3次元設計の精度と誤差(その2)
はじめに
今回記事では、以前の記事「3次元設計の精度と誤差」で説明していた誤差について、実例を示しながら説明したいと思います。
関連記事はこちら↓↓
3次元設計の精度と誤差|西谷技術/BIMCIM担当 (note.com)
おさらい
前回記事にも掲載していた図ですけど、3次元設計では面モデルの構成点を直線状につなげて表現していくため、道路のカーブなど曲線形のものを表現するときに、ある程度の誤差が発生してしまいます。
道路土工構造物の場合は、誤差が2cm以内に収まるように構成点間隔(弦の長さ)を決めることが標準的です。
実際に誤差の出る場面
実際に誤差の出る場面として多いのは、断面図を切った時です。
何故かというと「正解が分かるから」です。
交点計算をして正確な座標を求めると、「真の曲線上の位置」と「モデル上の弦の位置」は異なることが多いんですね。
下図(1)に例を示しますが、この例では切断面上に現れた中心線(弦)上の位置は、真の曲線上の位置から道路法線直角(横断)方向に1mmずれています。図示の断面方向では2mmぐらいです。
このように曲線部では、弦の端点(≒曲線上の点)を通る切断面以外では必ず誤差を発生します。
どうすればいいの?
3 次元モデル成果物作成要領(案)によれば、作成するモデルの詳細度は300になり、道路土工構造物の場合は以下のように規定されています。
・対象の外形形状を正確に表現したモデル
・一般部の土工部の影響範囲が確認できる程度のモデル
ここに誤差の表現がありませんので、困るんですね。
ちなみに、誤差が出た場面で対応する方法としては、以下の3択です。
誤差が小さくなるように微細化する
3次元モデル上の構成点間隔を小さくしてモデルを作成(微細化)すると、誤差は小さくなります。ただしこの場合はモデルの容量が大きくなり扱い難くなりますし、いくら微細化しても誤差がゼロになるわけではないことに留意しましょう。要所のみ合わす
例えば構造物の設置基線と道路中心線の交点など、「ここだけは合わせたい」という点については、交点計算でモデルの構成点を追加して切り直すことにより、その部分のみ合わすことができます。誤差を許容する
1による対応にも限度がありますし、必要以上に精度を求めるとデータが重く扱いづらくなるだけですので、3次元設計で大切なのは誤差を許容することです。「誤差の許容値を設定して、協議決定しておくこと」これがとても大切です。
現実的には、上記「3」を基本として、必要に応じて「2」との組合せによる対応を行うことが通常かなと思います。構造物設置基線など重要なラインに関連する部分程度は構成点を追加して合うようにして、他の部分は誤差を許容していくのかなと。
誤差の許容値の目安は、土工構造物の場合は上記の通り基準位置で20mmが基本になるでしょう。
橋梁等の構造物の場合は・・土工構造物と同様に出来形規格値で考えると、たとえば地覆の有効幅員の出来形規格値が30mmですので、その1/5とすると、基準位置で6mmぐらいが目安になりますかね。
さいごに
そういえば、手書き図面からCAD図面に移行したときにも色々ありましたね。手書き図面で、たとえば1/1000で書いてあるものの座標をミリ単位で求めることはできませんが、CAD上では1/1000だろうが、1/25000だろうが座標が読めちゃうんですよね。それで色々問題が生じた記憶があります。
3次元モデルについても同じで、モデル作成の目的や精度的なものを予め明確にしておかないと、目的外の使用方法をされてしまう可能性があります。
後々に問題が生じないように、モデルの作成方法や精度についてできるだけ明確にしておき、後工程に伝える必要があるかなと思います。
SCIMの更新について
別途公開している作図ツール「SCIM」について、BricscadV25でうごくように更新しました。
元記事をこっそり更新しておりますので、ご確認ください。