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スベっる心理学7〜出逢いは偶然に、隠し扉を開いたかの如く編〜(長編小説)

「……最高だったぜ子ブタちゃん。ありがとな。吉沢、食べ終わったか?」

「食べ終わりました」

「そんなら、ぼちぼち行きますか」

「行きますか」

二人が席を立ち上がると、まだ食事中の女性達は、「ありがとうございました」とお礼を言い、頭を下げた。

それに対して洋平は、「いえいえこちらこそ、ごゆっくりどうぞ」と、言葉こそ紳士的ではあったが、終始うつむいたまま一度も相手に目を合わせることはなかった。

まるで、思春期のシャイな男子中学生のような不自然さである。

元気のほうは、「またな」と小声で空になったお皿を見つめながら言い、一途な“カツカレー男子”として、彼女達には目もくれずにその場を後にした。


腹ごしらえを済ませた男二人の、本格的な“遊園地ショー”の幕開けである。

「何から乗りますか?」

「いいからいいから、ついて来いって。男だったらまずは共同作業からだって」

「共同作業ですか?――あ、分かりました。“コーヒーカップ”のことですね。二人でハンドルを回してクルクルと」

元気は洋平の予想には何も答えずに、無言のまま、ニコニコしながら目的のアトラクションへと向かった。

そして、少しの間並んだのちオープニングを飾るアトラクションに、二人はとなり合わせに乗り込んで走り出した。

「……楽しいですか?」

「楽しいもなにも手応えがないって」

「そりゃそうですよ。助手席に付いているのはオモチャのハンドルですもん。でも、楽しそうに回しますよね。次、交代しましょうか?」

「――いいって、事故っても責任とれないって」

「大丈夫ですよ。ほら、あそこで運転している子供だって、たぶん中学生ぐらいですよ」

「いいよ、あんなガキと同じの運転したくないし」

洋平はゴーカートを運転しながら、直線の所で元気の横顔をチラリと見た。

すると先輩は、遠くを見つめながらいじけた表情をしている。

「そんな顔、ここでは似合わないですよ。他にも乗り物はたくさんあるんですし、時間だってたっぷりと残っているんですから」

「――そうだな。ありがとな」

洋平の優しい言葉に、元気の顔はほころび、そして、そっと寄り添った。

「――やめて下さい! きもちわっ、事故りますって!」

「わるいわるい」

ドライブを終えた二人は、その後は時間が経つのも忘れて数々のアトラクションを制覇していった。

気がつけば空はロマンチックな、鮮やかなオレンジ色に染まっていた。


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