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茅葺き屋根作り&茅場の野焼き(2024年6月)
今回は3月に参加した草原(茅場)の火入れ(野焼き)体験と、6月に同場所の茅(かや)を使った茅葺き屋根体験について紹介!
東大の研究室が、生態系保全、伝統技術の伝承などを目的に行っている活動ですー!
草原の野焼き
生物多様性保全の肝となる草原
草原の野焼き。良いイメージを持っていない方も多いのではないか。
かく言う私も、野焼き=伝統的な方法、二酸化炭素を排出する良くない方法だと思っていた。
しかし、様々な文献を読むと、野焼きは適切に行うととても優れた方法であることが分かる。
今回は詳細は省くが、草原は実は物凄い生物多様性の宝庫であり、地面の炭素貯留も多い。(長期間草原として維持してきた草原の場合)
Nature positive、30by30というと、陸地の30%=森林保全と思われがちだが、実は草原がめちゃくちゃ重要だ。
素人目には「草原よりも森の方が自然豊かなんだから、森にしてしまおう」って思うが、実は逆である。
今後100年の絶滅危惧種の多くは森林にいる。
補足1)なぜ草原の保全が難しくなったか?などは今回の論点ではないため、端折るが、キーワードだけ。
・産業構造の変化(家畜→農機、木質→石油、茅→コンクリ)
・産業構造の変化による農村コミュニティの解体(農村の労働力減少)
・野焼きに対する市民の批判、行政の介入
補足2)東南アジア、北米など海外においても、伝統的な野焼きの見直しが始まっている。
・もちろん、不適切な野焼きは大気汚染、温室効果ガスの排出、生態系の破壊に繋がる。
・管理された野焼きでは、生態系保全、大規模な火事の防止などの利点がある。
火入れを行う意義
今回の茅場の野焼き(火入れ)の意義を配布された資料を添付して紹介する。
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周到に準備された火入れ
今回は住宅地にも近い箇所で火入れを行う。
数か月前から地元の消防団、消防署と連携し計画を練り、周辺住民への説明やビラ配布を行い理解を得た上で行っている。
火入れには労働力が必要なため、今回も30名以上のボランティアが参加しているが、当日に風速5mを越えたら中止となる。。
昨年はそれで中止になったらしい。。中止すると現代人は忙しいので、また集まることはできない。その年は火入れが出来なかったそうだ。
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火入れ前はこんな感じ
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風向きを考えて奥の方から火入れスタート
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動画添付できないが、私も火入れに挑戦。風の向きが設計されているため、一瞬で火が回る。
事前に区画に分けている。途中で火が止まるように、草が刈られていたり、水辺がある。
線に沿って火をつけていくと、1分もしないうちに一気に奥まで火が回る。
火をつけて10分くらいで、一区画は一気に焼ける。
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順番につけていく火入れ。2時間もすると一面が焼けている!
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火入れにより、適切に燃えることで逆にCO2の抑制に繋がり、生物多様性の保全に繋がり、良質な茅素材を得ることができる。
また、適切に火入れをすること自体が伝統技術であり、その技術を残していく必要がある。
茅葺き屋根体験
さて、上記は3月の体験。ここからは3か月たった6月のお話!
茅葺き屋根の職人さん達に、茅葺きの技術を教わりながら体験するという、めちゃくちゃ貴重な会に混ぜて頂いた。
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茅葺き屋根職人
世界遺産の白川郷で有名な茅葺き屋根。
昔は農村で茅場を育てて、毎年持ち回りで近所の人たちが集まり、各住宅の屋根を作っていたそう。
現在では茅葺き屋根も激減。それに伴い茅場も激減。
村人たちが総出で作る分にはコストかかりませんが、現代的な発想で維持するには、葺き替えの度に、物凄くコストがかる。
現在、日本全国にいる茅葺き職人は、たったの200名とのこと!
貴重な職人さん達と、3月に火入れした茅場を見学し、現場を見せて頂けるだけでなく、実際に体験させてもらった。
建築好きな人にとっても興味深い内容です。
★★茅葺きのお手伝いしたい人!★★
未経験でもお手伝いできるそうですー!
今回の現場も3名の職人と、1名はヘルプで来ていましたー!
未経験(初心者)でも、報酬もよいですよー!住み込みで働く形だそうですー!
ご興味ある方はぜひー!!(お繋ぎします)
茅(かや) って何?
茅は屋根材、飼料、肥料に使う草(イネ科などの草本)の総称。
茅って名前の植物があるわけではない。
ススキ、ヨシ、稲わら、麦わらなどが材料になる。
山で取れる茅は、山茅(ヤマガヤ)などと呼ばれる。
中身の草の種類は地域それぞれ。
シマガヤ
世界でも珍しいのが、シマガヤ!
今回訪れた茨城県の稲敷市、妙岐ノ鼻で採れる茅。
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シマガヤの特徴は、カモノハシという草が多く入っているとのこと。
カモノハシの特徴は、目が細かくて丈夫。ヨシなどと違いしなる。
※動物のカモノハシじゃないよ!
自重だけで支える屋根
茅葺き屋根って、釘とかビスとか梁で止めておらず、茅の自重だけで支えているとのこと。
上手にバランスよく配置すると、茅が重いので飛ばないそう。
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クレーン車で上から上手に持ち上げたら、屋根だけ持ち上がると。
茅(草)を支えるために、竹や木を縦横で組み上げて土台にしている。
通気性が良く、風は通すけど、雨は通さない。
黒いのは表面だけ
今回の現場は、23年ぶりの葺き替え
茅葺き屋根って黒いイメージがありますよね?
葺き替えた数年は黄色の枯草の色をしていますが、年月が経つにつれて黒くなる。
雨風に当たって風化して黒くなる。なので、表面だけ黒くて、中を引っ張ってみると、普通に黄色!ホントに表面の数センチくらいが黒くなっているだけ。
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なぜ雨漏りしないのか?
茅葺き屋根って、草が上から下に規則正しく並んでいるだけ。
それなのに大雨でも台風でも雨漏りしない。。何でなのか?
今回、ペットボトルの水を使って説明して頂いた。
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ここに職人の技術がある。
刈ったばかりで方向が揃っていない草たちを、丁寧にバラシて真っすぐにしていく。
この真っすぐな具合が揃うことで、表面についた水が導水する。
もちろん、枯草なので、水を吸うけど、多くが表面を浸って落ちていく。
吸水した水は中には入りこまず、蒸発していく。
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イネ科の草でガラス質なのも特徴。表面の水を弾きやすいのだとか。
真っすぐになってないと、水の通り道が止まってしまい、屋根の中に入ってしまう。
吸水量が増えれば、雨漏りはしなくても、すぐに劣化する。20年も持たずに葺きかえることになる。
一つずつバラシて配置する
茅場で刈った茅は、束にして、6束で一つの塊になる。
その束をそのまま、どんどんって配置していると思ったらそうじゃない。
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束をさらにバラシて、少ない量を丁寧に手で整えて真っすぐにしていく。
理由は上記の雨漏りに代表される品質に影響するから。
さらに、ただ置いただけだとふわふわで密度もない。
なので、しっかり抑えつけていきます。平行部分を竹などで抑えつけて、あとは、延べ茅などをいれて張力を使い密度を上げていく。
あと、イネ科の草なので、ケイ素(シリカ)があるので、真っすぐ葺くと摩擦で落ちてこないとのこと。(曲がっていると緩んで落ちてくる)
そして下から上方向に叩くことで、中に押し込まれていき密度が上がる。
※ここ、説明間違っているかもです。。文字だと伝わらないづらい。。
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世界中で作られていた茅葺き屋根
茅葺き屋根って日本のお家芸じゃないとのこと。
世界中の農村で、土地にある草を使って屋根を作っていたそう。
日本でも良く使われるヨシ(葦:あし)は、世界中に分布している植物。ヨーロッパなどはヨシがメイン。
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茅葺きの職人達の技術を披露、共有するグローバルカンファレンスがあるそうで、オランダやデンマークなどで開催されている!
ただ、どの国も近代化の波の中で、職人も激減しているそう。
屋根に葺くと分解しない草
今回の家は3面改修だけど、この3面で約1ha分の茅が必要との事!(地域や季節などで違いはある)
この草たちを農地の土壌の上に置いたら1年もしないうちに有機物分解してしまう。
でも、屋根の上に乗せたら、雨が降っても数十年も分解しないでこのまま。
今回、23年前の茅も表面だけ黒いだけで中はまだまだしっかりしている!!
不思議ー!
3か月後の茅場
午後は上記の茅葺き屋根の体験だったが、午前は貴重なシマガヤが取れる茅場の観察会だった。
たった3か月で、人の背丈を越えるくらいまで成長していた!
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火入れをすることで、古い草がなくなり、一斉に延びるので、真っすぐに同じ背丈の草が育つので品質が良くなるとのこと。
今年は数年ぶりの火入れとのことで、今回体験させてもらった茅自体は昨年収穫したもの。
今年の秋~冬には、今年火入れした新鮮な茅を刈り取ることができる!
この茅場には絶滅危惧種の鳥たちが何種類もいる。
ちゃんと手入れ(火入れなど)をすることで、生物多様性も守られるとのこと。
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