スベっる心理学23〜心理学さま降臨編〜(長編小説)
「……そうか、“装備”だって」
「はい?」
元気は、名案を思いつき口にしたが、洋平には言っている意味がいまいち分からないようである。
「“装備”ですか?」
「そうだって、オレに足りないモノは装備なんだって」
「と、おっしゃいますと?」
「吉沢、ロールプレイングゲームでレベルを九十九まで上げて、最後のボスのドラムスと戦うとどうなる?」
「ドラムス。何のゲームだかは知りませんが、強そうな名前ですね。最高レベルが九十九のゲームだったら余裕で勝てますよね」
「だと思うっしょ。でも、装備が“木の枝”と“ダッフルコート”だったらどうよ?」
「……なるほど。勝てないと思います」
「ビンゴ!」
洋平は、疑問の表情から納得の顔に変わった。
「それが、坂本さんと何の関係があるんですか?」
再び疑問の表情に戻った。
「吉沢、オレは“パーフェクトな坂本さん”なんだって、分かるよな?」
「は、はい。坂本さんはパーフェクトです」
無理やり言わされた感は否めない。
「パーフェクトだけど、意外に中身がスカスカなのも分かるよな」
「それってパーフェクトって言うんですか。そんなことはないと思いますけど――まぁ、ソフビ人形の件もありましたし」
「誰がソフビ人形だって! よしざわぁ~」
元気に“ソフビ人形”というフレーズは禁句であり、条件反射的に洋平に飛びかかる、というよりは抱きしめた。
「ごめんなさい、お願いだからはなれて」
元気は、今回は素直に洋平から離れた。
「吉沢、“装備”なるモノを求むって」
「え、ボクが用意するんですか?」
元気は、無言でニコッとして催促した。
「えぇ~、そんなこと言われましても」
「吉沢、親友だよな」
「もう、こういう時だけ親友を出すなんて、ずるいんですから」
元気の典型的な胡散臭いセリフにも関わらず、洋平は照れくさそうな表情をしている。
「ちょっと待ってて下さいね」
洋平はそう言うと、椅子から立ち上がって隣の部屋に行った。