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スベっる心理学11〜出逢いは偶然に、隠し扉を開いたかの如く編〜(長編小説)

「ごめんなさい! 謝りますから離れて下さい!」

洋平は、ソフビ人形がいきなり張り付いてきたことにパニックになったのか、言葉とは裏腹に元気の腰に腕を回し、もう片方の手のひらを後頭部にあてて抱きしめた。

「吉沢なにするんだよ、離れられないって」

「あ、すみません。ボクとしたことが」

洋平は、我に返るとロックしていた元気を解除した。

すかさずに元気は洋平から離れ、間合いをとった。

「ビックリさせるなって、いきなり抱きしめやがって」

「坂本さんがいきなりくっついてきたから、どうしたらいいか分からなかったんです」

「そんなことより“ソフビ人形”ってどういうことだよ? 中身スカスカじゃねぇかよ」

「それは……すみません」

「すみませんで済ますなよ。スカスカなの説明してくれないと気持ち悪いって」

「いや、なんとなく頭をよぎっただけでして、特に意味は……」

「なんで恋バナがオレの悪口になるんだって。いいよ、水に流すよ。恋バナしようぜ」

洋平は、悪気があって言ったわけではないであろうに、元気の深読み被害妄想の被害者である。

「さっそくだけど、遊園地で一緒だった桜井詩織さんと、もう一人のショートカットの人、名前なんていったっけ?」

「南沢麻衣さんです」

「そうだった、南沢麻衣さん。吉沢はどっち派?」

元気は、洋平が“桜井詩織”の名を口にするのではないかと気が気じゃなく、真顔できいた。

「どっち派と言われましても、ちょこっと話しただけで二人のことよく知りませんし……まぁ、どちらかといえば、南沢麻衣さん派ですかね」

「星に誓うか?」

「誓うかって言われましても、結婚するわけでも、ましてや恋すらしていませんし」

「星に誓うか?」

「……はい、誓います」

洋平は、仕方なさそうに返事をした。

「そうかそうか」

元気は、満足した笑顔で二度うなずいた。

「坂本さんはどちら派ですか?」

洋平は、“もうどちらかは分かっていますよ”といった口ぶりである。

「――わかっててきくなんて、人の気持ちもて遊びやがって」

元気は再び飛び付こうとしたが、洋平は片手で侵入を阻止した。


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