【神奈川のこと50】ブルーライト東戸塚(横浜市戸塚区)
土曜の朝、目が覚めたら憂うつだった。
熟睡した感覚はある。
ただ、ベッドから起き上がれない。
トイレに行きたい、もう眠くはない。
だが、起き上がれない。
ピーター・バラカンのラジオ番組をかける気も起こらない。
憂うつ、ブルー。
昨晩から兆候はあった。
だから酒も飲まず、ゆっくり風呂に浸かり、ベッドに入った。
だからよく眠れた。でも、目覚めたらブルーであった。憂うつであった。
いっせーのーっせで起き上がる。ずしりと重い身体と心。
よろめきながら階下へ。
毎週土曜の朝は大船で五十肩のリハビリ。
仕事を片付たら心が晴れるかとオフィスに向かうべく、大船から始発の湘南新宿ライン。
ボックス席に一人座る。
ゴンチチのラジオ番組を聴き、神奈川新聞を読みつつ、湘ラは走る。
憂うつでブルーは続く。胸の奥にはぶんちん。
東戸塚の駅で車内アナウンス。
「ヨコハマシンカワサキカンデ、フミキリナイヒトガタチイッタタメ、シバラクテイシャシマス」
迷惑千万、一体全体何を考えてるのかこのイカ!、いや、タコ!
腹が立つとブルーの色がますます濃くなり、黒色と見分けがつかなくなった。
しばらく外の景色を眺める。
お先に失礼さんですと言わんばかりに、東海道線が横の線路を追い抜かす。
もう仕事に行くの止めた。
湘ラを降りる。
上りが止まっているということは、下りも止まっている。
電車はあと20分来ない。
東戸塚駅ホームの誰もいない端っこ美学。
柵にもたれてみる。
空き缶が落ちている。
掃除したいと思う。
静かに見渡せば、一面タンポポ。
風にタンポポが揺れている、いいさ、それでいいさという詩があったな。
下り横須賀線到着。
先頭車両に乗り込みドア越しに立つ。
てんとう虫がドアを這い上がる。おもむろに俺のテンプルに飛びつく。
いいさ、それでいいさ。
横須賀線は走る。さっそうと速く。
流れる景色。
ふと空を見上げる。
三角形の雲が並んで3つ浮かんでいる。海苔のないおむすびのような雲。
途端に心は解放/開放/快方、軽量化に向かう。
衝動買いも辞さないと大船駅の鎌倉シャツに寄る。
何も買わず店を出る。
キリストさんに愚痴ってやろうと教会に寄る。
祈る真似だけしてみる。
大船から歩く。
いつもとは違う道を行ってみる。
山崎というところでふと、鳥居と山の中に続く階段を発見。
吸い込まれてみる。
階段を上る、終わりが見えない。
息が上がる。
子供の頃テレビで見た具志堅用高の映像が頭の中に投影される。
白いパンツを赤く血で染めながら戦う姿。
山の中腹から空を眺める。
そこには横須賀線から見たおむすび雲。
快方/開放/解放、軽量化に向かう心。
家に帰って、小さな書斎。
アン・サリーの「小さな部屋で」を何度か聴く。
少し早いけど、風呂でも沸かすとするかね。
明日は義母の墓参に行く。