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美味しいワインは平和の象徴
ボルドーワインを調べる中で、「美味しいワインは平和の象徴ではないか」と感じるようになりました。そこで、ワインと歴史の関わりを振り返りながら、その移り変わりをまとめてみました。
ボルドーワインの隆盛
個々のワインを見るとオーナーが次々と変わったり畑が小さくなったり、家族経営したり、日本人が経営したりと色々と特徴がありますが、メタな視点で捉えてみると大きな流れがあることがわかります。
12世紀~15世紀の300年続く安定
実はこの時期、ボルドーはフランスにありながらイングランドの領地でした。当初ボルドーはただの港町でワインをイングランドに運ぶための中継地点だったのが、様々な特権をイングランド王からもらうことで徐々にワインの産地として成長していきました。
300年も続いたイングランド王による寵愛によりボルドーは都市として安定し、ワインの産地としても栄えました。
百年戦争によりフランス領に
イングランドとフランスが戦った百年戦争で最後までイングランド側としてフランスに抵抗していたのがボルドーでした。ボルドーが陥落したカスティヨンの戦いでは、敗れ混乱していたイングランド軍がその時期に非常に人気があったシャトー・ディッサンの貯蔵庫を空にしたという逸話もあります。また、シャトーは軍事施設としても使われることがあったため多くのぶどう畑が戦争により荒らされました。
絶対王政とフランス革命
イングランドとの戦いに勝利し、フランスは絶対王政のもとで安定期を迎えます。王や貴族たちが晩餐会でワインを楽しむなど、ワインはステータスシンボルとして重要な位置を占めるようになりました。やがて、ワイン文化は庶民の間にも広がりましたが、ワイン税の導入が不満を生み、これがフランス革命の一因とも言われています。革命では、ボルドーの著名なシャトーの所有者も犠牲になり、ワイン業界は大きな打撃を受けました。
ナポレオン3世によるメドック格付け
フランス革命とナポレオン1世の時代を乗り越え、再びワイン業界の発展が訪れました。
ナポレオン3世はパリ万博で世界にボルドーワインを売り出すためにわかりやすい格付けを制定しました。これにより、今まではフランスやイングランドで主に消費されていたワインが世界から消費される存在になっていきます。この時期は世界中で産業が発展し、交通網が整備され始めたためにボルドーワインは世界中に広まっていくことになります。
二つの大戦と世界恐慌
世界に広まっていったフランスワインですが、大戦と世界恐慌の影響を受けることになります。多くの所有者がシャトーを手放すことになったり、畑を縮小・分割せざるをえない状況に陥ります。
この頃には粗悪品のワインも流通し始めAOC法の制定につながるなど全体としてワインの品質が落ちていくことになります。
1950年以降の発展
1950年から現在にかけて、フランスでは大きな混乱はありません。粗悪なワインに対する法律も制定されワインの品質は全体として上がっています。所有者が安定しなかったり、縮小されていた畑も新しい所有者のもとで復活していくようになっていきます。
ワインの品質と平和の相関
このように、平和な世界が続くとワインの品質は上がり、戦争などで混乱するとワインの品質は下がるばかりでなくシャトーの存続さえも危ぶまれるという全体の流れがあります。
個々のワインのストーリーだけを追うと、なんでこんなにオーナーがコロコロ変わるのだろう?せっかくの格付けシャトーを荒廃させてしまうのはなぜだろう?という疑問が湧きますが、歴史的背景を踏まえると納得できるものがあります。
しかし、よく考えれば20年も30年も熟成させるという作り方自体が平和な世の中が続くということを前提にしていますね。明日も分からない世の中であれば今すぐ飲んで美味しいワインばかりになってしまいますね。
次はブルゴーニュの歴史を調べてみようと思います。
参考図書
フランス以外でもワインと世界史の関わりが読める面白い本です。