自宅の設計について_その2

木造住宅の設計経験はゼロ。設計したこともないものをつくるときに最初に考えたのは、性能だったが、やっぱり性能だけでは、ピンとこない。

性能について考えていく中で、徐々にどんな空間にしたいかについてシフトしていった。

結論から行くと、設計するときに考えたのは、以下のことである。

①動線を意図的に長くしてみる
②扉はなくしてみる
③完成していない感じ
④窓はできるだけ大きく
⑤上下階のつながりをつくるちょっとのスキップフロア

ヒエラルキーがちょっとおかしいかもしれないが、まぁ自分の実体験に基づくと、こういう順番になる。
そして、どれも図面なしである程度語れるという点で、自分の中での普遍解なのかもしれないなと思ったりした。


①動線を意図的に長くしてみる

今、賃貸で、75㎡程度の3階建ての戸建てに住んでいる。各階の面積は25㎡と、そこまで広くはない。
1階が玄関と水回りと、寝室が1つ。3階は寝室が2つ。そして2階がリビングになっている。階段は家と平行についているので、リビングが3層の家の踊り場ともいえる。

はじめ、このリビングの真ん中に、ダイニングテーブルを置いていた。でも壁が少なく、本棚が置ききれなかったので、あるとき、本棚とダイニングテーブルをくっつけて、階段側の壁に寄せて置いてみた。

その結果、動線が長くなった。3階に行くには、わざわざ、階段と反対側の壁際を通って、ダイニングテーブルの周りを回らなければならなくなった。
でも、このレイアウトになって、一瞬家が広くなったように感じた。

振り返ってみると、家に帰ってきて、3階に行くわけでもないのに、3階に最短で行けるような動線があることが、貧乏くささというか、せこい感じがした。もちろん、1階の水回りと3階の寝室との行き来は面倒になったが、気になったことはない。

狭い家でも、意図的に動線を長くしてみると、結果的に広く感じるのではないかと仮説を立ててみた。

今、振り返れば、最終案とそれまでの案は、どれも動線が意図的に少し長くなっている。そして、動線の終着点にプライベートな場所がある。

②扉をなくしてみる

最初は、扉がなく、なんとなくひとつながり感のある、吹き抜けの周りに部屋のようなものが、くっつくものを考えた。階段もその吹き抜けにある。
戸建て住宅でよくある、壁で仕切られた部屋と廊下というプランが、戸建て住宅っぽさがありすぎて嫌だった。

ただ、扉をつくらないのは、まず第一にコストで、カーテンで、音や空気を遮断できるし、必要となれば、竣工してからでもつけられると考えたから。
昔、賃貸で扉を壊したことがあって、1本10万程度の修理費用がかかったので、5本やめたら、50万と考えると、全部やめればいいんじゃないかと思ったわけである。
遮音カーテンもあるし、最近は建築家もおそらくコスト的な観点からカーテンを多用するになっているし、あと猫も飼っているので、扉を閉めたら夜中はノック地獄である。猫用ドアなんか、猫には悪いけれど、もったいなくてつけられない。それならペットフードを高いものにしてあげたい。

③完成していない感じの家

建物はもちろん完成したときが1番きれいだけれど、時間が経てば色々な部分が劣化する。劣化して悪く見えるものと、劣化してもまぁいいかと思えるものがあって、できれば後者のものを使いたい。
だから、できるだけ”~風”みたいな素材を使用するのを禁止したのと、綺麗を取り繕うだけの素材もやめた。前者は、木調とか石調とかのあらゆる偽物系材料。後者の代表選手は壁紙。やっぱり壁紙は貼ったときが1番綺麗。旅館なんかに行っても、壁紙は経年で色あせするし、傷がついたところの壁紙が剝がれてます感が良くない。

だから、家は合板、コルク、フローリングまたセメント系のフレキシブルボードといった素材そのものを現しにすることを目指した。木毛セメント板とかハードボードも木質系材料の一種なので、リノベーションするときにでもどこかに使ってみたいなと思っている。

水回りは、メラミン化粧板を使おうか少し迷った。合板と水はやっぱり相性がよくないので。ただ、メラミン化粧板は偽物というわけではないし、性能的には良いのだが、施設系の材料色が強くて、家で使いたくなかったので、却下した。合板が水吸ってダメになったら、取りかえればいいかという気持ちでいる。

ただ、都内、準防火地域で3階建てのため、普通に設計すると準耐火建築物になり、内装でも石こうボードが必ず必要なので、”合板下地現し”としての合板仕上げはできず、石こうボード下地の上の化粧合板という仕様になってしまうが、このあたりは準耐火建築物”等”の”等”で逃げて・・・。法規の話はまた別の機会に。


④窓はできるだけ大きく

建売住宅っぽさとして、引違い窓がなぜかやり玉にあがるが、自分は引違い窓の方がいいと思っている。ただ、使うなら中途半端なサイズではなく大きく使うのがいい。プライバシーは障子でもカーテンでもつければ取れるし、せっかく耐力壁がつくれるところを開口にしたのだから、フルに開口として活用したい。

そして、縦スリット窓3連とか、ハイサイドスリット窓の方が、逆に注文住宅感があって、好きじゃない。そもそも3連の縦スリット窓は、窓が1つで
いいところを3つ作っているのだから、シンプルにコストが倍以上になる。
試しに、YKKのエピソードⅡ防火窓の設計単価を見てみると、下記のようになっており、やはり倍以上。

たてすべり出しスリット窓02113(w=210,H=1,300):119,000円
すべり出し窓06013(w=600,H=1,300):148,200円
(価格は税抜き、ガラスはLow-Eの耐熱強化透明仕様)

YKK_エピソードⅡ防火窓 積算・発注設計資料編_価格改定版2024年02月

さらに、スリット窓はガラスの枠部分の比率がガラスに対して、相対的に大きくなり、開口の半分は枠みたいことになっている。

⑤上下階のつながりをつくるちょっとのスキップフロア

都内に建てるとなると、1階だけでなく、2階も結構暗いと思う。なにせ周りも同じように3階建てである。
そうすると、上の階からの自然光とか、吹き抜けが有効になる。
はじめ、リビングの吹き抜け+階段みたいな空間を検討していたのだが、空調の問題や、手の届かない天井や壁(メンテナンスできない)といった性能上の問題に加え、なんとなく落ち着きがないという理由で却下した。
次に、半階スキップフロア的なものを考えてみたが、階数が3階ではなくなる可能性がありそうなのと、構造的に難易度が上がるので、これもやめた。実は、半階スキップフロアが1番やりたかったのではあるが。

そこで、普通にスキップフロアのない断面を検討したのだが、それでも2階にいるときに、天井の圧迫感や、3階から見てもレベル差がないのが、家としてのまとまりに欠けるように思えた。
そこで、梁成2本分の360mmの段差を3階の床につくった。構造の参考書を読んだら、梁2本分程度の段差なら、スキップフロアほど、構造的な負担が少ないと書いてあったのだが、実際には、それでも水平構面が段差のところで切れてしまうので、構造の調整は難しかった。耐震等級2が限界だったが、吹き抜けのある案よりも、構造的にはしっかりした案になった。

この上下のつながり感は、実際にできてみないとわからないので、結構楽しみにしている。


まだ設計段階なので、全部成功するかわからないけれど、合理的に考えていくと、自分の中ではこうなったという感じである。全体的に流れるよう空間みたいなものを作りたかったのかな。外とのつながり、内部同士のつながり。動線が長いけれど、廊下はないので、部屋が動線になっている。扉も最小限。将来変えてもいい。完結しない。空間的にも、時間的にも。



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