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「第19回ガラスびんアワード2023」において最優秀賞を受賞した、「GOTOGIN」を製造されている株式会社五島つばき蒸溜所様へ取材レポート

日本ガラスびん協会広報委員会では、ガラスびんに関する広報活動と日頃からのご愛顧に感謝を込めて、ガラスびんに関連した様々な場所を訪問しています。

今回は2023年10月下旬、「第19回ガラスびんアワード2023」において最優秀賞を受賞されました「GOTOGIN」を製造されている株式会社五島つばき蒸溜所様(長崎県五島市)を取材いたしました。

大企業を飛び出して三人で起業されたこと、「風景のアロマ」や「お酒で土地を表現する」というコンセプトなど、様々なお話を伺うことができました。


【ご対応者】 ・代表取締役 門田クニヒコ様
【蒸溜所外観】
【受賞商品】
GOTOJIN

1.蒸溜所の所在地 半泊地区と半泊教会について

蒸溜所のある福江島は江戸時代末期に大村藩から3,000人が移住してきました。当時の五島藩では飢饉による人口減に直面していましたが、藩を越えての移動ができないため江戸幕府に移民が欲しいと申し入れをしたところ、逆に人口増の抑制を考えていた大村藩と利害が一致し、当初1,000人の移民予定が大幅に増え、3,000人の移民となりました。移住者の多くが潜伏キリシタンでした。

本土よりも島嶼(とうしょ)部の方がキリスト教の取り締まりが緩やかだったことに加え、大村藩では前述の人口抑制のためカトリックの教義に反する中絶をしており、それを逃れるため福江島に渡ってきたと言われています。開拓を始めたものの平地が少ないために全員では住めず、上陸者の半分しか留まれなかったことが「半泊」という地名の由来です。半泊地区は西と南北の三方を山に囲まれ、芋を植えて半漁半農で十数世帯が信仰を守って暮らしていたそうです。

利害が一致し、当初1,000人の移民予定が大幅に増え、3,000人の移民となりました。移住者の多くが潜伏キリシタンでした。本土よりも島嶼(とうしょ)部の方がキリスト教の取り締まりが緩やかだったことに加え、大村藩では前述の人口抑制のためカトリックの教義に反する中絶をしており、それを逃れるため福江島に渡ってきたと言われています。開拓を始めたものの平地が少ないために全員では住めず、上陸者の半分しか留まれなかったことが「半泊」という地名の由来です。

半泊地区は西と南北の三方を山に囲まれ、芋を植えて半漁半農で十数世帯が信仰を守って暮らしていたそうです。

明治に禁教が解かれ信教の自由が認められると建てられたのが、五島つばき蒸溜所に隣接する半泊教会です。1922年に建てられたもので、昨年(2022年)に建造100周年を迎えました。
今では80代の信徒が一人で守る教会となっているため、半泊教会の維持管理は近隣の教会と合同で行われてきました。

2022年10月に100周年のミサを行ったとき、五島つばき蒸溜所の開業と重なったため、そこからは蒸溜所の皆さんも維持管理のお手伝いをするようになったそうです。

2.蒸溜所について

蒸溜所の設計をするとき、お酒を作りながら教会の維持管理をしているということを門田さんが話したところ、建築家から修道院のような蒸溜所にしたいという提案があったそうです。ジンの素材であるジュニパーベリーに利尿効果があり解熱剤として使われていたため、ジンはイタリアの修道院で生まれたという説があります。イタリアの修道院は薬草園を囲んで回廊式のつくりになっており、五島つばき蒸溜所も蒸溜エリアを薬草園に見立てて回廊状の蒸溜所になっています。

蒸溜器の上の梁がアーチ状になっているのですが、これにも理由があります。蒸溜器の他に空寸を取ると4mの空間が必要となり、プレカットという木材を使わなければならないのですが、五島列島の製材所ではカットができず長崎から持ってこなければならないのだとか。コストアップになるため、短尺の木材をつなぎ合わせてアーチ状の梁になっています。

蒸溜所の窓にはステンドグラスが嵌められており、これは福江島の北部にあるステンドグラス工房でカトリック信徒によって作られたもので、前述の半泊教会のステンドグラスと同じ工房で制作されたものです。蒸溜所のロゴマークである椿の真ん中には白い鳥が配されており、GOTOGINのキーワードである「風景のアロマ」と幸せを世界中に運ぶということが表現されています。

3.蒸溜器について

蒸溜器はドイツのアーノルドホルスタイン製でジン専用のもの。日本でも蒸溜器を作っているメーカーはありますがジン専用機はありません。アーノルドホルスタインの蒸溜器は一つひとつ手作りで蒸溜所に合わせてオーダーメイドされています。

実はジン専用の蒸溜器でなくてもジンは製造可能で、日本でも多くのメーカーは焼酎やウイスキーの蒸溜器を利用してジンを作っているそうですが、なぜジン専用の蒸留器をオーダーされたのでしょうか?門田さんに伺ったところ「ジンの製法には銅製のポットスチル内のアルコールの中にボタニカルを浸漬して蒸溜する『浸漬蒸溜』と、ジンバスケットの中にボタニカルを入れて手前の釜で水とアルコールを沸騰させた蒸気で蒸溜する『蒸気蒸溜』の二種類があるのですが、この両方ができるのがジン専用蒸溜器の特徴です。

五島つばき蒸溜所は17種類あるボタニカルのうち、半数以上の9種類を蒸気蒸溜しています。香りがきれいに欲しい素材(ゆずの皮、椿茶、ラズベリーなど)は蒸気蒸溜、味も香りも欲しい素材(ジュニパーベリー、椿の種、カカオニブなど)は浸漬蒸溜、といったように使い分けています」と教えていただきました。

4.お酒づくりのこだわり

五島つばき蒸溜所のお酒づくりにおけるこだわりは二つ。

一つ目は椿の種をキーボタニカルにしていること。福江島に蒸溜所を作ることを決め、「土地をお酒で表現する」ということを考えたときに「やっぱり五島列島でお酒を作るなら椿が良い」というのが蒸溜所を立ち上げた三人の意見でした。関東にいらっしゃる方は椿=大島のイメージが強いと思いますが、実は椿の最大の産地は五島であり、椿油の生産量も日本一。福江島だけでも1,000万本の椿の木があり、まさに椿の島といえます。

一方で五島の椿とは数や美しさを誇るだけのものではなく、歴史と密接に結びついたものでもあります。移住当初は豊かな土地を譲ってもらえなかったこと、隠れて信仰するために山あいでの生活を選ばざるを得なかったこと、塩害に強く食用油がとれることなどから、椿は潜伏キリシタンの生活の糧として栽培されていたのです。このように五島において椿は精神性や文化に密接につながっており、門田さんたちは福江島でお酒を作るなら必ず椿を使いたいという想いを強くしたそうです。

門田さんたちは前職の大手酒類メーカー在籍時にジンを作った経験はあり、大抵のボタニカルは使ったことがあるものの、椿は使ったことがありませんでした。ブレンダーの鬼頭さんが様々な椿の素材を試す中、椿の種をローストして細かく刻み浸漬蒸溜すると、蒸溜した飛沫に油が含まれるためオイリーな原酒が取れることがわかったそうです。椿の種を用いた原酒はあまりトップノートがなくミドルやボトムに厚みがある優しい口当たり。GOTOGINはアルコール分が47%ありながらストレートやロックで飲んでも刺々しくない味わいになっていますが、まさに椿のおかげです。「ジンのボタニカルとしてアーモンドやカカオニブなどの種子が使われることはありますが、椿の種のようにこんなきれいな油がとれるボタニカルはなく、椿という素材に出会えたことは僥倖だったと言えると思いますね」と門田さんは語ってくれました。ジンのボタニカルはジュニパーベリーの他にコリアンダー、山椒など料理でも使われる個性派の素材が多いのですが、椿の種は地味であるものの全体をやさしく調和してくれる縁の下の力持ちのような存在で、それが優しい口当たりの理由なのですね。

さて、お酒づくりのもう一つのこだわりは、ボタニカルを個別に蒸溜しているということ。一般的なジンは釜の中にアルコールと水、ボタニカルを浸漬して蒸溜する「ワンショット」という作り方がほとんどですが、五島つばき蒸溜所ではあえてそれをせず、ボタニカルを一つひとつ個別に蒸溜しています。なぜそんなことをしているのかというと、素材によって蒸溜の中で良いものが出てくる時間帯が異なるため。

例えばジュニパーベリーは蒸溜の最後に辛みが出てくる一方、シナモンであれば蒸溜の最後で甘く良い香りが出てくるなど、素材によって違いがあるのです。ワンショットで蒸溜した場合、シナモンの甘い部分は捨ててでも、ジュニパーベリーの辛みが出る時間帯はカットせざるを得ないそうですが、個別に蒸溜すればそれぞれの素材が一番良い時間帯の原酒が取れるのが最大の強み。また、ワンショットの場合は全ての材料を一律に60度くらいのアルコールに浸漬する場合が多いのですが、五島つばき蒸溜所は浸漬するアルコールの度数や浸漬時間、カッティングポイントも変え、ボタニカルごとに一番良い条件で一つずつタンクに抽出し、最後にブレンドするという方法を取っています。これは世界的にも珍しい手法です。

なぜ個別蒸溜という手法が取られたのでしょうか?
同じ個別蒸溜を採用している他社のブレンダーと門田さんが会話した際、「日本人だからこのような作り方になっているのだと思う」という話になったそうです。そのブレンダーは「日本人は出汁を取るとき、鰹と昆布を一緒に煮ず、それぞれ個別に出汁を取る。良い出汁が取れる温度や、煮出す時間が違うため。日本料理学校で肉じゃがの作り方を教える場合も、じゃがいも、人参、玉ねぎは茹で時間が違うので別茹でして、最後に合わせてから味付けしなさいと教えている。日本人は素材の良さを生かそうとすると個別に調理して合わせるという発想が根付いているのではないか」と言われていたとのことで、門田さんは「五島つばき蒸溜所が採用する個別蒸溜は非常に日本らしい作り方なのかもしれません」とおっしゃっていました。

ただ、五島つばき蒸溜所は17種類もボタニカルを使用しており、他のメーカーよりも工程が多くなります。門田さんによれば「恐らく世界で最もタンクを持っている蒸溜所」だそうで、このような作り方は量産に向きません。現在は月間3,000本程度の製造量で、会社の経営を考えて規模を追い求めるのであればこのような製法にはなりません。「前職の大手酒類メーカーでこのような作り方をしようとすると大変な騒ぎになります。生産効率はどうなのか、お客様は製法の違いをわかってくれるか調査しろという話が出てくる。現在バックオーダーを抱えてお客様をお待たせしている点については申し訳ありませんが、規模を求めて今さら製造方法をワンショットにすることはできず、こだわって作らせてもらっています」と門田さんは笑います。

大企業を飛び出して「世界一美味しいジンを作る」ということを目標にお酒づくりをされているその姿勢に心を打たれました。

5.飲み方について

GOTOGINはどんな飲み方がお勧めですか?と質問したところ、このように回答いただきました。
「飲み方は何でも合います。ウイスキーをロックで飲まれる方ならロック、ハイボールが好きならソーダ割りというように、飲み手の好みによります。ジンなのでトニックウォーターで割っても美味しいですが、割るならソーダをお勧めしています。ソーダ割りはどんな食事にも合います。肉料理に合わせるのであればロックも良いですね。我々がテイスティングをするときは水と1:1で割るトワイスアップです。ちなみに五島の方々はお湯割りで飲まれます。世界広しといえどもジンをお湯割りで飲むのはここだけなのではないでしょうか。GOTOGINは香りが綺麗なので、焼酎のお湯割りと同様に80℃くらいのお湯を先に入れ、お酒を注いで軽くステアすると良いです」

6.びんについて

五島つばき蒸溜所ではGOTOGINのびんを「つぼみボトル」と呼んでおり、椿の花びらでアロマを包むというコンセプトでデザインされています。「半泊地区も、五島列島全体としても、潜伏キリシタンの方々が慈愛の精神で祈りを守り続けてきた場所ですので、『慈し(いつくし)』という思いを込めて作りました。

びんの色も目の前の半泊の海を再現する色にしてもらいました。この『椿の花びらでアロマを包む』というコンセプトをガラスで表現したものをリリー・フランキーさんに評価いただき、ガラスびんアワード2023で最優秀賞を受賞することができました。

受賞理由に『手に持って気持ちいい』という点が挙げられており、我々としては見ていて綺麗なボトルだとは思っていましたが手触りという着眼点はなく、リリーさんには良い観点で選んでもらえたと思っています」と門田さんは語ってくれました。また、GOTOGINは海外の方が横書きで読むとGo to gin(ゴー・トゥ・ジン)ですが、びんに入っている商品名の彫刻を縦書きにすることで、英語読みされず日本語の表記であることをわかってもらう目的があるそうです。ネックラベルにカタカナを入れているのも、イギリス人とフランス人にデザインを見てもらったところ、カタカナがクールだという話になり採用したそうで、このように商品デザインは海外の方のことも考えて作られています。

7.質疑応答

Q:蒸溜所の立ち上げ、GOTOGIN発売までにはどのようなご苦労がありましたか?
A:よく聞かれるのですが、苦労も楽しかったという思いが強いです。クラウドファンディングの謝礼も含めて開業したい時期は決まっていたので、建築の開始が当初より遅れたときに「開業に間に合うのか」と心配になったことはありましたが、それくらいですね。

Q:ジンは自由度の高いお酒であるがゆえ、オリジナルを志向しても意図せず先行商品に似てしまう可能性があるかと思います。どのように先行事例を研究されたのか、参考にした商品、ベンチマークとした商品などがあれば教えてください。
A:ブレンダーの鬼頭さん曰く「ウイスキーやビールは水墨画。使える原料が決まっており、墨の濃淡のような表現になる。ジンはジュニパーベリーさえ使えば後は何をしても良い。ボタニカルを絵具だとすると、選択肢が無限にある。最近のジンはピカソやモネの絵のようだ」とのこと。それくらい色彩豊かなもので様々な表現ができるのだから、何かに似ているかどうかをマーケティング的に考えるよりも、我々は福江島の土地をどう表現するかということだけを考えて作っています。幸い、椿は他社がボタニカルとして使っていないので、結果的に他社にはないテクスチャーのジンができました。

Q:「土地の名産品を使ってお酒を作る」という事例は数多ある中、「お酒で土地そのものを表現する」というコンセプトは、それらとまったく逆であり斬新に思います。なぜそのような発想に至ったのでしょうか?
A:むしろ、もともとはどんなお酒もその土地を表現しているものだったのだと思います。「地酒」という言葉がありますが、それは「地方のお酒」ではなく「土地のお酒」なのです。ワインで言えばテロワールというものがあり、本来のお酒はその土地の歴史、物語、風景、文化などを表現してきたものでした。
私、大学生のころ、村上春樹のファンだったんです。作品中にバーの描写がたくさん出てくるので、バイト代が出たら横浜のバーに行って、カッコいいボトルを指さして「あれを飲ませてください」というお願いしたりしていました。当時はインターネットがないので、バーで出会ったお酒の名前を憶えて学校の図書館に行き調べ物をすると、作り手の想いやストーリーが語られており、感動してどんどんお酒が好きになりました。このように私自身がお酒にまつわるバックグラウンドやストーリーが好きで酒類メーカーに入社しました。一方で大量生産・大量消費の商品が増えたことにより、物語を持っているお酒が減っていることも事実です。せっかく三人で企業したのに大企業と同じことをやっても仕方ないので、もともとお酒が好きになったきっかけである「物語のあるお酒」を作りたいという話になり、風景と物語のあるお酒づくりに賭けてみるために脱サラしました。ただ、お酒が持っている物語は人にまつわるものなど、色々なものがあると思います。その中でも私は土地にまつわる物語が一番好きで、お酒を飲んだときにその土地の記憶や歴史、文化、住んでいる人々の生活、土地にできる作物など、その土地が持っているものが浮かんできたり、想いが伝わったり、そのようなものが人の心を豊かにすると思っています。お酒ってアルコールだけではなく、物語で酔っている部分もあると思います。できれば私たちは心も頭も気持ちよくなってもらえるような、物語のあるお酒を作りたいと思っています。

Q:パッケージ(ガラスびん)のコンセプトやデザインのこだわり、それが生まれた経緯を改めてお聞かせください。
A:福江島に初めて来たとき、我々が感じた印象は「慈し」でした。五島列島は一般的に「光の島」や「祈りの島」と言われていますが、風景も人も時間の流れも含め、慈愛に満ちた人々が丁寧に暮らしてきた島だと感じました。江戸時代の移住以来、慈愛の精神をもってお互いを思いやり、信仰を守り続けてきたという島はなかなかありません。島の人々はおおらかで優しく慈愛の精神に満ちていて、本当に「慈し」という言葉がぴったりだと思います。それをお酒に表現できたらと思い、デザイナーにも「慈し」というキーワードだけをお伝えしてデザインしてもらいました。

Q:ガラスびんアワード最優秀賞受賞後の反響はいかがでしたか。
A:今までGOTOGINを飲んできてこのびんを魅力的だと思ってくれていた方々が、「自分たちが飲んでいるこのお酒のびんは、やっぱり素敵なものだったんだ」と喜んでくれていたのが特に印象的でしたね。やっぱり我々にしてみると島の誇りをおいしさに変えたいと思っていて、五島が誇る椿というものをガラスびんで表現したことによって賞をいただけたことが嬉しかったです。

Q:「風景」と「物語」に結びついた、豊かなお酒づくりをされたかったとのことですが、福江島に蒸溜所を作る決め手は何だったのでしょうか。
A:もともとは静岡の蒲原(かんばら)と愛媛の西条、そしてこの福江島の三ヶ所が開業にあたっての候補地でした。自然が豊かで水が良く、その土地に関する歴史・文化に詳しい方が住んでいる、という三点で候補を絞っていったのですが、自然が豊かで水が良いというのは、日本の中でも様々な場所が持っている特性です。しかし福江島は他の二ヶ所と比較すると歴史文化が複雑に入り混じった場所なので、土地を表現するのならばここだと思いました。
正直に言えば、欧米に販売することを考えたら、静岡の蒲原はとてもわかりやすい要素を持っています。富士山の伏流水があり、わさびやお茶などアイコニックなボタニカルが使えるため、ジャパニーズジンとしては外国人にはわかりやすく訴求する要素が多い。富士山のラベルでも付けて発売すれば売れるだろうと考えましたが、そういうことではないな、と思いました。一方、五島は潜伏キリシタンの歴史がある上、遣唐使船の寄泊地だったために空海(弘法大師)にゆかりのある地でもあり、なおかつそれが住んでいる人にまで浸透しています。この島の時間まで含めて、島自体が守っている雰囲気などを表現したいと思い開業の場所を福江島に決めました。

Q:島ならではのお酒造りの苦労、本土とは違った苦労があればお聞かせください。
A:輸送費が高いなどの問題は当然あります。しかしコロナ禍でオンライン商談が広まったことは大きな転機だったと思います。これがコロナ前だったら商談のために毎回東京まで出る必要があり難しかったでしょうが、新しい時代になってきたことで島にいることがハンデではなくなってきていると思います。
もし静岡の蒲原で開業していたら、いつでも行ける気軽さゆえに来場を取りやめる人も多かったと思いますが、五島でやっているから来てくれている面もあると思います。人間、旅行の計画を立てて飛行機のチケットまで取ったらなかなかキャンセルしないじゃないですか。そういう意味では島だから苦労したという点はそんなになかったように思います。今後、人を雇用するとか規模を拡大しようとすると難しい部分はあると思いますが、規模を追い求めている蒸溜所でもないので問題ないと思っています。

Q:SNSの投稿写真がとても素晴らしいです。写真撮影や投稿はどのように運営されているのでしょうか?また広告戦略についてどのようにお考えでしょうか?
A:五島の「風景のアロマ」が伝わるような写真、広告も含めたPRができたらと思っています。写真から単純に「綺麗」ということを越えた何か、例えばそのときの風や土の匂いなどまで感じてもらえるような発信ができたらと思っています。

Q:ガラスびんを使用した新製品開発、造ってみたい挑戦してみたいお酒など、今後の構想をお聞かせ願います。
A:あまり数字の目標はないのですが、ジンの本場であるロンドンで認められるのが目標の一つです。「GOTOGINというすごいジンが日本にある」ということをロンドンに広めたい。そして世界中の人々がGOTOGINを飲んで五島に遊びに来てくれるということができたら良いと思っています。日本では北海道から沖縄まで「今回の旅行はGOTOGINがメインなんです」と言って来てくれる方々が増えました。免許まで取ってはいるものの人手がなくて試飲販売が実現できていないのですが、本当は蒸溜所に来た方々と乾杯したい気持ちです。このように日本では様々な方が遊びにきてくれるということを達成できているので、今度は世界の方々がGOTOGINをきっかけに遊びに来て、福江島の「風景のアロマ」を感じてもらえるようになると素敵だなと思っています。

8.終わりに

福江島が持つ自然・歴史・文化・精神から生み出される「風景のアロマ」を掲げ、土地そのものを感じさせてくれるお酒であるGOTOGIN。今回お話を伺い、背景にあるストーリーや土地との結びつき、作り方まで含め、世界に誇るジャパニーズ・クラフテッド・ジンであると感じました。ガラスびんもその重要な要素の一つとして関われたことを非常に嬉しく思います。これからもガラスびんは確かな品質により、作り手の想いまで生活者の皆様にお届けして参ります。