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スベっる心理学6〜出逢いは偶然に、隠し扉を開いたかの如く編〜(長編小説)
「オレ達から馬に会いに行くんじゃないぞ。馬の方がオレ達を求めて、こちらに向かっているんだって」
「はい!」
「とりあえずは駅だ」
「はい」
二人の心は、一等星のようにキラキラと胸をときめかせて輝いていた。
元気は遊園地の入口の前に到着すると、隣にいる洋平の左手を右手で握った。
「……どうしたんですか?」
洋平の問いかけに元気は何も答えずに、後輩の顔を見上げて満面の笑みを向けた。
「――こわいですよ! お願いだから何か言って下さい!」
「雑誌でこういうのあったんだって」
「……それは、たぶん男女のカップルでだと思います! 男同士ではないはずです!」
「そうか、悪かったな」
「――何で放してくれないの!」
元気は、ようやくつないでいた手を放すと、チケット販売窓口にできた列の後ろへと、嬉しそうに走って行った。
「もう、カワイイんだからって、違う違う」
洋平は慌てたように発言を訂正すると、はしゃぐ子供の後を追う父親のように、ゆっくりと歩いて元気のもとへと向かった。
チケットを購入して入口のゲートを通ると、食パン一枚でのエネルギーの残量にカラダが不安を感じているのか、二人は迷うことなく、敷地内のレストランに行った。
席に着くと、元気は「カツカレー」を、洋平もこれまた「カツカレー」を注文し、しばらくして料理が運ばれてきた。
「いただきま~す」
「ちょっと待てって」
「どうかしたんですか?」
「いや、吉沢のカツのほうが良い肉使ってる気がする」
「交換しましょうか?」
「いや、やめとく。ブタさんに失礼だしな。いただきます」
二人は料理を食べ始めた。
食べ始めてから少しすると、ウエイトレスが席の前に来て、混みあっているので、空いている席に他の客を座らせてもよいかとお願いされ、二人は同時に、ふたつ返事で引き受けた。
程なくして二人の女性客が席に案内されると、「すみません」と申し訳なさそうに言い、四人掛けの席の空いているところに腰を下ろした。
女性達はメニュー表を見ながら小声で話し合っている。
洋平は、気遣いからなのか彼女達の顔を見ようとはせず、下を向いたまま料理を食べている。
元気のほうは、カツが想像以上に柔らかかったことに感銘を受けて、一途に料理だけを見つめながら食べている。