描くこと以上の何かをもらえる。名著「10パーセントの力で描くはじめてのジェスチャードローイング」のすすめ
はじめに
このタイトルを見てこの記事を読んでくれる人は少なからず絵に携わる人、これから絵を描いていきたい人が多いと思います。私がジェスチャードローイングを描こうと思ったきっかけになった砂糖ふくろう先生の著書「10パーセントの力で描く始めてのジェスチャードローイング」についてお話ししていきます。
この先、自分の体験を交えて話をしています。ですので言いたいことを先に言います。
こんな人に読んでほしい
・自分は思うように絵が描けない
・何かしらジレンマを感じている
・描くのが苦しい
・モチベーションが保てない
・飽きやすい
この中で1つでも当てはまる人!絵を愛する方、愛するがゆえ悩んでいる方にはぜひこの本を手にとっていただきたいです。
この本は冒頭の著者の紹介、プロローグの後こんな言葉が描かれています。
当たり前のような事だけれども、心に置いておくのって案外ずっと難しい。肩肘張らずに自分自身の 楽しい スキ を大切にし続けていけたらどんなに素敵だろう。
私はこの本が沢山の手に渡ってほしいし、そして沢山の人に絵を更に楽しんでほしいです。具体的にどんなことがあったのか、砂糖ふくろう先生の活動を通して体感した私の変化を、これからお話ししていきます。ひとりの絵描きのささやかな体験談ですが、あなたがこの本に出会うきっかけになればと思います。
私のこと
これから話す前に私の事を少しお話しします。私の名前はびっけと言います。
古い記憶では2.3歳頃からチラシの裏にお絵描きをしており、描くことは日々の生活の一部でした。元来好きなものは描きたくなる性分で、ファンアートや創作を中心に趣味としてお絵描きをしていました。
学生の頃の夢は「エンドロールに名前が載る仕事に就きたい」でした。この話を部活の先生に話した時「難しいぞ。仕事ないぞ」と言われたのを覚えています。
その後グラフィックデザインの学校に進み、作品や仕事に必要なものを描く勉強を学んでいましたが、見て覚えてなんでも描けるタイプという訳ではなかったです。むしろどう足掻いても表現できないものが多すぎて心が折れる日々でした。
2020年春まで10年程絵を描くという選択肢のない生活を送り、とあるきっかけがあり絵を再開しました。
そしてジェスチャードローイングに出会い、描いたものが伝わる楽しさに目覚め、どうしたら絵の幅を広げられるのかを考え描き続けています。
現在は京都芸術大学で採点教師を務めています。
登山口はいろいろある
ジェスチャードローイング(略してジェスドロ)に出会う前の私は、まさに冒頭にあげた絵を愛するが故に悩んでいる
・自分は思うように絵が描けない
・何かしらジレンマを感じている
・描くのが苦しい
・モチベーションが保てない
・飽きやすい
というモヤモヤの塊でした。モヤモヤは解消したいし、上手くなりたいので教本を見て練習をします。私が今まで見てきた教本は当然ですが、上手くなる為の描き方であったり、〇〇すべき。〇〇せねば。のようなものが多かったです。絵を描くっていうのはこういう試練をたくさん超えて描いて描いて苦しくても描いて、それを乗り越えた人だけが大勢の人に見てもらえるような絵を描けるんだ。途中で投げ出したりする私には描けないんだーー。と思っていました。割とゴリゴリに凝り固まった意見だなと今では思います。なんでそこまで苦しんでたんだろうって位です。“Gesture drawing“という言葉自体は美術書で見かけていたのだけれども私が見たものは、結構サラッと説明がされていて「ふーん そういうのがあるんだな。」と横目に見ていた位の印象でした。
2020年の終わりに砂糖ふくろう先生の動画から初めて実践されたジェスドロに出会って、線を引き始めました。講座を受けて感じたのが「ずっと描きたかった自然に見える人体がこんな簡単に描けるんだ・・・。」というものでした。
しっかりした一枚絵を描こうと思ったら、リファレンス(制作に使う資料)を探したり、構図を考えたり、細部を描いたり細かい質感を出すディティールの練習もします。当時の私にとってそれはとても億劫であり、やらなくてもいいんじゃないのと思っていたことでした
始めてみて驚いたのは、ジェスドロに出会う前の私が「(やりたくない。面倒臭いけど)しないといけない。やるべき」だと感じていた練習や勉強、リファレンス探しが「じゃあやってみようかな」「ここが分からないから調べてみようかな」に変わっていた事でした。そう、あれだけ試練なんだ苦しいんだと思ってたあれやこれやを、フっ軽で学ぶ姿勢になっていたんです。まるでハイキングかお散歩かのように、気がついたら登れていましたよ絵描きの試練の山。こういう心境になった時に思ったんです。「ああ、登山口ってひとつじゃなくて選べるんだ」って。
どうやら私にはジェスドロの登山口がピッタリ当てはまっていた様です。しかも、この登山は描き方だけでは終わりませんでした。それ以上のものが待っていたのです。
私が求めていたのはVSTだった!
VSTーヴィジュアルストーリーテリングー
長い横文字です。本の始めも始め、10.11ページ目に描いてあります。ここを本当読んでほしい。大きなテーマや壮大な物語が必要なんじゃないかグッと身構えていたけど全然そうではなかった。
これ!一番最初に言っていたモヤモヤだ!…………そうだったのか……私は綺麗な絵じゃなくて伝わる絵が描けるようになりたかったんだ。思えば図工や美術の授業ではいい成績がついたことがない。本当になかった。評価としては「凝っているけど印象が薄い」だったり「言いたいことがよくわからない」と言われていたなあと思い出しました。つまりそれは「伝わってこない」だった。私はずっと勘違いをしていたんだ。細部が描けている、作られているのがいいもので、自分が作るものもそうなるようにしなきゃいけない。と思っていた。そして技量が追いついてなくて落ち込んでたり飽きたり諦めたりしていた。あらあら、昔の私ったら………。
それじゃあジェスドロの線でそんな事ができるの?ってなるじゃないですか。それがね。できたんですよ。グーンと伸びてるとか硬そうという動作や見た時の印象であったり、悲しそうだなとか、楽しそうというその時感じた印象を思いながら引いた線を見た人に「気持ちのいい線」「伝わる」って言われたんですよ!その時の私の喜びようたるや。
ここから「あ、私って自分が思ってるより大分ポンコツだわ」と今まで凝り固まっていた自分を受け入れました。
大分早い段階で受け入れました。
ものすごく前向きに完全に受け入れた。
そしたら見るもの全てが輝いて見えちゃった。
当時の私にとって、この出来事は脳天に空手チョップを喰らうくらいの衝撃でした。そこからドローイング果てはVSTの世界にのめり込みました。今も日々勉強中です。
時系列を越えてきた
先に言ったように私が砂糖ふくろう先生のジェスドロに出会ったのは2020年の終わりです。この本が初出版されたのは2022年9月23日。
これまで私の体験談と本の内容を混ぜこぜでお話ししてきました。それで一体あなたは何の話がしたいのと思ったかもしれません。こんな人にお薦めしたい!というのは冒頭に言った通りですから、ここから漸くなぜここまでお薦めしたいのかという話をします。それは、この本の文章です。
この本の本文は先生が開催した講座で話されていた言葉が文字に書き起こされています。私が講座を受けて感じてきた
「線と球で人体がかけた…だと?!」
「伝わるってそうだったのか!」
「線を引くのがこんなに楽しいなんて!」
と頭がパカーンとなった、固まった意識がほぐれたりした内容が本にとても分かりやすく書かれていた。
だからです。だからなんです。正直に話すと初めてこの本を読んだ時は泣いてしまったんですよね。
「あーーー10代の頃にこの本に出会いたかった。この本で救われる人が沢山居るんじゃないのかな」
と本気で思いました。
「またまた。大袈裟に言い過ぎでは?」と思う人もいるでしょう。しかし、この著者の砂糖ふくろう先生は、考え方に芯があってどの講座でも言葉が二転三転しないんです。御本人は「何言ってたか覚えてない」って仰っていたりするんですけれどもね。本当に一貫しているんです。きっと脊髄まで染み渡ってるんじゃないのかな。って位。もし違うことがあるとしたら、その事象に対しての解像度が更に上がった時とかだと思います。言っていることにブレがない。つまり、「前はこう言ってたじゃん。」ですとか「え?どっちなの?」と言うことがないんです。
コラムなども「ああそんな捉え方があるんだな やってみようかな。」の宝庫です。これも講座で話されていた内容です。講座では時間の中でお話しされていた事を、本の中では実践とコラムとで分けられているので、息抜きに読んだりしても良いですよ。コラム。
全体的に「大丈夫。大丈夫だよ」とエアもしくはイマジナリー砂糖ふくろう先生が背中をさすってくれるような文章で構成されています。「線を引く」という子どもでもできることから始められます。あなたもさすってもらおう背中。つけよう花丸。
おわりに
今ではジェスドロを、VSTを表現するためという他にも自分との対話だったり「ととのえる」行為に近いものだと思っています。線を引いた後の、なんだか良かった と感じた「なんだか」って何から感じるんだ?と考えてみたり、線を引いて自分のコンディションに気づいたり整えたり。
この線を引いて描いていくだけの行為が気がついたら自分のかける幅をグッと押し広げてくれていました。これも掘り下げると話せることが沢山出てくるのでどこかで話したいです。
ジェスドロを始めたての人は、最初のうちは時間が短い!ここがわからない!難しい!どう言うこと?!という感想を持つのが多くみられます。(うんうん、私もそうだった。)
とはいえ30秒〜2分の線。短いからこそ、描き直しがしやすいので数を重ねていく内に気がつけば理解していたり、手に馴染んでいたりします。
「ととのえ」ができるようになってから、わたしの絵への向き合い方は登山口〜で話している通り大分変わりましたし、今でも可能性がありすぎて、お絵描きが楽しくてたまりません。
ついでに言うと、2022年の5月から1年でジェスドロ1万体チャレンジを始めました。あと数百体で1万体に到達します。ゴールに近付いてます。なんなら5月より早くに終わりそう。これについてもきっかけから道のりをいつか記事に出来たらなと考えています。描いてる自分が好きです。まさに冒頭の自分の中の楽しい、スキ なんですよね。大切にしたい。
自分語りも含めて話が長くなってしまったけれども、自分自身が身に沁みて感じたことを正直に書きました。この本や著者の砂糖ふくろう先生に関して誇張はひとつもありません。とてもいい本です。更に今現在第2弾を執筆中(2023年3月現在)でいらっしゃるようです。お知らせ等著者のTwitterで投稿されています。
よきジェスドロライフを!
ここまで読んでくれてありがとうございます。「私の求めてるのはコレじゃない」という人も勿論いるでしょう。それはそれでいいんです。この記事を読んでいるあなたにも好きなことを選んでほしいです。ただ、この記事を読んで0.1mmでも興味が湧いたら手にとって欲しい。あなたの描くハードルはグッと下がる。そして大切な趣味、もしくは仕事である絵描きライフがもっっと充実するから。
びっけ
おまけ
当時小学5年生だった娘がパラパラ・・・とこの本を絵本のように読み、おもむろに絵を描き始めました。びっくりした。
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