移民キャラバンがたどり着いた町メキシコ・ティファナ

2019年9月12日 11:08

　2018年11月、中南米からの移民キャラバンがメキシコのティファナに到着した。彼らの多くは出身国の経済状況や治安の悪さからよりよい生活を求めアメリカへの移住を目指し、陸路でアメリカの国境まで移動した。アメリカのトランプ大統領はそういった移民の不法入国を防ぐためとして国境での壁の建設を推し進めている。また、移民の流入による治安の悪化などを懸念し、受け入れには強硬な態度をとっている。

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　その大規模な移民キャラバンの到着から1年弱がたったが、国境は今どういった状況なのか。
　メキシコにはアメリカから陸路で入国した。観光地として有名なサンディエゴの中心街からトロリー電車に約30分乗るとメキシコとの国境目前まで行ける。そこから100メートルほど歩くともうメキシコの検問所だ。メキシコへの入国は簡単だった。そもそもメキシコ国籍なら荷物検査だけ、外国籍でもそれに簡単な質問が追加されるだけだった。聞かれたのは「どこに行くのか」と「どのくらい滞在するのか」の二つ、最後に同意書にサインして荷物を検査して入国完了。検問所の建物を抜けた段階でもう違う国に来た思えるほど街並みや雰囲気はアメリカとは違った。

（1枚目、サンディエゴのトロリー、街の中心から国境まで30分ほど　2枚目、メキシコからアメリカに戻ってくる時に通る検問所　3枚目、アメリカからメキシコへ行く時に通る検問所）

　目的の海岸まではタクシーで移動した。国境付近ということもあり警備が厳重になっているかと想定していたが、実際はそうでもなかった。確かにパトカーや制服を着た警察官はよく見かけたものの、特に柵に近づく人に注意をしたり質問をしたりといったことは見られなかった。撮影している間も多くの観光客が落書きによってカラフルになった国境の柵をバックに記念撮影していた。

　撮影を一通り済ませ昼食にしようとした時だった。砂浜のほうにある柵のほうに人だかりができていることに気が付いた。柵の向こう側にはアメリカの既に国境警備隊の車が一台止まっていた。直後にもう一台が来てその近くに停車した。その人だかりのほうに行くと柵の向こう側に一人の一般人がいるのが見えた。そしてその男性は先ほど撮影している間にこちら側、つまりメキシコ側で見かけた男性だった。柵を越えた瞬間を目撃していないので確かなことは言えないが、彼は柵を上るか海から回り込むかしてアメリカに不法入国したと思われる。しかし彼は移民というよりはただの海水浴客の格好をしており、国境警備隊の対応も落ち着いていて、取り押さえられたり無理やり連れていかれたりしていたわけではなかった。推察にはなってしまうが悪ふざけで越境してしまったのであろう。その後国境警備隊の車で連れていかれてしまうと人だかりも散り散りになり、ちょっとした騒ぎは収まった。

　今回の滞在ではアメリカに宿泊していたので再びアメリカに戻らなくてはならなかった。タクシーで検問所付近まで戻ると、車で移動する人の検問待ちで車道は渋滞していた。徒歩での検問もこの日は30分ほど列に並んで待たなければならなかった。翌日、またメキシコを訪れて帰る際には今度は10分ほどで通過できたので、日や時間帯によって混雑の度合いが違うようだ。

（検問待ちをする車の列、徒歩の場合写真の右側に見える歩道を通る）

海岸や中心街には人は多く観光客もよく見かけた。そういったにぎやかな場所では治安の悪さをそれほど感じることもなかった。しかし、いったんそこから離れると、人通りはまばらになり、歩道の舗装も中途半端になっていた。周囲の住宅からも清潔な印象受けられず、正直あまり長い時間そういった場所にはいないほうがいいなと思った。
一時期は数千人規模の移民キャラバンが押し寄せたこの町も今ではそれほど緊張状態にはないというのが訪れてみて受けた印象だった。とはいっても、見ただけではわからない問題はたくさんあるだろうし、いまだに中南米諸国からアメリカを目指す人は多くいる。今後アメリカや中南米諸国の当事国をはじめとした国際社会がどうこの問題にどう対処していくのだろうか。