続:1年前に山下達郎レコード6掛けにしろと投稿したツイートが知らぬ間に燃えていた件
山下達郎氏のツイートが再び燃え上がったのは(私のは燃えじゃなくバズだと信じたいところ)彼のひさびさの新作が出るので再び掘り起こされたものらしい。そんなこともつゆ知らずいつものように火に油を注ぐかのように投稿した前回の記事も多くの方に読まれているようで感謝しております。ただこのような話は無料部分でしか話さないため有料記事を購入されるととても損した気分になるのでご注意ください。
また今回の「続:」とは完璧釣りなタイトルですのでこの辺で読むのを止めても大丈夫です。今回は前回の記事で達郎氏がたとえレコードを6掛けにしてくれたとしても結局は業界の意志により変化を起こさないと何も変わらない的なカッコよろしいことを書いたのですが、それで思い出した15年ほど前の話です。
15年ほど前、レーベルの作品を通常業界卸値7掛けのところを6.5掛けで卸しました。それは前回お話したように3枚仕入れて2枚売っても赤字、3枚全部売れないと儲けがない卸価格(7掛け)なんておかしいと思ったからです。現在ではあまり自社のレコードを卸すことはないのですがその際は6掛けで卸しています。正直言うと個人経営店さんに関しては5掛けで卸しています。
ところで、よく個人レーベルやバンドの方から作品を販売してもらいたいと売り込みをいただくのですが基本全てお断りしています。なぜならば当店のお客さまでも音楽を制作している人は多いと思うし、もし気に入ったからと作品を扱ってしまえばお客様の作品にも優劣をつけることになり、それはなんだか自分としては良い気分ではないからです。
なのでその場合はまずそういった事情を話しお断りするのですが、その際にお節介な私はもし店に作品を卸すのであれば7掛けではなく5掛けで卸した方がいいよとオススメします。販売価格から半値で卸せという意味ではなくもし7掛けで卸すつもりならば7掛けの倍を定価にし5掛けで卸す。例えば定価を2,000円に設定し卸値が7掛けの1,400円だとしたら定価をその倍2,800円にして卸値を1,400円にする。すると言われるのが「2,800円だと高くないですか?店からも2,000円〜2,300円が売れると言われました」。
おそらく利益よりも枚数を売った方が販売人として評価される大手では安ければ安い方が良いかもしれません。彼らにとって利益率は関係ありません。かといって沢山売ってくれることはないですけど。3枚が5枚にはなるかもしれません。
でもインディペンデントな店ではどうでしょうか。5掛けで卸すといえば飛び付くと私は思います。扱うつもりのなかった作品であっても扱ってくれるかもしれません。もしかしたら他の作品より推してくれるかも。だって他の作品より2割も儲かるのです。10枚売って6,000円利益の定価2,000円で卸値1,400円のCDよりも、10枚売ったら14,000円儲かる2,800円定価のCDを推すに決まっています。だって2倍以上の儲けです。
もちろんどのショップさんもこだわりを持っていらっしゃるのでそもそも好みではない作品であれば扱ってくれることはないでしょう。よって拝金主義から起きてる話ではありません。レコードやCDに限らずの話で例えばZINEだってなぜ7掛けで売ろうと思ったのでしょうか。たぶん「7掛けらしいから」といった理由だと思います。せっかくの自分の作品であるのにいきなりそこだけ何も考えることなく7掛けを受け入れているのは不思議なことです。
私がZINEを作って売るならば、例えば自分がせめて1,000円は欲しいと思ったのならば定価を3,000円に設定します。無名の人間のZINEに3,000円なんて高いよと言う店主に「卸値は1,000円です」と間髪入れずに言ってください。店主は「じゃ…ちょっとだけね」と言うに違いありません。そして売り切れたら速攻追加注文が来ます。
でも自分がこれくらいは欲しいと決めた金額は変えてはいけません。定価を基準にして条件に応じ掛け率を下げるのはよくありません。これをしてしまうと永遠に自分の作品を安売りすることになります。私が知っているアーティストも業界もそれでダメになった気がします。そのくせ音楽や芸術では食っていけないと言います。
直接欲しい人に売る時もぜひ3,000円で売りましょう。元々は1,429円で売る予定だったものが3,000円です。1冊売れれば2冊分以上稼げます。ついでになんだか自分の作品がちゃんと評価された気分にもなれます。さらにこれが一番大事なことなのですが、3,000円であなたのZINEを買ってくれた人はあなたにとって本物です。そしてこれからも支援してくれる可能性が高いです。
しかしおそらくここで問題が起きます。ある店が3,000円が定価のはずの自分の作品を2,000円で売っていると聞きます。店主に理由を尋ねに行くと「2,000円でも十分な儲けが出る。なによりウチは通常7掛けなんだ。本来なら1,429円でもいいんだ。」と言ったりします。この前までは大きな利益が得れて喜んでくれていたはずなのに。そしてなんだか自分が安売りされたようでなんか色々台無しです。
ここでようやく15年前の話になります。
15年ほど前、レーベルの作品を通常業界卸値7掛けのところを6.5掛けで卸しました。すると1店舗以外の店がみんな7掛けで販売してしまいました。当店では○○円で販売するという希望小売価格も明記し、前述した何故この価格で卸すのか、我々は適正なしっかりとした利幅を取るべきです云々といった旨を書いた声明文(?)も各店舗様にメール以外にFAXもしました(まだFAXが主流の時代だったのです)。であるのに10数店舗すべて7掛け。結果、当店より他店様の方が安く自社の作品を売る状況となりました。唯一、わざわざ賛同のFAXを送ってくれ6.5掛けで売ってくれたのは大阪のFLAKEだけだったのを記憶してます。だから私は今でも和田くんには贔屓します。(名古屋のファイルアンダーさんとはまだ出会う前の話かな?山田さんはそんなことはしないので)
でも思うのです。みんな悪気なくてやっていたのだと。今の業界の現状もそんな感じだと思います。言われたらそうですよねーと頷きながら多分面倒だからそのまま7掛けで売る。レコードストアデイが日本で始まった時も資本が大きい店順にルールを守りませんでした。予約を取る、1週間後ではなくすぐネットですぐ売る、取り置きを受け付ける、などなど。ルールを守ってくださいと毎年お願いするのですがあの手この手でルールを別解釈し守りませんでした。ほんとあの手この手よく考えるよ。と呆れるほどでしたが4年目くらいでようやく海外と同じルールで守ってくれるようになりました。あれは悪気があったのかなかったのか。私はやっぱり彼らは悪気がなかったのだと思います。
だから達郎さん、私のツイートは気にしないでください。6掛けで売ってくれてもたぶんその分安く売られちゃいますので。色々広げちゃってごめんね。
FLASHER 'LOVE IS YOURS -OPAQUE BABY BLUE VINYL-' LP
Flasherのニューアルバム「Love is Yours」の素晴らしさ。限定カラー盤はレーベルも売れないと思ったのか全然作ってない模様、Dominoなのにー。と、めちゃくちゃショートしていたのですがそこはわたくし仲真史。日頃の行いの良さが米国にも伝わっており最後の分だよと送られてまいりました。マジで。もう再入荷ないのでお早めに。私の年間ベストテン入り決定。
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サポート!とんでもない人だな!