後手四間飛車対エルモ③▲4九金・▲4六歩型
今日は▲4九金・▲4六歩型について見ていきます。
初手より
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩
▲4八銀 △4二飛 ▲5六歩 △3二銀
▲6八玉 △6二玉 ▲7八玉 △7二銀
▲2五歩 △3三角 ▲5七銀 △7一玉
▲3六歩 △5二金左▲6八銀上 △8二玉
▲9六歩 △9四歩 ▲7九金 △4三銀
▲4六歩で第1図。
ここで△5四歩として一直線に▲4五歩を受けて立つ順は割愛します。理由は二つ。第一に、一般的に▲4五歩早仕掛けには△5四銀の形が優秀という認識があるため。第二に、早仕掛けに対して振り飛車は飛車を回らないため、▲4九金の浮き駒が何かと当たってしまう可能性が高いためです。仕掛ける前に金を一手動かすことになりますが、そうなると▲4九金型以外の仕掛け筋に合流するので、その時にまた見ていこうと思います。
長くなりましたが、第1図で振り飛車は△5四銀と出る一手。従来の▲4五歩早仕掛けには玉頭銀が有力な対策だとされていますが果たしてこれがエルモ囲いにも当てはまるかどうかが一つのポイントです。
△5四銀以下
▲3七桂△6五銀に▲7七銀で第2図。
▲7七銀に代えてすぐに▲4五歩は△同歩と取られてしまい、手順に△4六歩と伸ばされてしまいます。▲4九金型エルモ囲いは舟囲いと違い中央が薄いので、4七の地点を狙われる展開になっては勝てません。
▲7七銀はこの一手。形よく▲7六歩を守れるのがエルモの一つの長所。代えて▲7五歩では7六の地点に穴が開きます。
ここで後手の本筋は△6四歩ですが、一見すると△3五歩もやってみたくなる手なのでそちらを先に見ていきます。
第2図以下指し手①
△3五歩 ▲同 歩 △1五角 ▲3八金
△3二飛 で第3図。
ここで▲4七金などと指してしまうと△3五飛▲3六歩△3四飛で振り飛車に石田流の好形を許してしまいます。
ここは最強手段の迎撃が求められる局面です。
第3図以下
▲1六歩 △4二角 ▲6八銀左 △7六銀
▲4四角 △3三角 ▲同角成 △同 飛
▲7七歩で第4図。
▲1六歩で角を追ってから▲6八銀左が好手段。本譜はここで△7六銀でしたが、△3五飛には▲4四角△3四飛▲1一角成△3六歩に▲3九香が落ち着いた好手。角換わりでも出てくるような受けの手筋ですね。
仕方なく△3三角ですが、▲2一馬(参考図)と避けた手が銀に当たるようでは居飛車優勢が明らかです。
本譜に戻り、△7六銀から第4図までは一本道の変化。果たしてこれがどうなっているのか、もう少し進めてみましょう。
再掲第4図
第4図以下
△3六歩 ▲7六歩 △3五飛 ▲4五桂
△3七歩成 ▲2六角 △2八と ▲3五角
△3八と ▲5三桂成(結果図1)にて居飛車優勢。
△8七銀成として居飛車の玉形を乱す手もありましたが本譜は△3六歩~△3五飛に期待した手順。しかし△3七歩成の瞬間▲2六角が機敏な反発で、手順に桂を成りこめた結果図は居飛車が優勢です。
という訳で▲7七銀の瞬間の△3五歩は居飛車に正しく指されると無理筋というのが結論です。もっとも、端歩の突きあいがあれば△1五角がないのでそもそもこの変化もないのですが、居飛車からしたら敢えて端歩を突かずに振り飛車にこの変化を誘導する作戦も有力かもしれません。
戻って第2図。振り飛車が自然に囲いを発展する間の居飛車の仕掛けが難しいように見えますが…
ここから
△6四歩 ▲5八金 △5四銀 ▲4七金
△7四歩 ▲6八銀左で第5図。
▲5八金に△5四銀と戻らないと▲5五歩や▲7五歩で銀が殺される心配が出てきます。△5四銀に▲4七金と上がる理由は、上部に手厚くして後に△4五歩~△4六歩に同銀と取れるようにするためです。そして△7四歩に▲6八銀左が狙いの一手。
この手は次に▲5五歩△4三銀▲5六銀と好形にしてから▲4五歩の仕掛けを狙っています。こうなると振り飛車が作戦負けなので△6五銀とするよりないですが、▲4五歩で戦いが始まります。▲7七銀はただ受けている一方の手ではなく、▲4七金型にするまで我慢してから仕掛けようという意図だったのです。
▲4五歩に後手は
(1)△7六銀
(2)△同歩
の2通りありますが、まずは(1)△7六銀を見ていきます。
第5図以下
△6五銀 ▲4五歩 △7六銀 ▲2四歩
△同 歩 ▲4四歩
で第6図。
ここでも後手の指し方は2つあります。
(i)△9五歩
(ii)△同角
まずは(i)△9五歩を見ていきます。
第6図以下
△9五歩 ▲同 歩 △9七歩 ▲7七歩
△8五銀 ▲9七桂 △9六銀 ▲4六銀
(結果図2)で居飛車指しやすい。
端攻めは玉頭銀と連動した攻め筋ですが、居飛車は▲7七歩~▲9七桂で嫌味を消してからじっと▲4六銀が好手。結果図2となっては振り飛車から手出しが難しく、居飛車が手厚く指しやすいでしょう。
次に(ii)△同角を見ていきます。
再掲第6図以下
△同 角 ▲同 角 △同 飛 ▲4六銀
△5四角 ▲8八金(結果図3)
で振り飛車攻めがやや軽い。
△同角は角交換してからの△5四角に期待した手ですが、▲8八金と受け止められると攻めが止まっている印象。次の▲2四飛よりも早い攻めをひねり出すのが難しく居飛車指しやすいでしょう。
第5図以下△6五銀▲4五歩に
(1)△7六銀では居飛車が指しやすいことが分かりました。
そこで、△7六銀に代えて
(2)△同歩(第7図)を見ていきます。
こちらが本筋の一手で、△4六歩と突けるだけ攻めの幅が広いです。
第7図以下
▲3三角成 △同 桂 ▲2四歩 △7六銀
▲2三歩成 △4六歩(途中図)
▲同 金 △5四角 ▲8八金 △4六飛
▲同 銀 △3六角(結果図)
にてやや振り飛車持ち。
▲2四歩を無視して△7六銀が好手で▲2三歩成の瞬間△4六歩(途中図)と突いて先手の対応を見ます。
本譜は▲同金のため、△5四角~△4六飛~△3六角と荒捌きして、難しいながらも振り飛車攻めが続きそうな形勢。
結果図4以下▲3三とには一回△2七歩と打てるのがポイントです。
途中図で▲同金に代えて▲同銀の場合は
△2七歩▲5八飛の交換を入れてから△4六飛~△2六角とすれば、荒っぽいながらも攻めを振りほどくのは容易ではないです。
こういう戦いになると振り飛車の美濃囲いがとても光って見えますね。
以上で▲4九金▲4六歩型の仕掛けの一例を一通り見てきたわけですが、最後に一つ、居飛車の面白い手を紹介しようと思います。
再掲第5図は▲6八銀左としたところですが、実はこの手に代えて▲5五歩!とする手が成立します。(第8図)
これに銀を引いてしまうと▲5六銀~▲68銀で居飛車が作戦勝ちになるので△同銀と取るよりないですが、▲9五歩△同歩▲8六銀△5四歩△9五銀(結果図5)まで進み、これはいい勝負。
本筋の変化ではないため深く掘り下げませんが、お互い玉形が乱れる変化なので力戦が得意な人が力を出しやすいと思います。
以上で▲4九金 ▲4六歩型は終わり。次は▲4九金▲5六銀型を見ていきたいと思います。
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