ボックスカルバートのウイングを計画してみる
はじめに
別記事(下リンク)で公開している作図ツール(SCIM)によるモデリング手法紹介シリーズの第4弾になります。
今回は、道路を横断するボックスカルバート(箱型函渠)のウイングについて、オフセット・モデリングの手法による3次元設計にて計画する手順を説明します。
ウイング等すりつけの検討は2次元設計だと面倒で間違えやすい部分なのですが、3次元設計では幾何的・視覚的に決めていけるので便利です。
簡単ですので、ぜひやってみましょう。
【これまでの関連記事リンクです】
オフセット・モデリングのすすめ|西谷技術/BIMCIM担当 (note.com)
道路形状をモデリングしてみる|西谷技術/BIMCIM担当 (note.com)
擁壁を計画してみる|西谷技術/BIMCIM担当 (note.com)
ボックスカルバートを計画してみる|西谷技術/BIMCIM担当 (note.com)
ウイングの計画
計画準備
今回は、前回記事で作成したボックスカルバートの左口(道路測点方向に対して左側)のウイングを計画したいと思います。
前回記事にて作成した「3D構造図」「3D平面図」で作業を進めます。
3D平面図上に函渠モデルを準備する
前回記事で立体化した函渠モデル(3D構造図に作図)を3D平面図にコピーします。
「3D構造図」の「正面」座標系と、「3D平面図」の「函渠計画座標系」が一致でしたね。一致した座標系間でコピー&ペーストすることが重要です。ウイングの方向を決める。
「3D平面図」の座標系を「ワールド」に戻し、ポリライン(2Dポリライン)でウイングの方向を作図します。
今回は下図(1)のように、起点側(図右側)は函渠端部の方向と同じに、終点側(図左側)は少し角度をつけて計画してみます。
※少々違和感のある方向ですが、まあサンプルですので許してください
あわせて、ウイングの壁厚についても検討し、オフセットして背面ラインも作図します。
ウイング位置とのり面の交線を作図する
先に作図した各2本の線を、のり面のTINサーフェスに投影すると、そこがウイング前背面位置での、のり面の位置になります。
これがウイング上端の計画基準線になりますね。ウイング前面の面形状を決める
ウイングの下端は、ウイングの前面の地盤からの根入等で決めることになりますので、まずはウイング前面の地盤面形状を計画します。
とりあえず下図(2)の感じにしたいと思いますが、この断面方向は「3D構造図」の「左」座標系の図になりますのでその座標系に作図(別図で作成してペーストでもいい)します。それをボックス入口と法尻の位置に複写してTINサーフェスを作成すると、下図(3)のようになります。
「3D平面図」に持って行って、少し編集
まずは、先ほどのTINサーフェスを「3D平面図」にコピー(座標系に注意してください)します。そうすると2つのTINサーフェスが重なっていますので、以下の手順で余分な部分を消します。
①TINサーフェスから抽出コマンド(-TINEXTRACT ※)で、先ほどのTINサーフェスとのり面のTINサーフェスの交線を抽出します。
(※2024/12/19追記:BricscadV25ではコマンドの最初にハイフンが必要です)
②その交線などから、くり抜きたい部分の外周線(2Dポリラインでもいい)を作成します。
③TINサーフェスを編集(TINEDIT)コマンドで、のり面のTINサーフェスに境界を追加してくり抜きます。ウイング下端の計画基準線を作図する
ウイング前面の方向線を、こんどはウイング前面の計画面(下図(4)の紫色の面)に投影すると、白太線が得られます。これがウイング下端の計画基準線になりますね。
ウイングの計画
これでやっと、計画準備が整いましたので各基準線を「3D構造図」にコピーしてウイングの計画を進めていきます。
基準線を複製する
ウイング上下の基準線をコピーして、「3D構造図」に貼りつけます。各ウイングの座礁系を作る
前回記事と同様に、コマンドVCSCZ_SECを用いて各ウイング計画用の座標系を作成します。
ウイング方向線上の点をクリックして座標系を作成しますが、座標系は1点目が座標原点、2点目がX軸方向となりますので左→右の順で点を選ぶといいです。
なお、断面オブジェクトも一緒に作成されますが、不要なので消してもいいです。各座標系でウイング寸法を計画する
各基準の内容や施工性などを考慮して、各座標系でウイングの形状を計画していきます。
邪魔なオブジェクトが多いようでしたら、他の図面に関連するものだけコピーし、そちらの図面で作業してから戻すという方法を取るとわかりやすくなります。
旗揚げ(寸法線)は現在の座標系のXY平面に作図されますので、とにかく座標系を意識して作業しましょう。
ソリッド化して細部調整
各ウイングの形状が決まったら、閉じたポリラインに変換して押し出すなどにより、厚みをつけてソリッド化します。
ソリッド化していくと気付くのですが、2次元設計では気付かなかった(あまり気にかけなかった)細かいすりつけを入れていかないと、3次元的なズレが出るところが多々あるのですね。こういう所を調整していき、3Dモデルを仕上げていきます。
2次元素図を切り出してみよう
前回の記事ではコマンドSECTIONPLANETOBLOCKで断面図の切り出しを行うことを説明しましたが、ソリッドで作成されたオブジェクトでは、コマンドVIEWBASEでも2次元図面を切り出すことができます。
※使い方は下記参照(AutoCADも同じコマンドがあります)
※VIEWEXPORTで2次元図面を書き出して、仕上げます。
「3D平面図」に戻してみる
計画したウイングを「3D平面図」に戻すと、周辺のり面との関係や外観を確認することができます。
テクスチャを付けると、もう少しリアルなものが作成できますよ。
おわりに
さて。今回は、オフセット・モデリングの手法でウイングの計画を行ってみました。
この手法では、設計プロセスのなかで3次元による検討を行いますので、2次元図面でありがちな立体的すりつけの不整合を予め回避できます。
計画時点でこの手法を活用すること自体がフロントローディングとなることがイメージできましたでしょうか。
どうでしょうか。オフセット・モデリングで計画してみませんか?