禅画でユーモアを学ぶ?
文京区目白台の永青文庫で開催中の「仙厓ワールド~また来て笑って!仙厓さんのZen Zen 禅画~」を見に行った。
私がこの展覧会を見に行ったのは、自分の文章の表現にユーモアが足りないと思ったから。なにしろ、このポスターになっている絵が「虎」だというのだから、どんなおもしろい人が描いた絵なのだろう?と思った。恥ずかしながら、仙厓さんという方が禅僧で、こういう絵のことを禅画ということすら知らなかった。
しかも、この展覧会のことを知ったのは「この施設へオトクに行けそうだったから」という理由である。
通常、この永青文庫へ入場するには1,000円の料金がかかる。しかし、私は東京を中心とする101の美術館・博物館等の入場券や割引券がセットになったお得なQRコードチケット「東京・ミュージアム ぐるっとパス2022」(以下、ぐるっとパス)を持っている。幸いなことに、永青文庫はその101の施設のうちの1つで、しかも入場料が「割引」ではなく、ぐるっとパスのみで入場できることを、パスの案内で知ったのである。
ぐるっとパスは1枚2,500円(大人料金のみ)で、有効期間は最初に利用した日から2ヶ月間。各施設指定の展示を1回利用できる。1枚2,500円で買ったのだから、入場料1,000円のところに行けば、あと1,500円分でモトがとれるじゃないかと思ったのが、永青文庫に行こうと思った本当の理由であった。
……と書いていて思ったのだが、「自分の文章の表現にユーモアが足りないと思ったから、この展覧会に行った」というのは結局、後づけでしかないのかもしれない。
とにもかくにも、永青文庫へ行った。この場所は、地下鉄の早稲田駅または江戸川橋駅から、いずれも徒歩15分。私は早稲田駅から歩くことにしたのだが、早稲田へ行くこと自体がめったにない身にとって、「一体、ここはどこだ?」「本当にこの道で合ってるんだろうか?」と思う道のりであった。
着いてみたら、永青文庫は肥後細川家の庭園に隣接する美術館で、庭園の方が有名といってもいいくらいの場所だった。細川家の16代当主の方が、禅画をはじめとする美術品のコレクターだったからできた施設だそうである。
……私、いろいろ知らなさすぎる。
東京に住んで15年以上も経つが、なにしろ美術館や庭園などに興味を持ち始めたのはコロナ禍になってからである。それまでは美術館にも庭園にもほとんど興味はなく、文化的なものを見に行くのはせいぜい落語くらいなものであった。
しかも、落語も常設の寄席に行く勇気はなく、毎月、渋谷で開かれている落語会に、気になる落語家さんが出るときだけ見に行くという、にわかもにわかの落語ファンなのである。
いや、今は落語の話はよそう。永青文庫へ禅画を見に行った話である。
展示会場内は撮影禁止なので、どんな作品があるのか、詳しくご紹介することはできないが、とにかくいずれも、いわゆる「ヘタウマ」な感じで味があり、クスッと(もしくはゲラゲラ)笑えるおもしろさだった。美術館へ行ったのに、あんなに笑ったのは初めてかもしれない。
で、おもしろかったから図録を買おうと思ったのだが、この展覧会では図録ではなく、この施設の季刊誌を販売していた。
季刊誌の中では、仙厓さん研究の第一人者で、現在は福岡市美術館総館長の中山喜一朗氏が『永青文庫の仙厓コレクション 「野雪隠」から「ぼうぶら」まで』というタイトルで解説を寄せているので、一部を引用する。
すごい。仙厓和尚さん、実はいろんなことを考えて、こうしたユーモアたっぷりの禅画を描いていらっしゃったんである。この解説を読んでいなかったら、単に「おもしろい展覧会だったなぁ」で終わっていたと思う。この季刊誌を買ってきて、本当によかったと思った。
ちなみに、この解説文のタイトルにある「野雪隠」という禅画は、1人の人物がお尻を出して「野○○」をしている様子の絵に「人は来ないよな」という意味の文字が書かれている……。
私はこの「野雪隠」のことを、今回の企画展のパンフレットとこの季刊誌で知った。幸いにも後期(6月22日~)で展示予定とのことなので、必ず本物を見に行こうと思っている。
文京区目白台の永青文庫で開催中の「仙厓ワールド~また来て笑って!仙厓さんのZen Zen 禅画~」は、7月18日(月・祝)まで。月曜日は休館。
おもしろい展覧会に行ったから、なにかおもしろいことを書こうと思っていたのに、結局、ごく普通の案内になってしまった。ユーモアとは、そうカンタンに表現できるものではないんである。