの意義」を学校の関係者で考えておく必要があります。

ドイツからの影響

学校全体がビオトープ
 ビオトープには、環境先進国であるドイツの影響があります。
 初期に学校ビオトープを進めたメンバーは、ドイツの学校を視察し、大いに刺激を受けたようです。
 『学校ビオトープの展開』には、第3部に「ドイツの学校ビオトープー事情と事例ー」という章(p.197~214)が設けられ、成瀬修一氏(東海大学短期大学部、当時)が執筆しています。そこでは、 日本では、池を造成しその周囲に植物を植えたような、学校の一部をビオトープにした例が多いのに対して、ドイツでは、学校の敷地のいたるところに、緑地などを設けて生物の生息地をつくり、学校全体がビオトープ化しているといい、事例を紹介しています。さらに、学校全体がビオトープ化すれば良いわけでなく、ビオトープがネットワーク化していることにも注目しています。

法律に明記
 『ビオトープ教育入門』でも、塩瀬治氏が当時勤務していた自由の森学園高校の事例を紹介する中で、ドイツのビオトープ運動について書いています。ドイツの連邦自然保護法の中に「開発とは、最後はもう一度、自然を復元することで、終了する」(p.211)という逆転の発想があって、実際に校庭のコンクリートをはがして緑地にした例を紹介しています。戦後、ドイツも急速に自然が破壊され、人間が人間として生きるために自然が必要との認識です。
 塩瀬氏は実際に生徒とドイツに行き、このようなビオトープの実態を見聞きしたことが、学校でビオトープをつくる動機付けになったと書いています。

 また、同書の「学校ビオトープの目的と意義」のところで、山田辰美氏(常葉短期大学、当時)が、「学校をビオトープ化する一番の目的は、少年たちの攻撃性を抑制することである」(p.17)、ベルリンの行政組織の代表者のことばを紹介しています。

学校ビオトープの意義は?

 予算や労力、スペース、実際に管理する人など、学校にビオトープをつくり、持続して行くには、かなりの制約があります。
 今までのことから、意義をざっとまとめてみました。
 ①学校にある地域に住む生物がくらせるようになっているか。
 ②草木、樹木、植物、昆虫、魚などに子どもが観察したり、体験したりで きるか。
 ③ビオトープができることで、地域とのつながり、関心が深まるか。緑と人のネットワークができるか。
 ④知育だけでなく、自然を感じ、精神的に穏やかになるか。癒やしの場になっているか。
 特に④は、実際に学校にビオトープをつくって実感しました。
 ①~④は、互いに関連しています。学校によって重みはちがうかもしれませんが、試行錯誤しながら維持管理する場合、念頭に置いてほしいと思います。

自然環境復元入門

 私自身がビオトープを知ったのは、杉山恵一著『自然環境復入門』信山社サイテックという本に出会ったからです。ドイツの影響を強調しましたが、日本でも似たような動きがあったのです。次回にこのことについて書きたいと思います。


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