(J83) 米国を抜いて世界一に。中国社会の矛盾を映し出す作品たちとその限界-2 (2020.11.18) by 林毅 より抜粋加筆しました。
⑷ 歴代興収上位はほぼ国内売上で構成
アリババやテンセント、ピンドゥオドゥオなど、
世界中から注目される多くの中国ネット企業。
実はその売上げはほとんど、
国内で占められることが多い。
市場が飽和しつつある今、大手企業はいずれも、
なんとか海外に進出したいと考えています。
しかし、既存の広大な市場に最適化され、
立派に収益を上げている状態で、新しいマーケット向けに自己破壊的な変革を起こすことが難しい、
いわゆる「イノベーションのジレンマ」に陥っています。
中国企業のトップマネジメント層に、
海外への知見がある人材が乏しく、正しい判断が下せないといった原因もまた映画産業と共通点がありそう。
作品自体のクオリティーや規模は、ハリウッド大作と比べても遜色ないものであることは確かだが、
今後、TikTokが世界中で流行したように中国発の映画が世界中で楽しまれるようにするためには、まだ高い壁を越える必要があるでしょう。
⑸ 社会の矛盾を映し出す作品たちとその限界
社会的で重いテーマをもった映画も中国には存在します。
中国映画界のドンであるチャン・イーモウ監督は、
文化大革命の時代を生きる人々を描き、中国国内で上映できなかった「活きる」のような作品も撮っています。
しかし、いわゆるミニシアターがほぼ存在しない現在の中国においては、作家性の強いインディペンデント映画が収益を得ることは簡単ではありません。
⑹ すべての中国映画作品は、国家電影局という政府機関の承認を得なければ中国国内で公開できない
審査の過程で特に政治、暴力、色情的な表現は、
削除や修正を要求されるし、扱うことのできるテーマに限りがあることもまた事実。
2017年に施行された「電影産業促進法」で、
海外映画祭への出品にも当局への申請が必須とされました。
インディペンデント作品に対して、
大きな打撃になっているともいわれます。
チケット価格は日本の方が高いです。
米国の料金は、2012年の892円から、
6年間で1021円になり、年々微増しています。
映画館によって、多様な料金プランを打ち出しています。
❶公開開始から日にちが経った作品は割引価格で観賞できる
❷曜日毎の金額設定
❸月額見放題サービス「Movie Pass」
中国の料金は、作品・場所・映画館によってバラバラ。
都心だと高く、アクセスが悪い郊外だと安くなります。
通常の2Dなら300円~1100円と幅広い。
❹オンラインでチケットを購入できるサービスが普及しています。
❺年間上映作品の7割以上は、中国映画を上映しなければならないという政府の規制があります。
外国映画枠はたったの3割なので、大体はハリウッド映画で埋まります。
日本映画は超大作じゃない限り、中国での上映は難しいのが現状。