ヨコヅナサシガメの越冬集団 ~ 黒いかたまりがモゾモゾ動く
樹木の名札をそっとはずしてみると
冬に昆虫を探すのは難しい。そんな時、樹木のプレート、つまり名札をそっとはずしてみることをお勧めします。写真の上のパネルでは、バネ状のワイヤーで止まっていて、名札を裏返しするのは簡単です。すぐに元にもどせます。
かわいらしいテントウムシが2,3匹じっとしていることもあります。黒地に赤い斑点を持つタイプのテントウムシ。一般的な模様のナミテントウです。可愛らしい昆虫です。
同じ黒地に赤色の組み合わせでも、これから紹介するヨコヅナサシガメの場合は印象が全く違ってきます。名札を開けると、黒くてモゾモゾ動くかたまりが見つかることがあります。かなり気持ち悪いです。見つけなければよかったと思うこともあります。遭遇する頻度も高いです。
ヨコヅナサシガメの越冬
ヨコヅナサシガメは、幼虫の時期に集団で体を寄せ合って越冬します。エサの少ない冬季に、幹の少しくぼんだところや、名札のウラなどでその様子を見ることができます。何百匹もぎっしり固まっているとぞっとします。そうは言っても虫好きの私はしばらく観察してしまいますが・・・
ヨコヅナサシガメとは
ヨコヅナサシガメはサシガメの仲間。漢字で書くと刺亀虫。植物食の多いカメムシ類の中で、サシガメは動物食です。カメムシ類特有のストロー状の口器で、先のとがった口器を獲物に差し込んで体液を吸います。ヨコヅナサシガメは日本で最大最強の種類ですが、「ヨコヅナ」の名の由来は強いというより、成虫の体色と行動から来ています。成虫になると、脚の基部と腹部が赤色で、腹部には白線が走ります。この体色と敵を威嚇する姿が、化粧まわしを着けた横綱の土俵入りを思わせるからだだそうです。
5、6月になると、越冬した幼虫は脱皮し、成虫になります。樹木の幹にいるガやチョウなどの幼虫が餌食になることが多く、樹木にとっては、「益虫」という面もあるかもしれません。体の硬いゴミムシやハムシ類の成虫もエサになることもあり、幹の下で体液を吸われた無残な姿を見ることもあります。
また、脱皮直後は鮮紅色なので、良く立ちます。新種として博物館などに持ち込まれることもあるそうです。
ヨコヅナサシガメは外来種
モンゴルなど外国からの力士が横綱になることも珍しくなくなりました。こちらのヨコヅナも外国から来ました。ヨコヅナサシガメは中国や東南アジアを原産国とし、日本には1928年九州で発見され、少なくとも大正期に九州地方に侵入してきたと推定されています。その後の分布の拡大はゆるやかでしたが、1991年に横浜市で発生が確認され、1995年には栃木県で確認。東京区部では2004年に確認されました。ちなみに幼虫がゴミムシをエサにしている上の写真は、2008年4月に撮影したものです。このころには普通に見られる種になっています。
これから持っと増えるのか
ヨコヅナサシガメは、何でもエサにする傾向があるようで、特に樹幹では、ヨコヅナサシガメがいると他の昆虫はいなくなってしまうか心配です。ある外来種(ヒロヘリアオイラガ)が減るという報告もあります。ヒロヘリアオイラガの幼虫がケヤキ、サクラ、カキノキの葉を食害するので、ヨコヅナサシガメがこの害虫の個体数をコントロールしている可能性もあるそうです(中野、瀧本2011)。
よく行く公園では、ヨコヅナサシガメは一時よりは増えていないようです。しかしこれは、エサとなる昆虫やクモが少なくなっているからかもしれません。冬は昆虫を探すのは難しい季節です。この強欲な外来種でもいるだけで、ほっとしてしまう自分はどうかなと思いますが・・・
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