5軒巡るも名残りを残す 2023/8/31
前日から続いている飲み歩き2日目。
ラズウェル細木先生とスズキナオさんと巡る兵庫の旅。今日は明石と姫路だ。
チェックアウトギリギリに起きて急ぎ身支度。ラズ先生の宿泊ホテルの前で3人待ち合わせる。互いの体調や気分を確認し、まずは姫路へ行こうということになった。
ってことはアレだ、かどや食堂にマストで行かねばだと合意を取る。西明石から姫路までは20分ほど。運良く数分後に発車する新快速に小走りで飛び乗り、間に合う。幸先いいぜ!
車内では姫路をどう巡るかプランを立てるべく、手持ちの情報や希望を出し合う。
昨日明石を散策している時にラズ先生と「穴子……食べたいですね」「食べたいよね」と短い間に数回交わした。姫路のうまい穴子屋だけは情報ゲットしておきたい、と姫路の知り合いメンバーにおすすめ店募集のLINEを送っておく。
わたしは2年弱姫路に仕事で通い、3ヶ月だけ住んだ。あの頃は新しい可能性をザクザク拓いていた頃で、楽しんでチャレンジを続けていた毎日だった。それと反比例するように私生活は悲しいことも続き、そのモロモロを酒と仲間が包んでくれた、思い出深い街だ。
姫路駅着。
まずは駅舎を出てすぐ見える姫路城の顔を拝む。駅前から一直線に伸びているのは大手前通りという幅広いメインロード。姫路城が、まさに『鎮座ます』この街のつくりはいつ見ても素晴らしい。
「姫路に来たぞ~!」感がMAXになり、テンションをググッと上げてくれるのだ。ここに着くとみな必ずカメラを構える。ラズ先生もシャッターを押していた。
とはいえ呑べえ御一行、早く1軒目に行きたい。
必ず行こうと事前に打ち合わせていた、大衆食堂かどやへ向かうためそそくさとタクシーに乗る。
目的地を伝えると「え?何しに行くの?」と不思議そうな運転手のおっちゃん。ごはん食べに行くんですー、しぶくて素敵なところですよねー、などと話すと「へぇ、そうなんだ。そうだね、お客さんは減ってるみたいだけどねぇ」とのこと。やはり昔からあるお店を地元の方は知っていて、存在や変化を感じているのだな。
わたしはかどやへの訪問は2度目。春ごろにナオさんとご一緒した以来だ。再訪できてとても嬉しい。前回は駅から20分ほどの道のりを汗をかきながら歩いた思い出。
かどやは創業80年を超えた激シブの食堂で、地元の方に昔から愛されているような懐かしいめしやだ。いくつかのテーブルと小上がりがあり、テレビを眺めながら朝から飲んでいる人が数名の先客。
このテーブルの上に乗ったやかんと湯呑みよ。愛すべき風景。ポストカードにしたい。(やかんの中身はもちろん麦茶)
キリン大瓶を注文し3人で分ける。お店の隅にあるおでん台の前へ行き、めいめいの皿に好きなものを。姫路おでんなので最後に生姜醤油をタラリとかけてくれる。その様を一緒に見ていたラズ先生と顔を見合い、目で語る。
「あれが生姜醤油?」「まさに、あれが生姜醤油です。」
ラズ先生が「おでんのたまごには思い出がある」と話してくれた。話のネタにまでおでんが染み出していて酒が進む。まったりとした空気ではあるが胸中は楽しさで爆発しそうで困った。こんないい酒場でこのメンツで飲んでるなんて。(わたしは元々両名の愛読者でもあるのだ)
この店は中華そばがしみじみ美味しいとナオさんのおすすめ。堪能したいところだが、この後ハシゴに備えてつまみだけにしておきたい。
ガラスケースの惣菜からマカロニサラダをいただき、つまみながら残りのお酒(すでに缶チューハイに切り替えている)をやっつける。
わたしは最近にして、やっとマカロニサラダの存在価値を感じることができました……とラズ先生に伝えると、
マカロニは個々の大きさが揃っているのでつまみに最適である、ペースを掴むことができるからね、
ということをおっしゃっていて、ハハー!となった。(時代劇的なやつをイメージしていただきたい)
酒焼け声の話で3人で爆笑したり、ラズ先生の漫画家としてのお仕事についても聞けて嬉しかった。この時点でナオさんはほろ酔いのように見えたな。
まだまだ味わいたいものだらけだが、次を目指して席を立つ。名残惜しいが、また必ず来る。
バスを使い、大手前通りの姫路城近くへ行く。
通りには両サイドに大きな商店街があり、そこここに良い酒場が潜んでいるのだ。ナオさんおすすめの町中華へ向かい2軒目入店。
雰囲気が良いだけではなく活気を感じる中華屋で「うまそう」が漂っている。
古くからの馴染み、日常のランチ、飲み処、観光客とあらゆる人々を受け入れているのだろう。規模も立地もそんな感じだ。看板メニューらしいシウマイを注文し、瓶ビールを3人で分ける。
ムッチリとした、はじめて食べる食感のシウマイだ。一緒に注文した酢豚も独特の味わい。調べると和風だしがベースになっているそう。
気のおけない空間、ここにしかないアテと手ごろな値段。近所にあったら間違いなくレギュラー酒場入りしているな、ここ。
ムシャムシャと食べ「次来たら麺類も食べたい」「こっちもうまそうだ」などとメニュー表までをもつまみにして楽しみ尽くした。
連続して飲み食いしたので、少し散歩を挟もうと商店街を駅方向に歩く。姫路の商店街には町のCDショップ、金物屋、陶器店など今は少なくなった業態の店もたくさんある。街並みを見ての感想など語りながら進むとすぐ駅に着いた。
さてこの後の展開をどうするか、と少し相談を挟みつつも3軒目へ向かった。駅から10分ほど歩いたところにある、あけぼのストアーだ。
ここは、角打ちをやっている酒屋…という表現で合っているのだろうか、不思議な営業形態だ。詳細はブドウちゃんの記事で見て欲しい。
(ブドウちゃんは姫路特化型インフルエンサーで、姫路ローカルメディア 姫路の種の運営をしている。姫路民ならかなりの割合で知っている人だ)
ここも春にナオさんと訪れた以来だ。また来られて嬉しい。
入店すると店員さんの姿がない。探せど見当たらず、入り口付近で飲んでいる常連さんが助けてくださる。ご親切に店主を裏まで呼びに行ってくださり、ありがたやありがたや……!
あけストはほぼセルフサービスの店で、お酒もグラスもショーケースから自分で好きなものを選ぶ仕組みだ。赤星と好きなグラスを取って乾杯する。
いつもは魚類のつまみが豊富なこの店だが、今日は市場お休みとのこと。お惣菜が並んでいたのでお浸しをもらってチビチビつまんだ。
平日昼間とあって私たち以外は2グループのみ。さっき助けてくれた常連らしきおっちゃん2名と、若衆5名ほどのテーブル。途中で去って行った若衆のテーブルにはおびただしい量の空き瓶が並んでいた。え、これ全部飲んだの……??見た感じ酔客らしくないというか、シャンとしていたけどな……。
思えば、わたしの知っている姫人(ひめんちゅ)はみんな酒がものすごく強い。姫ンバー(姫路メンバーの略)で飲むとだいたい深夜までハイペースで飲み続ける。
そんな若衆の様子に驚きながら、我々もなんだかんだで2瓶はあけた。
3軒満喫したので、ここで姫路を後にすることに。昨日アタリをつけておいた明石の酒場に、今日こそ乗り込もうという算段だ。駅へ向かう。
姫路駅構内グルメと言えばなんと言ってもえきそばだ。わたしも何度ここで夕飯やシメを楽しんだことか。ホームに漂うダシの香りの誘惑に耐えきれなずつい入っちゃうんだけど、中華麺をそばつゆで食べるあの感じがいいんだよなあ。
良い記事↓
例外なく今日の我々も、強い誘惑に心をグラグラに揺るがされたわけだが、固い意志で明石へ向かった。まだ行きたい酒場だらけなのだ。
間違いなく3名とも「食べたい」と思っていたに違いない。けど絶った。呑んべえ界の中でもかなり固い意志を持っていると言っていいのではないだろうか。
あれ、だれか一人が「食べ…ちゃいます……?」とか言っていたら速攻入店してたよな、絶対。
などと言いつつ、駅構内で御座候を買い、ラズ先生と車内でもぐもぐオヤツタイムとした。焼きたてうまいんだ、これ。
明石に着き、まだ我々の旅は続く。
今日は各自が自宅へ帰る予定だ、生ものも少しなら買いものできる!と意気込んで市場へ足を踏み入れるものの、すでに閉店している店舗が多い。
残念だが少しだけあいているお店で買いもの。ラズ先生は穴子を買っていた。
おいしかったらしいです。いいなー!
昨日は入れなかった立ち飲み屋、呑べえへ。
ラズ先生もわたしも初訪問。16:00台だがすでにかなりの盛況、さすがの人気店。ここがまた素晴らしい酒場だった。
手ごろな値段なのはもちろん、鮮魚類が豊富で目移りしまくり。なかなか注文を決められず難儀した。
始めて聞いた魚、めいたかれい と、明石と言えばのタコをもらう。このめいたかれいが物凄く美味しかった。うまみが強いけどさっぱりしててすっきりキレイな印象だ。
他にも南蛮漬けなど頼み、最後に入店時からみんな気になっていた「うなぎあて」を。(ラズ先生と言えばうなぎである)どんな形状で来るのかとワクワクしていたらカットされて山椒がかかっているスタイル。これも良いおいしさだったなぁ。
ここでも仕事の話や舞台鑑賞などいろいろな話をして、満足して出た。お会計、かなり安かったような気がする。
安い店というのもまた良い店の要素のひとつ。
さて、ここで「あぁ満足した~」と帰らないのが呑んべえ御一行。飲めるならまだ飲むし、この感じなら何を食べて〆たい。その気持ちは全員一緒で、ナオさんの知っている中華そばの店へ行く。
ここは中華そばはもちろん焼きそばも有名のよう。2品一緒に頼む人が多いのだとか。さすがにだいぶ飲んできているので、3人でシェアすることに。気になったワンタンも追加して3人で回しながら食べ比べる。
ホッとするおいしさ。たくさん飲み歩いた後の汁物ってなんて染み渡るのだろう。懐かしい店内の雰囲気もあいまって、心底落ち着いた気分になった。
メニューもシンプルな構成で、すっと座り、ぱっと注文、さっと食べられる。こういうお店がいい時ってあるよね。
ここまでで5軒巡った。さみしいが、さすがにそろそろ大阪方面へ戻る電車に乗ることに。ナオさんと私は大阪市内に住んでおり、ラズ先生は京都に拠点を構えているので、同じ方向の新快速へ乗り込んだ。
通勤時間に少しかぶる頃合いだったのだろう、車内は座れるスペースなく、ドア付近に立ち大阪を目指す。ナオさんは直立で舟を漕いでて器用だなと思った。大阪駅で私鉄に乗り換えるラズ先生を改札まで見送り、旅は終了となった。
旅ではたくさんの酒情報をはじめ、仕事のことや暮らしのことなど、様々なことをお話しした。
特に最近お世話になりまくっているナオさんの凄さを目の当たりにし、本の登場人物だったぽたさんヤマコさんと相対し、一緒に飲めて嬉しかった。そして憧れのラズ先生とご一緒しただけでなく、本当にいろいろな話ができた。
ナオさんが寝ている間に少し、またぜひ良かったらご一緒させてください、と図々しくも言ったような気がする。ラズ先生は、ぜひ、とにこやかに返してくださった。
そしてさすが酒の道の師匠、これまでの長時間飲み続け(立ち飲みなど体力を削られるシーンもあった)終始シャンとお酒を楽しんでおられた。すごいの一言だ。
そしてどの店も、あれも食べてみたかった、気になるものが多かった、と後ろ髪を引かれる場所ばかりだった。入れなかった店や歩けなかった路地、すぐにでも再訪したい。1軒ずつじっくり巡る旅もいいな。
こうしてあらゆる場所に名残惜しい気持ちを抱え続ける一生なのだろうな。世の中には良い酒場がありすぎる。
2日間ご一緒でき、本当に光栄で楽しく素晴らしかった。ありがとうございました。
最後に、ナオさんと一緒に打ち上げ的に缶ビールで乾杯して解散した。
帰り道、とてもきれいな月を見つける。今日は満月だったようだ。スーパーブルームーン。昨晩、淡路島でラズ先生と「月がきれいなようだ」とやり取りしたことを思い出す。
昨日は満月の前日(幾望というらしい)だったんだな。
帰宅し少し片づけなどして、24:00少し前に就寝する。
2日間、ありがとうございました。
今日も長文になった。読み切ってくださった方がもしいたら、ありがとうございました。
なお、また9月末にツアー開催できるかも、とのこと。今からウキウキだ。
今日のそういえば
姫路の種で記事を書いたことがあるのを思い出した。姫路に住んでいた、2019年か2018年ごろかな。これがライター仕事の原点かもしれないな。