輸入レコード店が潰れる理由
テクニークさんが破産のニュースを聞いて。私はこれまで輸入レコード屋さんがなくなる度に結構発言しているため(それは20年以上前から)結局思うことはいつも同じですが、そしてこちらのnoteや私のことを知っている人は聞き飽きたレベルな話と思われますのでお付き合いいただける方はどうもすみません。でもそんなに長くはないです。たぶん。
結論として輸入レコード屋が潰れるのは(輸入レコード屋に限らずかもですが)単純に薄利で商品を売っているからと私は思います。問題は山下達郎さんのレコードの卸値の記事で書いてたこととだいたい同じとこです。
1990年代、世界で一番のヴァイナル・シティと呼ばれた渋谷宇田川町にレコード店が約200店も存在できたのは単純に売れてたからです。薄利多売でみんな成り立っていました。私も1992年から宇田川町のレコード店でバイトを始め3ヶ月後にはバイヤーも任され、そしてその店はシスコさんやマンハッタンさんみたいに大きくはなくとも恐らくそのジャンルの中では有名店と言われるほどの売上げは出していました。社長は免許を取ってベンツに乗ってたし。でもお世話になった社長には申し訳ないですが『この利益率で続けていけるなんておかしい』と思っていました。そのことは社長に言った記憶もあります。その時の私はビジネスや会社や税金のことなど全くわかっていなかったけれど『レコード屋だけはやらない』と皆に公言していました。輸入レコード店経営がビジネスモデルが確立されていない商売だということだけはわかっていたからです。
それでも1990年代まではレコード屋バブルに沸き、スクランブル交差点で石を投げればレコード袋を持った人に当たると言われたほどでした。本当です。本当だし本当に投げたら当たったと思います。そして2000年代に入り、私は散々拒んだはずなのですがレコード屋を始めてしまいました。思えば高校生の頃からずっとレコード屋をやりたかったのです。しかし前述のように輸入レコード屋では喰ってはいけないとわかっていたのでバイトしながら運営していたレーベル業やDJ、また他の商売を好きになって自分の生業にしようとしてました。でも結局我慢できずレーベルのために借りたはずの事務所の倉庫を店にし始めました。それが現在のBIG LOVE RECORDSとなります。最初は中古盤とTシャツや雑貨などを中心に販売していました。利益率がこちらならまだ悪くはないのが理由です。
昔も今も多くの輸入レコードを扱う店の値付けはだいたい国内盤と同じ7掛けと思います。資本がある店ほど安価で販売できるのは、バルクで大量購入しディスカウントさせたりまた大量出荷による1枚あたりの送料を安くしたり、といった企業努力もありますが実際は単純に7掛けだったのを8掛けにして薄利多売で売っていた(る)店が多いと思います。これはCDの話ですが昨年?渋谷から撤退した大型中古店の新品のCDの価格は激安でしたが卸値から100円だけ上乗せしていただけと聞いてなるほどと思いました。どれだけ大量に仕入れあの販売価格を維持しているのだろうとずっと思っていました。ですがさらに彼らは海外のディストリビューターからではなく日本の某大型CDストアから仕入れていると聞いて2度びっくり。ディスカウントや送料でどうにか辻褄合わせているのかなと思ったのですが、それが事実ならばつまり海外のディストリビューターから仕入れているウチより高値で仕入れ本当に100円だけ上乗せしどこよりも安い価格で売っていたということです。もちろん宣伝集客目的だったものだったと思いますが、にしてもメインの中古盤の足をひっぱていたんじゃないかしらと思ってしまいます。
私はといえば結局輸入レコードが好きなのでいつの間にか店では輸入レコードばかり販売していました。しかし販売価格は上げないとやっていけないことも知っています。と言いながら開店当初しばらくは7掛けで値付けしてました。それでも何故か他店様より高かったです。1万円以上ご購入で送料無料もしてました。だけど当時の価格で12インチのレコードを1枚や2枚無料で提供するのだと考えるとバカらしくなってやめました。それにより一部の通販のお客様はいなくなりましたが、逆にこれまで1ヶ月に1回1万円以上購入していただいていたお客様が毎週3~5,000円買ってくれるようになりました。そして納品書にお礼の言葉を書き始めると実際の距離は遠くても良い雰囲気になっている気がしました。そのお客様を大事にしようと思いました。試聴機もやめました。お客さまがまた減りました。ある日、普段3枚聴いて1枚レコード買われるお客さまに視聴できない旨を伝えると『じゃ』と聴かずに3枚とも買ってくれました。翌週そのお客さまが来店されこうおっしゃいました。『この前買った3枚目のレコードみたいなのありますか?』3枚目のレコードはこれまでそのお客さまが絶対に買わないようなタイプのレコードでした。徐々に売上げが上がり始めました。
といってもそれからもずっと大変でした。ようやく光が見えたのはSNSが登場し、しばらく経ってからだと記憶します。
原宿BIG LOVE RECORDSに入荷する新譜のレコードをSpotifyにて紹介する音楽ラジオ番組BIG LOVE RADIOの最新回Vol.350、公開しました。
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