私たちは"タメ"をつくり合う/東郷微住:後編
文:伊藤 ゆか
東郷や、ちょっと足をのばして大野などへも行って微住を楽しんだリンちゃんたち。帰国が近づいてくると、リンちゃんたちは「東郷の皆さんに、台湾スイーツをご馳走したい!」と伝えてくれた。それを東郷の人々がサポートする形で、希望はイベントとして実現することになった。
福井市のスーパーや直売所で食材を買ってきた四人。台湾の野菜とはちょっと違うので、みんなで考えながら調理をしていく。「実は(買って食べるけれど)自分では作ったことがないスイーツで、作り方を調べたの」とマルちゃんがこっそり教えてくれた。
当日は東郷の人々が集まり、微住者から教えてもらいながら調理を進めた。彼女たちは説明のためにタブレットで写真を入れた資料を作ったり、とても真剣に準備に取り組んでいるのが見ていてよく分かった。日本語でどうやって説明したらいいか分からない部分は日本人のサポートも受け、作り方を紹介していく。
できあがった芋圓と仙草ゼリーは、やさしい甘みが日本人にも好評!とても頑張って美味しいものを作ってくれたことに東郷の人々も感激して、その後の宴会はおおいに盛り上がった。
「台湾でこんな弾け方したことない!」というくらいノリノリのみんな。
今回、リンちゃんたちが自ら東郷の人のためにイベントを企画したのは、東郷の人々からおもてなしの気持ちを感じてくれたからなのだろう。
観光は"モノ"消費から"コト"消費へと変化していると、日本の多くのメディアが謳うようになった。けれど"コト"消費も体験は一時的なもので、そこで完結している。
微住で生まれているのは"タメ消費"だ。
来る側も迎える側も分け隔てなく、同じ地域のゆるい一員として、お互いにおもてなしし合う。微住には「ゲスト・ホスト」という関係はない。
お互いの持っているもので、お互いの"タメ"をつくり合い、消費し合う経済圏をつくっている。そしてそれは完結することなく繋がり、続いていく。
(さあ、台湾での記念写真の中からリンちゃんを探そう!)
福井に来てもらったから、今度は福井から台湾へ会いに行く、そしてまた台湾からやって来る───そうやって私たちは「一期三会」以上に関係を繋げることができている。
互いにもてなしあう”タメ消費”だからこそ、自然と「あの人に会いに行きたい」と思ってしまうのかもしれない。