適格消費者団体による、ラフィネへの申し入れと規約の改善
適格消費者団体、消費者機構日本が自費診療クリニックの広告差止を求めて提訴した。
それで消費者機構日本のウェブサイトを見ていたら、リラクゼーションチェーン、ラフィネを運営する株式会社ボディワーク社に対し、下記の申し入れ活動があった。
【2023年12月11日:掲載】
株式会社 ボディワーク(ラフィネe-Gift)の「利用規約」が改善されました。
消費者機構日本に対して、株式会社ボディワーク(東京都中野区)が発行する「ラフィネe-Gift」について、店舗が休業しているにもかかわらず、使用期限の延長等の対応がないと、多数の消費者より情報提供がありました。そのため消費者機構日本は、株式会社ボディワークに対して、「ラフィネe-Gift利用規約」の見直しについて申し入れ等を行いました。その結果、一定の改善が図られたことを公表いたします。
新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴う緊急事態宣言に伴い、店舗が休業したにも関わらず、ラフィネは有効期限を延長しなかった。そのため私は下記ブログ記事を書き、同記事の中で消費者機構日本を含む特定適格消費者団体に相談するように呼びかけた。
私のブログの効果かどうかは不明だが、消費者機構日本に多くの消費者が相談を寄せ、ラフィネに申し入れをし、規約の改善がされたわけである。
さて、申し入れの詳細は下記PDFの表にまとめられているので取り上げてみよう。装飾は筆者による。
https://www.coj.gr.jp/request/pdf/topic_231211_01_01.pdf
1.2021年12日2日付 申し入れ
申入れ・要請・質問の趣旨
申入れ 第9条1項の削除を求めます。
申入れ・要請・質問の理由
規約第9条1項は,同項各号に定める場合を除き,本件チケットの返金をしない旨の規定です。
当該規定は消費者契約法10条に該当し無効であるものと考えます。
消費者契約法10条は,「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって(以下「第一要件」といいます),民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの(以下「第二要件」といいます)は,無効とす る。」と規定しています。
貴社は,先般の緊急事態宣言中あるいは各地方自治体による休業要請期間中に有効期限が徒過した本件チケッ トの取り扱いに関し,規約の通り,返金ないし有効期間の延長を行わないとの対応を行いました。
利用規約第9条1 項1号ではすべての対象店舗において本件チケットの受領又は対象商品等との引換ができなくなった場合に本件チケットの交換又は返品ができるものとしています。
緊急事態宣言中の臨時休業の状況によれば,新型コロナウイル ス感染症の影響の少ない地域では臨時休業がなく,あるいは時短営業を行っているようであり,同号の「すべての対象店舗においてできなくなり」という要件を満たさず,顧客は本件チケットの交換又は返品を受けられないこととなります。
本件チケットは,有効期限中は顧客が所定の役務提供あるいは対象商品等の引換が可能なチケットとして販売しているものです。そのため,貴社は本件チケットの有効期限までの間,所定の役務提供を行う営業体制を継続する義務があるところ,緊急事態宣言あるいは休業要請によって店舗を臨時休業する等して,役務提供の継続ができなくなった場合には,本来であれば貴社に債務不履行責任が生じるものと考えます。
もっとも,新型コロナウイルス の影響による臨時休業は貴社に帰責性のないものですので,債務不履行責任が生じないとしても,危険負担の債務者主義の考え方に基づき(民法第536条1項),反対給付である本件チケットの代金支払義務のうち残額に相当する部分については履行を拒むことができ他方、既に貴社が履行を受けた本件チケットの残額に相当する金額は不当利得として返金すべきと思慮します。
しかし,利用規約第9条1項は,規定の場合以外に返金を行わない旨の規定ですので,民法の適用による場合に比して,消費者の権利を制限する消費者契約の条項であるといえ,消費者契約法10条の第一要件を満たします。
また,利用規約第9条1項の適用により,消費者は役務提供を受けていないにもかかわらず,本件チケット残額相当額の返還請求権を喪失することとなりますので,民法第1条2項に規定する基本原則に比して消費者の利益を一方的に害するものといえ,消費者契約法10条の第二要件を満たします。
そのため,利用規約第9条1項は,消費者契約法10条に該当し無効ですので,削除を求めます。
㈱ボディワークからの回答
第9条は変更せず、新たに22条を追加 第9条 (本件チケットの交換、返品)
1. お客様は、以下の各号に定める場合を除き、本件チケッ トの交換または返品をすることはできないものとします。
① 本サービスの終了により本件チケットの受領、又は対象商品等との引換がすべての対象店舗において出来なくなった場合
② 当社のシステム障害により、本件チケットの受領、又は対象商品等との引換えがすべての対象店舗においてできなくなり、本件チケットの有効期限が経過した場合
第22条(個人の利用等)
購入者もしくは利用者が個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)の場合で、本規約のいずれかの条項が、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して、購入者もしくは利用者の権利を制限し又は義務を加重し、かつ民法第 1 条 2 項に反すると 認められた場合は、当該規約は法令中の公の秩序に関しない当該規定の内容に読み替えて適用されるものとします。
2.2022年2月22日:打ち合わせ
利用規約第9条が「消費者契約法10条に抵触する。」として改善の申し入れ。
また免責を規定する利用規約第17条が「消費者契約法8条1項に抵触する。」として改善の申し入れ。
㈱ボディワークからの回答(規約の変更)
第9条(本件チケットの交換、返品)
4項の追加
消費者契約法の消費者に該当するお客様については、お客様側の都合・主観・事情によらずにやむをえず有効期限を経過した場合、例えば天災地変・戦争、緊急事態宣言、その他これらに類する政府・自治体等からの要請に応じ当社が多数の対象店舗を休業するなどしたため対象商品等のお客様への提供に支障が生じた場合、その他これに相応する場合に、 当社が定める手続・方針に従って当社にすみやかにお申し出があった場合は、有効期限の延長あるいは当社受領済み代金の未使用相当金額の返金等のうち当社が認めた対応を、 当社の定める手続・方針に従って行います。 なおこれらの手続にあたり当社の定める手数料等をお客様にお支払いいただきます。
第17条 (免責)
7.当社の債務不履行または不法行為に基づいてお客様に発生した損害を賠償する場合、当社は、当社に重過失がある場合に限り、お客様が直接被った損害を上限として損害賠償責任を負うものとします。
第22条 (個人の利用等)
お客様が個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)の場合は以下のとおりとしま す。
2 本規約のいずれかの条項が、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して、お客様の権利を制限し又は義務を加重し、かつ民法第 1 条 2 項に反すると認められた場合は、当該規約は法令中の公の秩序に関しない当該規定の内容に読み替えて適用されるものとします。
会社側の損害賠償について、重過失のみに限定する旨の改訂である。
3.2022年12月6日:質問及び要請
第16条 (利用の中止)
規定
第16条 (利用の中止)
1.当社は、以下の各号の一に該当する場合、お客様へすみやかに通知のうえ、個別の売買契約の解除をすることができるものとします。
①善良な管理者の注意義務をもってしても予測できなかった当社システムの不具合やエラーにより売買契約の成立等に不備が生じた場合
②本件チケットの価格表記が誤っていることが明らかな場合
2.当社は、お客様が以下の各号の一に該当する場合、なんらの通知を行うことなく、本サービスの利用を中止または個別の売買契約の解除をすることができます。なお、当社は、お客様に対して当該措置の理由を開示する義務を負わないものとします。
①当社への支払を怠った場合
② 本規約に違反した場合
③その他当社が本サービスの利用継続に適さないと合理的に判断した場合
3.前二項によりお客様に損害が発生したとしても、当社は一切責任を負わないものとします。また、当社は、当該措置につき、お客様へのなんらの補償も行わず、責任も一切負わないものとします。
消費者機構日本からの申入れ・要請・質問
<質問の趣旨>
利用規約第16条3項は,本サービスの利用中止または個別の売買契約の解除により,顧客に損害が発生したとしても貴社が一切の責任を負わない旨定めていますが,個別売買契約の解除あるいは本サービスの利用中止の場合に未使用分相当額の本件チケットの返金はなされるのか,ご教示下さい。
㈱ボディワークからの回答(変更内容)
16 条 1 項 2 項の解除・利用中止による未使用分の本件チケット代金は返金しますが、当社は合理的な返還手数料を頂きます。
また、当社がお客様の責めに帰すべき事由 (本規約違反等) により損害を被った場合は、同返還金から損害賠償額を控除します。
第17条 (免責)など
規定群を二つにわけて質問・申し入れをしている。ラフィネはそれに対してまとめて回答している。
一つ目の規定
第17条 (免責)
7.当社の債務不履行または不法行為に基づいてお客様に発生した損害を賠償する場合、当社は、当社に重過失がある場合に限り(ただしお客様が個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合 におけるものを除く)の場合を除く)、お客様が直接被った損害を上限として損害賠償責任を負うものとします。
消費者機構日本からの申入れ・要請・質問
利用規約第17条7項は,貴社の債務不履行または不法行為に基づいて顧客に発生した損害を賠償する場合,顧客が直接被った損害を上限として損害賠償責任を負う旨規定していますが,括弧書きにおいて,顧客が「個人の場合を除く」と規定しています。
この個人の場合を除くというのは,顧客が個人の場合には,重過失に限定されない,すなわち,貴社の軽過失の場合でも直接損害を上限として賠償責任を負うという意味なのか,顧客が個人の場合には,直接損害の上限がないという意味なのか,ご教示下さい。
なお,利用規約第17条7項が,貴社の軽過失の場合の一部免責(前者の場合)の規定であるとすると,令和4年の消費者契約法改正において,以下の規定(8条3項)が新設されましたので,この点についてもご検討下さい。
「事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)又は消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項であって、当該条項において事業者、その代表者又はその使用する者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは、無効とする。
二つ目の規定群(全部免責条項等)
第17条 (免責)
2.当社は、お客様が本サービスを利用すること、または利用できなかったことによって損害、トラブル等が生じた場合であっても本規約に別途定める場合を除き、責任を負わないものとします。
5.本サービスにおいて投稿情報が本規約または個別規約に定める事項の一つにでも違反した場合、当社は、当該情報の全部または一部の削除を行い第18条第2項の定めにしたがって本サービスの利用を中止させる場合がありますが、それによって生じた一切の損害に関していかなる責任も負いません。また、当社は、違反があった場合でもそれを削除等する義務は負わないものとします。
7.当社の債務不履行または不法行為に基づいてお客様に発生した損害を賠償する場合、当社は、当社に重過失がある場合に限り(ただしお客様が個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合 におけるものを除く)の場合を除く)、お客様が直接被った損害を上限として損害賠償責任を負うものとします。
第18条 (本サービスの中止)
1.当社が必要と認める場合、当社はなんらの通知を行うことなく、本サービスの全部または一部の提供を中止または終了することがあります。なお、本規約に別途定める場合を除き、当該中止または終了によりお客様に損害が生じた場合であっても、当社はいかなる責任も負わないものとします。
第22条 (個人の利用等)
お客様が個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)の場合は以下のとおりとします。
1 16条3項、17条2項、5項、7項、18条1項については、当社に故意または過失がある場合は適用されません。故意または重過失でない場合は、お客様が直接被った損害を上限として損害賠償責任を負うものとします。
2 本規約のいずれかの条項が、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して、お客様の権利を制限し又は義務を加重し、 かつ民法第 1 条 2 項に反すると認められた場合は、当該規約は法令中の公の秩序に関しない当該規定の内容に読み替えて適用されるものとします
消費者機構日本からの申入れ・要請・質問
<要請の趣旨>
利用規約第17条2項,同条5項及び第18条1項(以下「全部免責条項」といいます。),第17条7項及び改定案の第22条1項,2項の規定を整理し, 消費者に分かりやすい条項を規定するよう要請します。
<要請の理由>
全部免責条項は,貴社の損害賠償責任を全部免責とするものですが,一方で,利用規約第17条7項は,貴社の債務不履行または不法行為に基づ いて顧客に発生した損害について,軽過失の場合の一部免責を規定しています。さらに,改定案の第22条1項は,第16条3項,第17条2項,5項, 7項,第18条1項について,貴社に故意または過失がある場合に適用がない旨規定しています。
消費者からすれば,これらの規定の適用関係が分かりにくいものとなっているといえます。 消費者契約法3条1項1号は,「消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が,その解釈について疑義が生じない明確なもので,かつ,消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。」として,事業者に努力義務を課しています。
当該規定の趣旨に鑑みれば,より消費者にとって理解しやすい規約を定める配慮義務が貴社にあります。
また,前述の通り,令和4年の消費者契約法改正により8条3項が新設されていますので,この点も考慮した上で,上記規定を整理するよう要請します。 なお,改定案の第22条1項第1文につきまして,「16条3項、17条2項,5項,7項,18条1項については,当社に故意または過失がある場合は適用されません。」と規定されていますが,「当社に故意または過失がある場合」ではなく,「当社に故意または重過失がある場合」であると思われますの で,修正をお願いします。
㈱ボディワークからの回答
【質問事項 2 及び要請事項 】
利用規約 17条7項は、お客様が個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)の場合で、かつ当社の軽過失の場 合、直接損害を上限として賠償責任を負うことを定めています。
規約は、本来法律・契約上の取扱規定ですので、平易にする といっても、規定の内容が変わらないようにするために限界がありますが、 貴機構からの要請事項を踏まえて、以下のとおり、 17 条 7 項の(ただし・・・・除く)を削除し、 22 条 1 項の表現を修正して整理します。
修正案
17条
7.当社の債務不履行または不法行為に基づいてお客様に発生した損害を賠償する場合、当社は、当社に重過失がある場合に限り (ただしお客様が個人(事業としてまたは事業の ために契約の当事者となる場合におけるものを除く)の場合を除く) 、お客様が直接被った損害を上限として損害賠償責 任を負うものとします。
第22 条 個人の利用等
お客様が個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)の場合は以下のとおりとし ます。
1 16 条 3 項、 17 条 2 項、 5 項、 7 項、 18 条 1 項に定める当社の責任は以下のとおりです。
① 当社に故意または重過失がある場合、当社は損害賠償責任を負います。
② 当社に故意または重過失がなく、軽過失がある場合、当社はお客様が直接被った損害を上限として損害賠償責任を負います。
この記事はほとんどコピペですが、適格消費者団体に相談を促す記事の作成は時間がかかったので支援していただけるとありがたいです。有料部分はお礼のみになります。
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