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<徒然日記#9>徳島県上勝町 ゼロ・ウェイストな旅の記録
ゼロ・ウェイストの町 徳島県上勝町
すでに3ヶ月以上も前のことになりますが、徳島県神山町でのプログラムに参加した後、隣町の上勝町に足を運びました。この町は神山町よりもさらに小さく、人口1500人程が暮らしています。
一方で、この町はゴミに対してかなり先進的な取り組みをしており、町として日本ではじめて「ゼロ・ウェイスト宣言」をしています。
実は、私がこの町を訪れるのは二回目。6年前、以前の会社を辞めてすぐに四国ぶらり旅に出掛けた際に、この町に立ち寄りました。その時に見たのは、山奥に広がる美しい棚田や、山犬嶽という苔むした森。生命の神秘を肌で感じることのできる場所でした。
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そんな美しい自然をもつ上勝町が、「ゼロ・ウェイスト宣言」を採択するのは必然だったのかもしれません。上勝町の「ゼロ・ウェイスト宣言」の内容は、以下のようなものです。
未来の子どもたちにきれいな空気やおいしい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のごみをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)を宣言します。
1 地球を汚さない人づくりに努めます!
2 ごみの再利用・再資源化を進め、2020年までに焼却・埋め立て処分をなくす最善の努力をします。
3 地球環境をよくするため世界中に多くの仲間をつくります!
豊かな自然と美しい風景の中でこそ、循環することのないゴミの存在に対する違和感が芽生えたのかもしれません。
そして、この宣言には、単なるゴミへの対処だけでなく、ごみを出さない社会のためには、生産や流通、消費のシステムや社会全体が変わらないといけない。意識の高い仲間を増やし、そのネットワークを世界に広げていく必要がある、という想いが込められています。
よく耳にする「ごみゼロ運動」というとゴミ拾いをして町の美化を行うなどのイメージがありますが、この「ゼロ・ウェイスト宣言」はより上流側へのアプローチを意図しています。
後述しますが、上勝町では現在のところ80%程度は再資源化することができていますが、残りは焼却・埋め立て処分が避けられない状況です。残りを達成するには国や企業を含めた社会全体が変わらないといけません。そういった社会への問題提起の意味をも持つ宣言であるというところが特徴です。
また、世界への発信も宣言の中で謳われています。これは、一自治体だけでできることには限りがあるという自覚を表すと共に、自分の地域だけの自己満足的な活動では終わらせないという決意を示すものです。
では、実際に上勝町ではどのようなゴミ収集が行われているのか。
一般的にゴミというと決められた日に袋に入れて指定場所に出すというイメージがありますが、上勝町では町内のゴミステーションにゴミを持ち込み、決められた分別方法に従ってその場で分別をしていきます。現在45分別と細かく指定されているのですが、これはそれぞれの品目によって再資源化の処理方法が異なり回収業者が変わるためです。
持ち込み式であること、また細かい分別が決められていることで町民の負担は増しているかもしれませんが、様々なサポート体制もあります。まずは、回収時間中は常時スタッフがいて、分別で悩むことがあったらサポートしてくれます。また、自分でゴミステーションに来るのが大変なお年寄りの方へは自宅へ伺う回収サービスもあるそうです。
そして、私がビックリしたのはここから。各分別カゴに貼ってあるプレートには、分別種類の他に緑もしくは赤の枠で囲われたある数字が記載されています。これは、資源回収によって発生する収支を示します。
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例えば、上の写真の金属製キャップの場合、緑枠は回収することによって町にとっては1kgあたり10円(スチールの場合)となります。反対に、プラスチック製キャップの場合は赤枠なので1kgあたり0.51円の支出となります。この金額は輸送費も含めた値段なので処理施設が遠方にしかない場合は町にとって多額の支出となってしまうそうです。
こうやって、自分の出すゴミが町の収支にどれくらい影響が出るかを見える化している取り組みは、ゴミを出す側にもモチベーションを与えますよね。
他にも、回収に訪れる度にポイントが付与されて、貯まったポイントは新聞紙を縛る紙ヒモなど(ゴミにならないもの)と交換できる制度もあり、これも嬉しい取り組みなのではと思いました。
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一方、私が気になったこととして、分別の数も多く、ゴミをステーションに持ってこないといけないことで、中には面倒と思う人が現れて最悪不法投棄に繋がってしまわないのか、という点です。
この点について質問をしてみたところ、やはり一時的にそういった不法投棄が増えた時期もあったようです。それに対して、何が障害なのか住民とじっくり話をして、例えばゴミステーションの稼働時間が短いなどの意見があった場合、稼働開始を朝7時半からにしたり土曜日も稼働させるなどして、対策をとってきたそうです。
また、山林の多い上勝町ならではだと思うのですが、有志の住民の方が山道を歩いて「ヤッホー」がうまく鳴り響く場所を「ヤッホーポイント」として登録して、山道を歩く人を増やし、不法投棄のされにくい環境をつくっていったのだとか。とてもユニークで素敵な対策ですね。
ゼロ・ウェイストな体験 <ホテル編>
さて、上勝町では町民ではなくても、ホテル等での滞在を通じてゼロ・ウェイストな体験ができるようになっています。
このゼロウェイストセンターの建物は、上から眺めると「?」の形をしているのですが、クエスチョンマークの点の部分はゼロウェイストホテルとして滞在できるようになっています。わたしはここに一泊してきました。
まず、ホテルのチェックインをすると、滞在期間に使う石鹸の量と飲み物の量を決めます。石鹸は、その場でチーズのようにカットして部屋に持っていく仕組みになっていて、飲み物は必要な分量だけホテルの方が容れ物(もちろん、ゼロウェイストな)に入れて渡してくれます。歯ブラシなどは基本的には自分で持ってくるようになっています。
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旅行に行く時、いつも石鹸を中途半端にしか使えずに、もったいないと思っていたのですが、これで解決できるわけですね!石鹸をカットするという体験もとても楽しいものでした。
部屋に入ると、内装にも様々のゼロウェイストの工夫があります。カーテンやラグは、不要になった布類をアップサイクルしたものでした。一つ一つがアート作品のようでとても楽しかったと記憶しています。
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また、この部屋にはゴミ箱というものがありません。代わりに、6分別のできるカゴに入った容器が置かれています。
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滞在中に出たゴミは資源として分別し容器に入れます。本来であればチェックアウト時に上述したゴミステーションに各自で分別するそうです。残念ながらコロナ禍ということで分別体験はできませんでしたが、生ゴミだけは敷地内に設けられているコンポストに入れるという体験ができました(私は普段からコンポストを使ってはいるのですが)。
このように、このホテルでは滞在を通じてゼロ・ウェイストの断片をポップに感じることができるよう工夫されています。自分の暮らしにも取り入れてみようと思うことも多々あると思いますので、是非みなさんも宿泊してみてはいかがでしょうか!
ゼロウェイストな体験 <まちなか編>
上勝町のゼロウェイストセンターでは、「ゼロ・ウェイスト認証」という認証システムを運営しています。そして、まちなかのレストランや宿泊施設では、ゼロ・ウェイストへの取り組みに応じて認証バッチが与えられていて、店頭にバッチが掲載されています。そして、それらを一覧できる認証マップが作成されています。
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私は滞在中に”Cafe polestar”にお邪魔しました。スコーンとコーヒーを注文したのですが、一般的なカフェで出てくるような紙ナプキンはついてきません。代わりに、季節の葉っぱが添えられていて、ゴミを出していないという心地良さと季節感を感じることができてとても気持ちの良い時間でした。
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また、店内では量り売りでドライフルーツを購入できるコーナーもありました。
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こうやって、ゼロウェイストに取り組むお店に行くことで、お客さん側でもゼロウェイストの価値を知る機会にも繋がるし、更には町ぐるみで取組むことで横の繋がりとの情報交換ができて一層視座が高まるという仕組みが素晴らしいと感じました。
旅を通じて学んだこと
私は普段からゴミをなるべく出さない暮らしを心掛けてはいるのですが、この旅の体験を通じて、社会や地域へのアプローチが大切だということを学びました。初めは一個人の活動であったとしても、社会や地域を巻き込んでいくことで、やがて文化となって醸成していくのだなと。
私の家の周辺の雑木林や竹林には、残念がなら多くのゴミが捨てられる現実があります。気づいた時には拾うようにはしていましたが、これからは定期的に拾う活動を継続していこうと思います。そして、この活動をTwitterで報告して、微力ながら社会へのアプローチとしていこうと思います。私自身、ゴミ拾いを始めたのはTwitterでゴミ拾いをしている方々の活動をみて始めたので。
また、ゼロ・ウェイストに取り組むお店や活動を応援することも大事ですね。応援の仕方にも色々あって、量り売りをしているお店のSNSに「いいね!」をするのもいいですし、一番いいのはそのお店でお買い物をすることですね。そういったお店が増えることの一助にもなるかもしれません。お店でなくても、メーカーやブランドでも、ゴミを減らす努力をしているメーカーの日用品を買うのも一手ですね。
物を長く使うことやコンポストを導入するなど、自分の暮らしのゴミについて見直してみるのはもちろんですが、上記のような社会や地域とつながる活動をみんなが始めることで、社会全体を変えることになるかもしれませんので!