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酔って自分の話をした話

週3で飲みに出歩いていた楽しい20代後半に起こった事。

3人で出掛けるのが定番だったけれど、最初の店で飲んだ後、飲み足りなければ次の店へ、食べ足りなければラーメン屋へ、帰りたければ帰る、っていう感じが心地よかった。

その日は3人とも、もっと食べたいモードだったのでラーメン屋へ。
カウンターの私たちの隣にはおじさんが2人でラーメンを食べていた。(いつも思っってたけど50〜60代になって日を跨いでラーメン食べれる大人たちすごいよな)

私の隣に座ったおじさんが突如喋り出す。
「今度娘が結婚式するんだよ。ちょうどお姉ちゃんくらいの歳なのよ。娘は結婚式に向けて食器とか一生懸命選んでるんだけどさ…俺はちょっとした目利きで、そういう商売もしてたからいいものがわかるんだ。娘にこっちの方がいいんじゃないかとか言うと本当に怒ってさ…全然俺のこと相手にしてくれないのよ。そんなに俺のこと嫌いなのかなって悲しくなっちゃって」

こういう話っていうのはタイムリーにくるもんで、誰だって音楽を聴く時、映画を観るとき、匂いをかぐ時、自分の経験とかに重ね合わせて勝手に感銘を受けたりセンチメンタルになったりするものだよね。

おじさんがいきなり喋り始めたあの日は、私が両親にツンツンしたりイライラした態度を取ってしまうのって、結局絶対的な味方である存在にただ甘えているだけなんだなーなんて、反省していた時分だった気がするんですよ。酔ってたからどうせテキトーな記憶なんだろうけど。

「おじさんの娘さんはさ、おじさんが目利きで、自分より物の価値がわかるってことちゃんと分かってるからもどかしいんだと思うよ。自分の叶えたい理想の結婚式があるんだろうし、自分の気持ちも優先させて欲しいって思ってるんじゃないの?そして冷たい態度とったりするのはさ、娘さんが心のどこかでおじさんに甘えてるからなんだと思うよ。わかって欲しいのに、って思ってるんだよ」

それを聞いたおじさん、めちゃくちゃ喜んでたんだよ。だからこの時のことよく覚えてる。「お姉ちゃん、いいこと言ってくれるな、そうだな、そうなのかもしれない!」なんて。

「あんた、飲んでる時も仕事みたいなことしてんのウケるね」って友だちの声が横から聞こえた。私が酔ったおじさんの愚痴を聞いてあげてるように見えたんだよね。本当はただ酔って自分の話をしていただけなんだよ。おじさんもまた、自分にとって都合よく私の話を咀嚼した。

そして娘さんはきっと、このおじさんに甘えてるわけでもなんでもなくて、ただ口だけ出してくる飲んだくれ親父に嫌悪感を抱いていただけだったのかもしれないし、なんならその可能性の方が高いだろうな。今思えば。

人の親になってみて、自分の親のことを想う時間が増えた。そんな時にこのおじさんとのやりとりをふと思い出したりして。

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