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セルフライナーノーツ:SIDE A「私自身」
今回レコードのA面でカバーする「私自身」はいしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリーのカバー(1977)。
この曲を自分が知ったのはMySpace Japanの立場でJ-WAVEの番組「RADIO×SPIDER」に関わっていた頃。2008年あたりです。
記憶が曖昧ではあるのですが、おそらく音楽プロデューサー、牧村憲一さんがゲストの回でティン・パン・アレイの関連作?としてオンエアされていたのではないかと思います。
2008年当時、まだシティポップや和モノの特にレコードは一部の愛好家だけの流行り(trax boysの方のMIXは出回っていたし当時Japanese Club Groove Disc Guideとかもありましたが)
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だったと思うんですが、前情報は全くない状態で「私自身」の抜群のキメとスタイリッシュなグルーヴの鉄壁な演奏、そしてやはり、
「ひとりソファーに寝ころんで 恋の歌聞くでもなし 歌うでもなし・・・」
のポエトリーから始まる歌の空気感に衝撃を受け、「この曲なんですか??」とディレクターの東海林さんに教えてもらってすぐにアルバム「アワー・コネクション」を買いに走ったことを覚えています。
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今回、ギターマガジンのティン・パン50周年特集や細野さんの自伝、関連本なども参考にいくつか読みましたが、この「アワー・コネクション」特に「私自身」のレコーディングについて詳細に言及したものはあまり見つからなくて、かなり謎なアルバムでもあります
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プロデュースと歌詞はすべて橋本淳さんですが、細野さんが全曲作曲でなく、萩田光雄さんと半々だったのも細野さんからの言及が多くない原因かもしれません。名義もティン・パン・アレイ・ファミリーなので松任谷正隆さんも不参加。
録音期間は1976年11月から77年2月。つまり冬。
そして4月のリリース。当時だとニューミュージック、フュージョンと呼ばれた音だったようです。
ちょうど今週、竹中直人さんの番組で大貫妙子さんが「だいたいシティ・ポップなんて勝手に名前付けないで欲しいわね、シティ・ポップなんてダサいでしょ」とコメントされたのも自分にとってはタイムリーでした。
1977年当時の「東京」の空気感と、いしだあゆみさんのシンガーとしてではなく、すでに「女優」な感じ。
(時期としてはショーケンさんとの結婚前あたりなので、橋本淳さんの歌詞はある意味リアルで、でもそこを淡々と演じられていた作品なのではないかと想像します)
そしておそらく譜面中心でなくヘッドアレンジでパートパートをセッションしながら作り上げたんだろうな、という不思議な構成と自由闊達な演奏。
自分としては、この曲の中に少しだけ入っていた、ラテングルーヴな要素をもうちょっと引き出せたらバンドのアンサンブルとして面白いことになるかも、が元々のアレンジの案でした。
さらに、リハーサル時にもハービー・ハンコックネタで冒頭に少し変速なビートを足して、キメからのスタートにしないこと、そしてSWING-Oさん案でポインター・シスターズネタのスキャットの取り込みなどもアイデアとして入れ込んでレコーディングにのぞみました。
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やはりみなさん飲み込みがとても早く、Keycoさん/美香さんの歌いやすいキーとおおよそのBPM、7インチ用なので少し尺を短めにエディットして、時間前にプリプロも無事完了。
実はこの曲のキモは後半パート、3:30以降。
メンバーのみなさんにオーダーしたのは、歌が落ち着いた後半から、どんどんラテン要素が増大して温度がどんどん上がっていくセッション的な演奏。
結果、何度聴いても後半の昇天の仕方は本当に気持ちいい、踊れる仕上がりになったと思います。
ニュアンスが伝わるか分かりませんが、個人的にはカヒミ・カリィの「ELASTIC GIRL」の後半、バンド全体がゴチャっとしたカオスなグルーヴになっていってついつい踊らされてしまうあの感じが目指したいところで、目論見通りの録音となりました。(これは誰にも言ってないですけど)
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本番のレコーディングはKeycoさん、美香さんの仮歌も含め、全員揃っての一発録音を5回くらい。もうみなさん素晴らしく、どのテイクを選択するべきか、とても迷いました(OKテイクを選ぶ作業、大好きなんですよね)
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レコーディングだと、ライブの温度感とは違って、ある程度抑制されたプレイの方が音源としては安定していて良かったりもするのですが、多少荒くて演奏が走っていても熱いグルーヴのものを選ぶのか、ある程度カチッとしたクールな演奏を選択するのかで聴こえ方は大幅に変わります。
このグルーヴや熱さの具合は本当に判断が難しいところで、メンバーみなさんのご意見を参考にしながらもちょうど良いバランスのテイクを選びました。
Keycoさんにも、スタジオにきて初見で歌わされた「女優」でお願いします、と伝えていました。
そのアンニュイなニュアンスもいい具合に出して頂いたと思います。
そしてミックスもエンジニアの福田聡さんがその辺りのイメージを汲んでくださって、レコーディングの良い空気感がしっかりパッケージできたのではないかと思います。
5分間、45回転のギリギリの尺で楽器のひとつひとつの粒立ちがしっかり「鳴ってる」MIXです。
以前もこちらの記事で今回のストーリーを書きましたが、
女性をエンパワーメントする存在であるKeycoさんとご一緒するならば、目指すところは「強い女性」の歌ということで、もはや弟の追悼は関係ないくらいパワーのある曲が録音できたと思っています。
なんとかリリースまでに初回は間に合いました。
明日はB面「I am」のライナーノーツを頑張って書きます。
レコードのリリースまで残り2日。
(明けちゃったので残り1日)
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