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セルフライナーノーツ:SIDE B「I am」

今回の7インチを制作するにあたり、実は先に選曲していたのはこのB面にあたる「I am」のほうでした。
Keycoさんと有坂美香さんに掛け合いでこの曲を歌ってもらいたい、というのが最初の着想です。

いまのMy Favorite Soulレーベルの7インチのレギュレーションはA面は邦楽カバー、B面は洋楽カバーという縛りにしているのですが、「I am」に関しては原曲のリラックスした柔らかい音像のバンドアンサンブルを踏襲しつつ、モダンなR&B曲を目指しました。

私事ですが(そもそもレーベルもリリースも追悼もすべて私事ですね)、自分の10年前の結婚パーティー内のライブでも

「パパパパーンの歌」
「Ainʼt No Mountain High Enough」
「Love Is Everywhere」

を掛け合いで披露してもらった、長い付き合いのお二人のデュエット曲になっています。
Keycoさんと有坂美香さんのハーモニーの相性は言うまでもなくバッチリで、声質や歌唱方法も実はとても似ている部分があるんですよね。

今回、Keycoさんのご自宅兼スタジオへ伺ってのヴォーカルとコーラス録りだったのですが、「I am」の歌い分けでMIXを聴いていても、たまにどっちがどっちのパートを歌っているのか、わからなくなるほどでした。

ヴォーカルRECの模様

有坂美香さんは数々のアーティストのコーラスワークや、ご自身のゴスペルクワイヤーをはじめとする活動に加え、Keycoさんとも旧知のシスターズでもあります。
また、今回は美香さんの伴侶でもあるギターのコスガツヨシさんのプレイも含め、まさにファミリーでご参加頂いた形になりました。

カバー元のアーティスト表記も、
A面は
"いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー"、
そしてB面は
"キンドレッド・ザ・ファミリー・ソウル"
なのでどちらもファミリー繋がりになっていて、
曲タイトルとアーティスト名も「」と「家族」。
不思議な対比がつながったシングルになっています。

この曲は少し前にリユニオンコンサートもしていたfromフィラデルフィアのネオ・ソウル系夫婦デュオ、キンドレッド・ザ・ファミリーソウルのアルバム『Surrender To Love』の中の1曲。
といってもシングルカットもされておらず、サブスクにもない(2024.11月現在)、知る人ぞ知る名曲のカバーになります。

Kindred the  family soul/Surrender to Love

この曲がリリースされた頃、2002-2003年あたりは自分は椎名純平さんのマネージャーで、当然のようにこの辺りのR&Bやソウルの音源を追っていました。

原曲の楽曲解説や文脈が整理できるほどの知識はないのですが、当時はニュー・クラシック・ソウルからネオ・ソウルな文脈のアーティストが多数出てきていて、ヒドゥン・ビーチ・レコーディングスからリリースされていたヒップホップの名曲をラップを除いてゆるくジャジーな演奏でカバーする「UNWRAPPED」シリーズがカフェなどでもよく流れていた気がします。

ヒドゥン・ビーチといえばやはり筆頭はジル・スコットですが、彼女のフックアップで同レーベルからリリースすることになったのがこのキンドレッド夫妻で、「I am」では2022年にグラミーを受賞することになる、当時まだデビュー前のジャズミン・サリヴァンがフィーチャリングされていました。
クレジットを見る限り、コーラスはなんと5声。
独特の空気感は昨今のオルタナティブR&Bともつながってくる気がしますね。

そしてまた記憶が曖昧なのですが、THE ROOMでのイベントの朝方に沖野修也さんや当時の店長、佐藤強志さんなどが「I am」をよくプレイされていた記憶があるので、その辺りから曲を知ったのかもしれません。
沖野さんにこの曲のカバーすることをお知らせしたとき、「この曲は沖野クラッシック。歌詞がまたええねん」とも仰っていました。

「I am」の歌詞の一部

レコーディングでは、核となるSWING-Oさんのローズのパートを生ピアノにしたり、ツヨシくんのギターにワウをかけてもらったりと、メロウとアーバンの橋渡し具合がグッドバランスになったと思いますが、何よりもKeycoさんと美香さんの掛け合いが素晴らしいのです。
同じブースで録っていることもありますが、本当にお二人の息の合った優しいハーモニーが美しく、何度聴いても心を掴まれます。本当いい曲。

実際、リハ、REC、MIXから100本のMV制作に至るまで「I am」を合計だと余裕で1,000回以上は自分の音源として聴いてるんですけど、いまだにこの曲の後半の大サビ、

「Your Song Is My Song, Girl」

のくだりあたりで毎回涙が出るんですよね。
それくらいいい曲なんです。

シングルカットされてないぶん、当時聴いてなかった人にはほとんど知られて来なかった?曲ではありますが、まさにマスターピースの最高なカバーとなりました。

地味だけど何度も聴いているうちにじわじわ好きになるタイプの曲でもあるので、ぜひリピートしてあなたの大切な1曲に加えてもらえたら幸いです。

最後に、Keycoさん宅にヴォーカルのレコーディングで伺った帰りにKeycoさんから言われた一言で締めたいと思います。

「椎名純平くん、Keycoと続いたら次の作品はまたハードル上がるよねー」

・・現状は次の作品、まだノープランです。

ということで、
ついに明日11/27はレコードのリリースです。
今日は店着日でもあるので、宅配では少しずつ届いているようですが、ぜひレコードを手にして頂いてお楽しみください!

1作目「カフェインの女王」と2作目の「私自身」。どうせなら3部作にして3人の美女を並べたいところ

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chick_d
ありがとうございます涙