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貝殻の思い出と、アオサギと、風になった人魚姫 ~対馬での旅の記録5
対馬博物館を後にし、福岡へと帰るために、厳原から対馬空港行のバスに乗り込む。
厳原から対馬空港へ向かうこの道には、柔らかな思い出があった。
今回の帰路も、あの時と同じ飛行機とバスだった。
もしかしたら、あの貝殻をくれた人にまた会えるかもしれない。
でも、その人はバスには乗ってこなかった。
ふと見ると、海へ続くとみられる河口に、1羽のアオサギがいた。
急いでスマホで写真に収めようとしたけれど、間に合わない。
そういえば、「泡ひとつよりうまれきし」の展示の案内が届いた夏至の日に訪れた伊勢神宮でも、アオサギに巡り合ったことを思い出す。
対馬の海女文化に触れたこの日。
幼い頃、母に読んでもらった人魚姫の話を思い出す。
突然の嵐が、人魚姫と王子を、深い海の底で引き合わせた。
人魚姫の思いは実らず、最後は海の泡となった人魚姫。
そんな悲しい結末だったと記憶していた。
私の持っていた絵本の最後には、人魚姫が空へ上っていく絵が描かれていた。
何も身にまとっていない人魚姫に、3歳の私は羽のようなものを着せたくて、上から羽衣のような絵を描いた。
福岡行の飛行機出航までの待ち時間、スマホで「人魚姫」と検索してみた。
そして、人魚姫は泡になった後、空へ舞い上がり、風になってみんなに幸せを運んだという、その後のストーリーがあることを、知った。
秋分の突然の嵐は、遠のいたらしい。
辺りは柔らかい夕焼けの光に包まれていた。
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