何かに呼びもどされて 1
先日、母校の大学の附属図書館を久々に訪れた。
ここには、私にとってのお宝が所蔵されている。
私は時々、そのお宝に会いに行く。
・・・
15年ほど前のこと。
たまたま母校の大学で、非常勤助手の仕事を週1回することになった。私は大学時代には被服学を学び、卒業後に服飾制作の仕事をしてはいたけれど、教員の仕事に興味を持ったことは、実はなかった。
そんな私に、たまたまのありがたい偶然が降ってきて、はからずしも再び母校に戻れることになった。
担当させてもらう講義は、衣服設計学と実習。
私が学生時代に学んだ時と同じ実習室での講義だった。
私はその実習室で、私にとっての 「お宝」 を発掘することになる。
たまたま降ってきたその仕事が、お宝発掘に繋がるとは思いもしなかった。
もしかしたら、私はこのお宝に巡り合うために、この実習室に呼びもどされたのかもしれない。
その時大学は、改革により、5年後には衣服を学ぶ学科はなくなり、私の担当させてもらった衣服設計学と実習の講義もなくなることが決まっていた。
さらに大学の建物は、旧校舎から新しい校舎へと建て替えられることが決まっていた。
旧校舎は、私が学生として学んだ約30年前も十分レトロな趣きだったけれど、さらにそのまま時間を重ねていた。
助手として勤務し始めて、最初の年。
実習の準備のために、ミシンやアイロン、その他の道具などの確認をした。
ミシンやアイロンの置き場は私の学生時代と、なにも変わっていない。
窓際にあるテーブルほどの高さの棚の上に、ロックミシンが数台並んで設置されている。それも私の学生時代と変わっていない。
学生時代、この棚の前に椅子を持ってきて、ブラウスやスカート制作の実習の時に、ロックミシンのカッターに少し緊張しながら、縫い代にロックミシンをかけたのをよく覚えている。
そのロックミシンの下にある棚は、引き戸のある収納庫になっていた。
その棚に何が入っているのか、確認しようと開けてみた。
そこには、雑誌のようなものが、ぎっしりと詰まっていた。かなりの数がある。
一番手前にある一冊を取り出してみてみた。
それは、1980年代初めの、「装苑」だった。
(装苑 Wikipediaより)
・・・明日に続きます。
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