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STORY⑤
第五回
では自分は何をやるのか。
大前提として楽器を遊びで触ることはあっても、自分はあくまでもアーティストではない。
参考としてレコード会社時代、自分が宣伝担当だったこともある沖野修也さん(KYOTO JAZZ MASSIVE)の全業のスタイルに倣って、自ら演奏は基本しないが、企画、原盤制作、プロデューサーをやろう(実際沖野さんは作曲もしているけど)。
全業のススメ
一言でプロデューサーといっても、音楽面の全体をみてアレンジまで事細かに譜面を書いて作業する職人タイプの人もいれば、スタジオに一切来ないでRECはエンジニア任せだが、口が達者で影響力があって、ブランディングという意味でのプロデュースをするタイプの人もいる。
プロデューサーの概念も千差万別なのでどれも否定することはないが、今回自分はプロデューサーとして全体の方向性を決めてミュージシャンを選定し、A&R的な動きをするのが真っ当だと考えた。
さらに、沖野さんの全業のススメに倣って自分で資料もライナーも書いて人を口説いて、許諾も金勘定も制作も宣伝も交渉も、できる限り自分ひとりだけで自主制作してみよう。
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※しつこいですが、本作品は個人で制作しているものです。もちろん、たくさんの方のお力をお借りしつつですが、個人でどこまでやれるのかへの挑戦でもあります
最初の案として、やはり"椎名くんの作品を作る"がスタートなのだから、一緒に演奏するアーティストを決めて、椎名くんのアレンジでオリジナル曲をセルフカバーしてもらうことも考えた。
しかしここはDJ的な考え方で、絶妙なカバー選曲で自分なりのオリジナリティーを出したい。
まずはメンバー招集。もちろん生音でRECする。
そこで決めたルールとしては、自分に全く縁のない知らない人には頼まない(参加メンバーからの推薦や紹介で面識のないミュージシャンを選定しない)、あくまでプレイを本当に素晴らしいと思っていて、過去にも絡みがある人に自らオファーする、というものだった。
そりゃそうだ、ギャラも自腹で支払うんだもの。
「ぼくがかんがえたさいきょうのバンドメンバーをあつめる」これだ。
今回のバンド編成はドラム、ベース、キーボード、パーカッション、ギター、トランペット、ヴォーカルの7人編成をイメージした。
どうせなら、それぞれのメンバーがソロで活動しているぐらいの猛者を集めたい。
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実は自分にはそれぞれの楽器に対して、こういう鳴りでこういうプレイをして欲しいという具体的なイメージがあった。
それをこと細かにディレクションしなくても、美味しい部分のニュアンスを理解して体現してくれるミュージシャンに演奏してもらうのが一番早くて良い物ができるだろう。
ドラムはハネたリズムでもフィーリングは後ろ目で安定していて手数が多く、キックとスネア、ハイハットオープンのバランスがとにかく気持ちいいこと。
ベースは重心が低いけどしっかりと黒いグルーヴを持っていること。でもバキバキにならず、ある程度歌ものへの理解も必要。
鍵盤はRhodesかピアノをメインに浮遊感をキープしながら弾きすぎず、メロディアスなプレイで指のタッチは軽めがいい。
パーカッションはボンゴかコンガをメインにしつつ、金物やトライアングル必須でしっかりグルーヴのスキマを埋める。
ギターは上記のアンサンブルに乗っかる前提でとにかく自由なプレイでカッティングメイン。なるべくペラペラな音色がいい。
トランペットは緩急とデリケートさに加えて色彩ある音色。でもしっかり存在感がほしい。
歌は椎名くんありきなので言うまでもないが、ファルセットメインで考えたい。
ということで、
歌はもちろん椎名くん、トランペットはタブくん。
そして全体のアレンジをしっかり見てくれる鍵盤奏者でありイベントの「My Favorite Soul」主催者としてもSWING-Oさんは外せない。
ドラムは絶対自分の一番好きなドラマー、みどりんに叩いてもらおう。ベースは近年の作品も大好きなファンクベーシストROOT SOULさん。
ここにSWING-Oさん同様、イベントの「My Favorite Soul」でも長年一緒にやっている手練れパーカッションのネロさん。
ここまで布陣が固まり、カッティングで自由に乗っかってもらいたい名手として最後にOKの連絡をくれたのはギターの長岡くん(通称リーダー)だった。
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素晴らしい環境
結果、ありがたいことに今回お声かけしたアーティスト全員に快諾頂き、断る人は誰もいなかった。
今回のメンバーは全員が売れっ子の忙しい方々だし、スケジュールありきにしないで一人一人、会える人には出来るだけ会いに行ってオファーした。みどりんには快諾後も下北沢のRPMのセッションを観に行って改めて構想を伝えたりもした。
これでようやく個人的ベストメンバーが出揃うことになった。
レコーディングは池袋のSTUDIO DE DE。
ミュージシャンなら垂涎のヴィンテージ機材が揃った素晴らしい音のスタジオで、ここでメンバー7人が全員揃ってバンドとして「せーの」で一緒に演奏してもらった。
アナログのテープで録音→Pro Toolsというところで、最近のHi-Fiな音ではなくざらついた音を目指したので、そのニュアンスはしっかり出たと思う。
若干の直しはあったものの、実際には各曲、5-6テイクで完了。やはりみんな仕事が早い。
次回、最終回は今回の選曲についてのお話です。
(続く)
「カフェインの女王」アナログリリースまで
残り10日。
第六回はこちら
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