5分でわかる!バンクシー(BANKSY)ってどんな人??
現在開催中の【バンクシーって誰?展】(寺田倉庫G1ビル)に際して、バンクシー解説です!
バンクシー(BANKSY)の特徴と魅力を8つのポイントに分けて紹介します!
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それではどうぞ!
1.ステンシル
街にあるグラフィティは、以前までは文字が主体のものが多かったのです。
上から
・タグ(文字だけの最も手軽なグラフィティ。)
・スローアップ(縁で囲った太さのある文字。2色構成が多い)
・ピース(色数も難易度も上がって、より完成度の高いグラフィティ。時間がかかる)
他にも壁にステッカーを貼ったり、いろんな手法がありますが、ここでは割愛します。
バンクシーも当初は上のものと似たようなスタイルで活動をしていましたが、それでは他の人に埋もれてしまいます。
もっと美しくわかりやすく読み取ってもらいやすい形を、警察に捕まらないように短時間で描きたい。
それを実現するために始めたのが、ステンシル(型を使って転写する)という技法です。
6Mの大きさのものも、この技法によってなんと!30分以内に描き切るそうです!
ある時列車の側面にグラフィティを描いている途中に、警察に見つかり追われ、近くのダンプカーの下で息を潜めていました。
「このスタイルは時間がかかるから改善が必要だ」と考えている時に、視線の先にステンシルで印字されていたトラックのプレートを見て、このスタイルを閃いたそうです。
「準備してやるグラフィティなんてダセェ!」と言われていましたが、自分がやりたい「美しくわかりやすい形でメッセージを伝えること」をコツコツ続けた結果、ステンシルグラフィティのネガティブな定説を覆しました。今やバンクシーの真似をする人が多数います。
このような型をあらかじめアトリエで作っておいて、現場の壁の壁に貼り付けてスプレーを吹きかけます。
型さえできていれば、短時間で誰でもできてしまうのがポイントです。
「バンクシー」が複数人のグループなのではないかと言われている理由の1つでもあります。
2.「現地の壁」に痛烈に風刺
わざわざ「現地にいって描く」という行為が唯一無二ですごいです。
「言葉」ではなく「形」で物申すことで、言葉の垣根を超えて、主張が伝わりやすいという効果もあります。
バンクシーの作品は、その土地を含めて真の魅力を発揮するのです。
こういう場所と関わりの深いアートを「サイトスペシフィック・アート」と呼びます。
BANKSY《Achoo!》2020年
入れ歯が飛んでいってしまうほどの盛大なくしゃみをしているおばあちゃんです。
コロナ禍の世界で、マスクをしない人に対する皮肉でしょうか。
坂道に並ぶ建物をうまく利用して、くしゃみで家が傾いているかのような演出も面白いです。
飛沫やウイルスの拡散への警鐘が、おもしろおかしく表されていますね!
実はこの作品、オークションに出すために、既に切り取られてしまっているようです。
最近のバンクシーの作品はこのように壁ごと切り取ってオークションにかけられたり、保管されたりします。
バンクシーのアートやメッセージ性、スタイルは好きです。ですが、場所関係なくストリートのものを保管したり、場所の再現なく作品のみを展示したりするのはちょっと違和感を覚えます…
3.バンクシーにとっての壁
壁は「隔てるもの」です。
それは国や部屋、外と中だけではなく、言葉や文化、思想などをも隔てます。
あるいは街そのものを形つくるものでもあります。
「キャンバス」ではなく、「壁」に描くという行為は、そういった要素に対して、直に関わりを持った上で、自分の思いを表したいからではないか、と考えています。
遠いところから言いたいことだけ言っておしまいではなく、現地に赴いてこそ言いたいことに重みが出るのです。
イギリスの街中に描かれた作品。イギリスの大手企業(資本主義の象徴)のビニール袋を旗に見立てて、「誓約ごっこ」をしている子供達が描かれています。
意味はぜひご自身で感じ取ってみてください!
このような作品は現地の街に描かれてこそ強い意味を生み出すのだと思います。
4.動物を多用
特にネズミが頻繁に出てくるのは、自分の立場を投影するためだと考えられます。
街のドブネズミは至る所に現れますが、嫌われ者ですから。犯罪を犯して、追いかけ回される自分のイメージにピッタリなのだと思います。
Banksy, Love Rat
バンクシー《ラヴ・ラット》 2004年 個人蔵
作品集「Wall and Piece」より
ちなみに「傘」はイギリスの国民的キャラクターであるメアリーポピンズのトレードマーク。
日本人にとっての「ドラえもんのタケコプター」に近いアイコンだそうです。
嫌われ者のネズミが、空も飛べる傘を差している。
どんなメッセージが込められているか、ぜひ考えてみてください。
5.屋内グラフィティの提案
既存の名画に書き加えることで、メッセージ性の強い作品に再編成する手法です。
自分のものではない作品に手を加えて意味を変える手法は、ダダイズム生みの親デュシャンの系譜を感じます。
既存の名画を使用することは、すでに含まれているメッセージがわかりやすいのと、見る人がとっつきやすいという効果があります。
《Show me the Monet》2005年
この作品の元ネタはモネの《睡蓮の池》
ギャング映画でよく使われる「金を見せろ」という台詞をもじってモネとマネーをかけています...
6.らくがきは犯罪。だけど…
グラフィティなんてかっこいい名前がついているけど、らくがきは犯罪です。
(主な理由は割れ窓理論で検索)
しかし、街に溢れるどデカい広告はなぜ許されるのでしょうか。
あれだって、私たちにそこの製品を買わないかぎりダメ人間だと思い込ませようとしているではないでしょうか。
不必要な情報を一方的に主張してくる意味では、立派な「らくがき」なのでは?
儲けを得られるものだけに価値があるのか?そんな問いを投げかけるために、彼は壁を使って絵を描き続けているのかもしれません…
「広告は許されて当然でしょ」と考えてしまったあなたは、もしかしたらいろんなことについて頭が固くなってしまっているかも?
7.一貫しているメッセージ性
バンクシーは手法を変えども今も昔も一貫して、平等と平和を訴えています。
(彼の作品には暴力や性的要素、薬物を推奨する表現は一切見られません。)
直接的な批判ではなく、おもしろおかしく例えたり、意味を考えさせるような表現力も魅力的です。
現地に赴いて描く行動力もスケールが違います。周りの環境を借景として取り入れることで、作品が完成するなんてカッコいい…
顔を隠して悪いことをしながら、平和を願う行動をする…まるでバットマンようですね!笑
《CND Soldiers》2005年
「平和マークの落書きをしながら、緊張感を持って周囲を警戒している兵士」です。
やっていることは「犯罪」だけど、その内容はすばらしい時、果たしてそれは本当に罰せられるべきなのか?
自分たちの生活にも当てはまりそうな内容です…
マークが未完成な部分も見どころですね!
8.広告の手法
オークションで落札された瞬間に作品をシュレッダーにかける事件で一躍話題になったバンクシー。
その他にも、自身でホテルや遊園地を作ったり、美術館に勝手に自分の作品を飾ってみたり、壁に何かを描くだけではない、そのパフォーマンスの話題性は世界一と言っても過言ではないでしょう。
ちなみにするぞーはあのバンクシーのシュレッダー事件について、オークション側もグルになった美術史を作り出すための壮大なパフォーマンスだと思っています。
だって出品する際に絶対くまなく作品チェックするはずですよね...?額を開けて中見ていないはずがない...
このようにバンクシーは、その作品だけではなくパフォーマンスによるプロモーションの仕方がとても功名で感心させられるものばかりです。
日本でその名が話題になったきっかけである、あの傘を差したねずみ。あれにも実は巧妙さを感じる裏話があります。
東京都の条例では落書きは禁止になっているはずなのに、記念写真を撮ってしまう都知事…
この作品、話を聞くところによると、なんと最初の発見は都への通報だそうです。
…なんかおかしくないですか?
もし普通に見つかっていたらSNSで話題になって、それから自治体関係者に伝わるのが自然な流れですよね?
でもこの作品は「なぜか」都への通報が第一発見だったのです。
(今は切り取られて都に保管されています...)
実際この騒動がきっかけで、バンクシーの日本での認知度が一気に上がったことは記憶に新しいと思います。
しかも!この翌年にはバンクシー非公認のはずの
「バンクシー展 天才か反逆者か」(横浜アソビル 2020年)
が日本初公開の予定でした。
この話、あまりにもタイミングがうまくいき過ぎていると感じるのはするぞーだけでしょうか...?
いずれにしてもバンクシーの裏にはその活動を支えている強力なパートナーがいることは間違いないと思います。
余談ですがこんな話もあります。
死後に作品の価値を認められたものの、生前は貧乏だった……という芸術家は多い。例えばゴッホは、存命中には1枚しか絵が売れず、弟・テオの援助を受けながら創作活動に打ち込んでいたという。
一方、同じく大画家であるピカソは、生前から画家として名声を得て、経済的に豊かな生活を送っていた。彼の遺産は、7万点もの作品に住居、現金などを加えると、日本円にして7500億にも上り、生きているうちに最も経済的に潤った画家と言える。ピカソとゴッホは何が違ったのだろうか?
「ピカソは新しい絵を仕上げると、数十人の画商を呼んで展覧会を開き、作品の背景や意図を解説したと言われています。
理由はふたつ。ひとつは、人が作品という『モノ』を買うのではなく、そこにある『物語』にお金を払うものだと知っていたから。
もうひとつは、画商が一堂に会すと競争原理が働き、作品の価格が上がるためです。ピカソは画家として才能があっただけではなく、自分の価値をお金に変える方法も心得ていたのです。それは、『お金とは何か』に興味を抱き、深く熟知していたからではないでしょうか」
【なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?】冒頭部より
↑タイトルのピカソとゴッホについては冒頭以外ほとんど語られていませんので、注意。お金についての考え方をわかりやすく知ることができる内容です。
作家がちゃんと食っていくためには、残念ながらひたすらいい作品をつくっているだけではなく、プロモーションが非常に重要なのだと知らされました…
9.まとめ
いかがでしたか?
バンクシーというアーティストの特徴をまとめると
平和と平等について世の中にある矛盾や不条理を
わかりやすい形で、痛烈かつユーモアのある形にするセンスが魅力的で、
ステンシルという斬新かつ合理的な手法や、現地に出向くという行動力、美術館の無断展示、ホテルや遊園地の建設、シュレッダー事件、覆面スタイルなど、派手なパフォーマンスで見るものを飽きさせない工夫が素晴らしく、
SNSや報道を利用した、プロモーション戦略が大胆かつ巧妙である人物。
資本主義社会を否定的に表現しながら、資本主義社会を最大限に利用するアーティスト。
といったところでしょうか。
今回はバンクシーの特徴や魅力について、8つのポイントにまとめてみましたが、もちろんここで上げきれていない活動や作品がたくさんありますので、
少し興味が出てきたという方は、現在開催中の「バンクシーって誰?展」をお勧めします!
バンクシーの作品を現地の街並みも含めて実物大で再現しているので、作品の本来の魅力を感じてもらいやすいと思います!
間違いなく美術史に残るであろう芸術家の活動を、リアルタイムで追えるのは楽しいですね!
それではまた!
「おまけ」ではするぞーのお気に入り作品について解説しています!
記事全体の内容含めて、「よく頑張ったな」と労いの意を込めてご購入いただけるとありがたいです!
なお、いただいた分は全て美術館のチケット代などのするぞー発信活動費に使わせていただきます。
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