【イベントレポートpt.1】ユニコーン企業の若手社員が登壇!新素材で気候危機の解決はできる⁉︎(Part. 1)
8月4日に、2回目となる【キャリア座談会】のオンラインイベントを開催いたしました!🎉
本イベントでは「気候危機の解決に関わる仕事がしたい」「仕事を通じてサステナビリティに貢献したい」という思いを抱える就活生、および社会人に向けて、実際に気候危機解決に貢献する企業に勤める若手社員に、「働くリアル」や就活の裏話などをお話いただきました。
今回は、なんと「ユニコーン企業」2社にお勤めの方々をお招きしました!ユニコーン企業とは、「評価額が10億ドルを超える、設立10年以内の未上場のベンチャー企業」のことを指します。つまり、設立間もないながら、企業価値の高い企業がユニコーン企業に当たります。今回お呼びした企業「株式会社TBM」と「Spiber株式会社」は日本で約10社程度のユニコーン企業のうちの2社なんです!(STARTUP DB :「国内スタートアップ評価額ランキング最新版(2022年3月)」より参照)
植物由来のバイオマスを主原料に微生物発酵によって生産されるタンパク質Brewed Protein™素材を開発する『Spiber株式会社』と、プラスチック・紙に代わる石灰石を主原料とした新素材「LIMEX」の開発を行う『株式会社TBM』の社員お二人にお越しいただきました!
今回のニュースレターはイベントのレポート記事の前編になります。イベントに参加できなかった方もぜひ当日の様子を楽しんでみてください!
【事業内容】SpiberやTBM はサステナブルな社会創造にどう貢献しているのか?
ーまず、Spiber株式会社はどんな会社なんですか?
Spiber株式会社の奥山翠さん(以下、奥山):Spiberは「人のためにプラスになることをできる限りする」 そして、「人にとってマイナスになることをできる限りやめる」というかなりシンプルなプリンシプルを掲げています。その結果生まれたのが「Brewed Protein™(ブルードプロテイン)」です。
ーBrewed Protein™ 素材とは?
奥山:植物由来の糖類を主原料とし、微生物を活用した発酵プロセスによりつくられる構造タンパク質素材です。その製造過程が酒類などの醸造(ブリューイング)過程に似ていることが名前の由来です。Brewed Protein™素材は主原料に石油由来の資源を使用せず、アパレル分野におけるマイクロプラスチック問題に大きな役割を果たせる可能性を秘めていることから、持続可能な社会の発展に資する次世代の基幹素材として注目されています。
ーBrewed Protein™素材はどのように気候危機解決に繋がるのでしょうか?
奥山:端的に言えば、気候危機のみならず、気候危機の根源になっている消費社会という社会システムをまず変えていこうという目標としています。 将来的には、Brewed Protein™素材のみを使用した製品を作ることを考えています。それらを再び糖やアミノ酸に分解してタンパク質に戻し、それを栄養源にエネルギー効率よく付加価値の高いものを新たに作ることで、単なるリサイクルではなく、アップサイクル、延いては地球規模の資源循環が可能になります。素材を生み出すだけでなく、そのような循環システムそのものも自ら構築していくという2、30年先を見据えた長期的ビジョンを掲げています。
ータンパク質レベルでリサイクルするということですね!
奥山:私たちの髪の毛や皮膚も全部タンパク質からできています。それらのアミノ酸の組成や配列を変えることで、全く違う性質を持った素材を作ることが可能です。 加工方法によっても様々な風合いや質感を出すことが可能で、以下の素材の全てがBrewed Protein™素材でできています。動物由来の繊維を代替することによって温室効果ガスの削減にも貢献できると考えており、タイの工場がフル稼働すれば、カシミヤの温室効果ガス(二酸化炭素ではない)排出量のおよそ6分の1程度までに削減できる可能性があります。
ー高い目標を達成するためには、険しい道のりになりそうですが、Spiberは今どんな段階なんでしょうか?
奥山:自社の強みは唯一無二の技術力を持っているというところなので、そこを生かし、さまざまな産業のニーズに合う商品の共同開発を行っています。現在、基礎技術は確立しており、パートナーシップの構築や産業化に向けて整備すべき要件設計など、社内外のステークホルダーと連携しながら進めています。現在は、タイで量産プラントが稼働中で段階的に生産量を拡大させていき、アメリカでもさらに規模の大きいプラントが稼働予定です。大規模生産にはまだ至ってないものの、2019年以降、商品化の実績を積み重ねています。THE NORTH FACEからはTシャツとアウトドアジャケットが出るなど、徐々に各アパレルブランドとの提携が進んでいます。
ーなるほど、ありがとうございます。では、これからあらゆるお店でSpiberさんの商品が見られる日も遠くないんですね😵
ー続いて株式会社TBMはどのような企業なのでしょうか?
株式会社TBMの増田稜さん(以下、増田):TBMという社名は、タイムズ・ブリッジ・マネージメントの単語の頭文字から来てます。 TBMの一番の目標は資源問題の解決、そしてカーボンニュートラルの実現ですね。その実現のために、国内だけじゃなくて、グローバルで貢献していくというのが、我々がやっていきたいことです。
ー資源問題の解決には具体的にどのように貢献されているんですか?
増田:国内で約820万トンものプラスチックが毎年廃棄されていますが、大半が焼却して熱を発電や給湯に利用するサーマルリサイクルで、欧米からそれはリサイクルじゃないだろうと非難を受けている状態です。いかにマテリアルリサイクルもしくはケミカルリサイクルの割合を増やせるかということが重要視されています。TBMは「LIMEX(ライメックス)」という素材の提供と、その後のマテリアルリサイクルまでをしっかりデザインすることによって、枯渇リスクのある資源の保全に貢献しています。
ー「LIMEX」はどんな製品なんですか?
増田:「LIMEX」自体は、石灰石が主原料の素材です。特徴は3つあり、枯渇リスクのある資源(水や森林、石油)を保全できること。2つ目にCO2排出量を削減できること。3つ目は新しい素材ではあるものの、既存の成形設備を使って製造や加工ができる素材なので、ファブレスで一気にグローバルへ展開していくことができる素材です。
ー石灰石が主原料になっているんですね。
増田:そうなんです。石灰石は何がいいのかというと、1つは大量に世の中にあるということと、めちゃくちゃ安いことですね。プラスチックの原料よりも、原価は安く、また今は原油高によってプラスチックの価格が高騰していますが、石灰石は価格の安定性に優れています。あとは、石灰石自体が石油由来樹脂と比較して原材料調達〜廃棄(燃焼)の過程で発生するCO2の排出量が低いです。
ーどんな商品の代替に使われるんですか?
増田:「LIMEX」を提案する時は、プラスチックもしくは紙のいずれかと比較する場合が多く、プラスチック代替のメリットとしては、石油由来樹脂の使用量削減、そしてGHGの排出量削減になります。 また、紙代替であれば、水資源と森林資源の削減が主な環境メリットになると思います。
増田:例えばインフレーション成形という加工でレジ袋にしたり、ブロー成形で化粧品のボトルにしたりと、様々な商品展開を進めています。例えばヨドバシカメラのレジ袋は「LIMEX」が使われています。最近では、バンダイスピリッツと開発したガンプラが男性雑誌の「smart」ノベルティに採用されたり、吉野家のメニュー表、化粧品の箱など国内で約8000社ほどにご利用いただいています。今後は素材提供だけでなく、「LIMEX」の回収や、廃プラスチックの回収も一緒にやっていきたいと考えています。
ーSpiberさんもTBMさんも素材の開発だけでなく生産から破棄までを含めた包括的なシステム作りを目指してるんですね。最後に、TBM株式会社の未来図を教えてください。
増田:現在、世界的な流れとして、温室効果ガスの排出量の可視化と削減マネジメントが求められており、そうした情報を基に投資家が企業を判断する動きが加速しています。僕らがアプローチできるのは、特に(GHGプロトコルなどでカテゴライズされる)スコープ3の原材料や製品廃棄です。
今後は自社で運営するリサイクルプラントにて「LIMEX」や、廃プラスチックの回収などの資源循環も積極的にやっていきたいと考えています。このようなサーキュラーエコノミー型の事業の経済価値、市場規模を見ると、ビジネスとしても、非常に大きなポテンシャルがあるマーケットだと理解しています。その後押しもありTBMは様々な大企業から出資をいただいたり、経産省やNEDOといった公的な機関からも支援をいただいたりしています。国内だけでなく、海外の様々な企業とも資本業務提携を結んでいます。
中長期視点では、2つのスローガンを掲げてます。2030年までにTBM社のカーボンネガティブを実現すること、 そして50カ国で100万トンの「LIMEX」と、プラスチックを循環させることです。
📣bilityの一言
2社とも非常にユニークな最先端の事業を展開をしており、ユニコーン企業として日本のサステナブルな素材開発のシーンを代表する企業です。参加してくれた方々も、それぞれの事業が気候危機の解決に貢献する仕組みや、素材の魅力を詳しく知ることができて満足度が高かったようでした!アンケートに答えてくれた方、全員が「会社への理解が深まった、魅力を感じた」と回答してくれました。本イベントの後半では、Q&Aセッションやパネルディスカッションをおこない、参加者からの質問に対するお二人の意見を伺うことができました。その様子は、次回のイベントレポート後編の記事で紹介します。お二人のお仕事内容から社員の気候危機解決へのモチベーションなどの、イベント後半でお聞きすることができたリアルな意見が盛りだくさんです✨お楽しみに🌱
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