薬理テスト対策:全身麻酔薬・催眠薬・中枢興奮薬・鎮痛薬

★全身麻酔薬

全身麻酔薬とは外科手術を行いやすくするための薬物であり、段階や条件がある。

・全身麻酔の3条件
①痛みの消失 ②意識の消失 ③骨格筋の弛緩
※必ず覚える!定期試験に頻出

・全身麻酔の深度(段階)
Ⅰ期/導入期(痛みの消失)→Ⅱ期/発揚期(意識の消失)→Ⅲ期/手術期(骨格筋の弛緩)→Ⅳ期/中毒期(呼吸麻痺・血圧低下などの中毒症状)

※全身麻酔薬としては手術期までで十分であり中毒期に入ってしまうと手術の進行に悪影響を及ぼす可能性がある。

全身麻酔薬には、吸入麻酔薬と静脈麻酔薬がありそれぞれ特徴がある。

表,1吸入麻酔薬と静脈麻酔薬のまとめ

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(1)吸入麻酔薬
・エーテル(延髄CTZドパミンD2受容体刺激による催吐作用あり)
※催吐・・・嘔吐を起こす
 制吐・・・嘔吐を抑制する

・亜酸化窒素(笑気):酸素欠乏症を起こしやすい

・ハロタン

(2)静脈麻酔薬
・超短時間型バルビツール酸系薬物(チオペンタール、チアミラール)

・ケタミン(麻薬に指定されている)(グルタミン酸NMDA受容体の遮断による)

・プロポフォール(GABAa受容体におけるGABAの作用を増強させる)

★催眠薬
(1)バルビツール酸系薬物(~ビタールという名前が多い)
フェノバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタールなど

・作用機序
GABAa受容体Cl⁻チャネル複合体のバルビツール酸結合部位に結合
→Cl⁻チャネル開口頻度上昇(Cl⁻の細胞内流入促進)
→細胞内過分極
→中枢抑制作用

・薬理作用
催眠作用、麻酔作用、抗痙攣作用、鎮静作用

・副作用
①呼吸麻痺、正向反射消失
→解毒薬:ジモルホラミン、炭酸水素ナトリウム

②精神依存、身体依存、耐性


(2)ベンゾジアゼピン系薬物(~ゾラム、~ゼパムという名前が多い)
トリアゾラム、フルニトラゼパム、エチゾラム、クアゼパム

・作用機序
GABAa受容体Cl⁻チャネル複合体のベンゾジアゼピン結合部位に結合
→Cl⁻チャネル開口頻度上昇(Cl⁻の細胞内流入促進)
→細胞内過分極
→中枢抑制作用

・薬理作用
催眠作用(バルビツール酸系薬物と比べ、自然睡眠により近い眠りを誘導するため不眠症の第一選択薬)

・副作用
・前向性健忘(服用後、ある一定期間や夜間に中途覚醒したときのことを記憶していないといった記憶障害)

・反跳性不眠(勝手な判断で服用を突然中止すると逆に以前よりも強い睡眠障害が出現する)

・持ち越し効果(睡眠薬の効果が翌朝まで残り、眠気、ふらつき、頭痛、倦怠感、脱力感等が現れること。特に高齢者に現れやすく、翌朝自動車の運転を控えるなどの配慮が必要)


(3)非ベンゾジアゼピン系薬物
ゾルピデム、ゾピクロン

ベンゾジアゼピン系薬物とは構造が異なるが作用機序はベンゾジアゼピン系薬物と同一と考えられている。

作用時間が短く、ベンゾジアゼピン受容体のω1受容体に選択的に作用するため副作用が少ない。※ω(オメガ)と読む。
※ベンゾジアゼピン受容体にはω1、ω2受容体というサブタイプがある。
ω1受容体:催眠、鎮静作用に関与
ω2受容体:抗不安、筋弛緩作用に関与

ベンゾジアゼピン系薬物はω1、ω2受容体の両方に作用するが、非ベンゾジアゼピン系薬物はω1受容体のみに作用する。


(4)その他
①ラメルテオン
メラトニンMT1/MT2受容体を刺激→睡眠・覚醒リズムを正常化
→催眠作用(入眠障害の改善)

※メラトニン・・・脳の松果体から分泌されるホルモンで、夜になるにつれ分泌量が増加し眠気を誘う。


②スボレキサント
オレキシン受容体を遮断することで催眠作用を示す

※オレキシン・・・覚醒状態の維持に働く物質


③フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)
ベンゾジアゼピン結合部位でベンゾジアゼピン系薬物と拮抗する。ベンゾジアゼピン系薬物による副作用や鎮静作用の解除などに用いる。

《定期試験対策・確認テスト》
・全身麻酔の3条件は?
・全身麻酔の4段階のうち痛みの消失が認められるのはどの段階か?
・吸入麻酔薬と静脈麻酔薬の特徴の違いは?
・ベンゾジアゼピン系薬物でよく見られる副作用は?またその副作用の解除に用いられるベンゾジアゼピン受容体拮抗薬の名前は?


★中枢興奮薬
(1)キサンチン誘導体
カフェイン、テオフィリン

作用機序:
ホスホジエステラーゼを阻害
→細胞内cAMP濃度上昇
 ※cAMP(サイクリックAMP)は環状アデノシン一リン酸
→中枢興奮作用・強心作用

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(2)覚醒アミン
①メタンフェタミン、アンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル

作用機序(メタンフェタミン、アンフェタミン):
ノルアドレナリンやドパミンの遊離促進
→中枢興奮作用・交感神経興奮

適応:
ナルコレプシーの改善に使用される。
※ナルコレプシー・・・日中に強い眠気の発作が起きる睡眠障害。日中において場所や状況を選ばず眠くなる。

(3)脳幹興奮薬
ピクロトキシン

作用機序:
GABAa受容体-Clチャネル複合体のピクロトキシン結合部位に結合
→Clチャネル閉口
→GABAa受容体の機能低下
→シナプス前抑制を抑制
→脳幹興奮作用

特徴
大量投与で間代性けいれんを誘発する
※間代性けいれん・・・筋肉の収縮と弛緩が交互に起こり四肢がガクガクと震えるようなけいれん。

(4)脊髄興奮薬
ストリキニーネ

作用機序:
脊髄においてグリシンと拮抗
→シナプス後抑制を抑制
→脊髄興奮作用

特徴:
大量投与により強直性けいれんを誘発
※強直性けいれん・・・意識障害や手足が突っ張るなどの症状がでるけいれん

(5)呼吸中枢興奮薬
ジモルホラミン

作用機序:
延髄の呼吸中枢を興奮させることで呼吸促進作用を示す。
血管運動中枢を興奮させることで血圧上昇作用を示す。

特徴:
全身麻酔薬やバルビツール酸系薬物の中毒症状(呼吸麻痺など)の解毒に蘇生薬として使用される

《定期試験対策・確認テスト》
・cAMPの前駆体は?
・cAMPの産生に関与する酵素は?
・ナルコレプシーとは何か?
・大量投与により間代性けいれんを誘発する薬物は何か?

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