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「泡ひとつよりうまれきし」~対馬への旅の記録3

厳原に到着し、対馬博物館の開館と同時に「泡ひとつよりうまれきし」の展示会場へ入った。

展示室への入り口を入ったとたん、深い深い海の底にいるような気持になった。


ハツコ縄、海女さんのふんどし、鮑おこし、磯メガネ・・・

恐ろしい側面もあわせ持つ海に対峙するために、
海に挑もうとする人間の精神性がつくりだした道具たちが、そこにあった。

盆踊りは供養であり、鎮魂のため。
ハツコ縄は、魔よけの左綯いで作られる。

怖いけど、そこに向きあう。
不気味だったり、そしてエロティックだったり。
人間の奥底にある、本質を覗き見たような気持になった。

ずっと見たいと思っていた光枝さんの映像作品「つれ潮」は、ルーツのある福岡・鐘崎を訪れることができたおばあちゃんの笑顔が印象的だった。
「信号波」でも感じた、心で人と繋がる光枝さんの人柄を、この作品でも感じることができた。

展示会を締めくくる、クロストークも興味深かった。
鳥羽の海の博物館芳賀ライブラリーもいつか訪れてみたい。

クロストークの終わりに、展示を見る人が、それを見て次の行動に移す2次的価値が生まれることが、展示会の意義のひとつである、という話があった。

それを衣に携わる自分がもてるとするなら、
ふんどし、ハツコ縄、布を丈夫にするための刺し子が施された防寒着。
原点の、道具としての衣、人間の精神が込められた衣を問うて、
いつかかたちにしてみたい。
そう思った。


そしてクロストークの終盤で、海女の関係者の「佐須奈のすなおさん」という名前が耳に入った。

私達家族には、今となっては連絡の途絶えた親戚が佐須奈にいると聞いていた。
名前はすなおさん。
15年くらい前まで、毎年お正月にはすなおさんからサザエやアワビがたくさん届き、親戚みんなでおいしくいただいていた。


対馬の海女文化と、連絡の途絶えた親戚のすなおさんが、
私の中で渦を巻き始めた。

展示期間が終わってからも、私の中で続く何かを予感した。

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bijou blanc
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