学振で加点される書き方
2024年度 学振DC, PDの申請書を20本ほど添削した感想戦です。
良い申請書にするための型が見えて来たのでまとめました。
背景(1ページ目)
上から1回読むだけで理解できるように書く
1ページ目、特に最初の半ページが本当に最重要。本研究で行う研究課題が、なぜ当該分野にとって重要であるか書く
分野外の人にも分かるように、何のための研究かを書く
⚠️注意点⚠️
分かっていない(or やられていない)ことがあります→だから私がやります、としか書かれていない研究計画はダメな例。
着想に至った経緯
問いを解くために適切な材料・アプローチをわかりやすく書く
ここは書く内容が結構ばらつくので、5点満点だとして以下のように差がつく。2~3点:予備的な結果に言及せずに、他のグループが最近開発した技術や新しい知見などに言及し、それを申請者のラボのテーマに応用したと書く
→実行可能性、独自性、申請者である必要性が全て弱い2~4点:予備的な結果に言及せずに、所属ラボの先行研究やラボの研究員が発見したデータ等を説明し、そこに申請者独自の視点を持ち込んだと書く
→予備データが無いと、実行可能性と申請者である必要性が弱い3~5点:ラボの先行研究をベースとしながらも、申請者が独自に発見した予備的な結果(と論文)に基づいて着想したと書く
→まだ主体性が若干弱い4~5点: ラボの先行研究ではなく、申請者が独自に系を立ち上げて発見した予備的な結果と既に出版した論文に基づいて着想したと書く
研究計画の本文(2-3ページ目)
分かりやすく、シンプルに、流行りの技術なども取り入れながら書く。
適宜予備データを出していることに言及し、実行可能性を示す。
予想した通りの結果が出なかった場合の方策まで言及する。
独創性・波及効果
どのような切り口が新しいのかをシンプルに書く
方向性が似ている当該分野の先行研究と比較し、どのような点が独自なのか書く
(そのような研究が無いなら、世界に前例がないと明示する)一般の人にも伝わるような分かりやすいインパクトを書く
強みの自己分析(5-6ページ目)
実績ベースで、客観的な数字で表現しながら書く
以下は一部の人しか書けない(差をつけれる)エピソード
ラボにノウハウがない技術を自らの発案で研究に取り入れた
自らの発案で他のラボ(海外)に技術を習いに行ったり、共同研究を立ち上げた
自分でテーマを立案した
自分で実験系を立ち上げた
(以上を遂行する過程で、どのように困難を克服したか、どれくらい文献を調べ上げたか、どのくらい徹底的に条件検討したか等を書く)
⚠️注意点⚠️
SNS上では「科学者なんだから研究計画で審査しろ」という意見が散見されるが、研究計画が良いだけでは採択されない。ラボとボスが強ければ良い研究計画がいくらでも書けることは、審査員もお見通しだからである。この強みの自己分析の項目は、申請者自身が上記の研究計画を遂行、論文化する能力があることをアピールするために書く。従って、研究を遂行する上で役立つ長所だと分かるように説明しないと加点されない。
例えば、単に成績が良い、英語テストのスコアが良いと書くのはダメな例。英語力が高いから、海外の研究者とも共同研究をやっていけるポテンシャルがあります(または、既にそのような実績があります)と書く。「なぜ主体性が重要なのか」や「なぜ幅広い知識や深い専門性が必要なのか」等を長々と説明しない(それらがあった方が良いことは審査員も知っている。ここで持論を展開している人はポエム)
そうではなくて、どのようにして、それらを身に付ける、達成するつもりなのかに主眼を置いて書く。所属の強みではなくあなたの強みを書く(所属ラボの独自技術のアピールや所属研究機関の学際性などのアピールは最小限に留める)
さらなる発展に必要な要素
ちゃんとしたロジックでシンプルに書けばほとんど差はつかない
特定の要素に偏りすぎないように書く(例えば、実験屋さんが自分に足りないのはバイオインフォです、とだけ書く等は視野が狭いので非推奨)
目指す研究者像(7ページ目)
学際的な視点で~常識にとらわれない~独創的な~
というような抽象的なことを書いても、減点にも加点にもならない。
要はここでも強みをアピールすれば良い。以下の2点をおさえる。
その1:自分がこの分野を背負っていくという野心や意欲をアピール
研究者としての人生を通して将来的に成し遂げたい夢や目標、解明したい謎などをできるだけ具体的に書く。
そして、どのようなアプローチでその夢や目標を達成しようと考えているのか、研究者人生を通して解明したい「リサーチクエスチョン」を書く。
具体的に、「xxxという現象を突き詰めたい」、「xxxを可能にする技術を開発したい」などと書く。その2:主体性や行動力をアピール
自分が当該研究分野を志したきっかけや、上記で書いた夢や目標をなぜ達成したいと思ったのかなどに言及する。加えて、研究者を目指す過程で困難に立ち向かったり挫折を克服した経験などを書いても良い。
また、研究者を志したきっかけに言及する際に、前ページでは書ききれなかった過去の業績に言及しても良い。⚠️注意点⚠️
ロールモデルとなる研究者は書かなくてもよい。
(あなたが憧れた研究者の素晴らしいところをいくら強調しても、申請者の強みにつながらなければ加点にならない。書いてもよいが、あくまでも申請者を魅力的に見せるための要素として表現する。)ここでも、「なぜ主体性が重要なのか」や「なぜ幅広い知識や深い専門性が必要なのか」等を長々と説明しない(それらがあった方が良いことは審査員も知っている。ここで持論を展開している人はポエム)
そうではなくて、どのようにして、それらを身に付ける、達成するつもりなのかに主眼を置いて書く。資質は、研究計画を通して身に付けることができるものを書く
研究計画の位置付けでは、参加予定の学会や共同研究先、論文投稿について触れて、理想の研究者になるために申請者がすでに行動していることが伝わるように書く
この記事が少しでも学振執筆のお役に立てば嬉しいです。