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エッセイ296.小さいすまいの良いところ(2)すぐやるようになる

昔、朝日新聞の日曜版でしたか、「我が家の履歴書」という連載記事がありまして、それは有名になった人が、昔住んでいた家について、図面付きで見せてくれて、思い出を語るものでした。

ミラーボールのついたカラオケルームを備えた豪邸を親御さんに買ってあげられるようになったスターの、下積み時代とか、新婚時代の家を隈無く紹介してくれて、感心したり、
(私も偉くなって素敵な家が欲しいな)🙄
などと意地汚いことを考えたりしました。

それを真似してみますと、私はまず、5人家族で3Kの木造の長屋で生まれ育ちました。その実家は二回増改築をしたのですが、広く綺麗になったなぁと感動したその家も、今は築四十年。もはや、べったべたに昭和な家の見本のようです。
全て和室、台所は北向きで、プライベートは0とか。
認知症になった母が何度も転落した階段は急で、その転落のために頑固者の父親が、介護保険認定をやっと承知したというお話もあります。(初の介護認定で、母が介護度3、父が4というのは、すごいなと思います)
そういえば、母の葬儀の関係でお寺の住職さんや、互助会の人、介護関係の人が出入りしましたが、みなさん異口同音に
「すごく急で怖い階段ですね。
よく寝たきりのお父さんと、認知症のお母さんが、これまで2階に寝ていらっしゃいましたね」
と言いました。
全くその通りです。

その、2階がある家に長く住み、自分の部屋は2階でしたから、階段の上り下りはなんとも思いませんでしたが、アパートから借家に移った時、
「階段て面倒だな」
と 初めて感じました。

それから、1階と2階では、季節によって寒さ暑さがとても違うこととか。

夫の実家は、最初の広い家と、次に義両親が年老いてから、メンテナンスが大変だからと移った二軒目も、平屋建てでした。
広くても、どこからどこまでもすたすた、上り下りなしで行けるのがとても良かったです。

その頃から、「平屋建ての家に住む」というのは、
私の叶わなそうな夢になりました。

でも、集合住宅ではありますが、私は今、階段のない住まいに住むことができるようになりました。

こうなると、プライベートとパブリックのスペースっていうのですか、仕事場、居間、水回りから寝室まで、当たり前ですが一つの床の上ですから、本当に体が楽です。

二階建ての家ですと、少し古いと、家族の個室は2階に2、3部屋、階下が台所や居間ということが多かったですね。
私もその経験しかありません。
それだと、面倒臭がりの私は、朝起きて階下におりますと、よほどのことがない限り、2階へ行こうとしません。
2階へ行くときは、「用事を溜めてから」行こうと、無意識にしています。
だから、「あれはどこだっけ・・・2階か・・・じゃあいいや、夜で」
と、なんでも後回しにし、忘れることが多かったです。

ただ2階にあるというだけで、
電池を入れればすぐに動き出す壁掛け時計が、動かないまま。
蓋を開けてほしい容器が開かなくて、中のものが出せないまま。
この鍵はなんの鍵だったっけ、家族に訊いてみよう、と思ってそのまま。
作動しない機械を、あとで誰かにみてもらおうと思ってそのまま。

なにかもう、2階は、「そのまま」にされた物品がごろごろしていました。

掃除も、階下はほとんどの時間を過ごしましたから少しはまめにやりましたが、
2階は、「まあそのうち・・・まあもう少し、どうしようもなくなってから」
みたいなだらしない考えをしてしまうらしく、怠りがちでした。

それが、全てが一つの面にある暮らしになりますと、だいぶ良くなりました。
私は機械については全て人に訊いてしまうし、自分でマニュアルを読みながらやっても、なかなか動作させられなかったり、直せませんが、今は
(あれ?)
と思ったら、数メートル歩くとそこいらへんに夫がいますので、

夫おっと、これ直してください。
この蓋、開けてください。
このケーブルは壊れている? 
このねじはなんのねじ? 捨ててもいいねじ?
このバッグの紐がねじれて直らないので直してください。(子供か)
単3電池ある?
ガスの火がつきません。

などなど、全部訊きます。

夫は機械のことならば、役所の「すぐやる課」の職員さんのように、さっさと対応してくれますので、なんとなく困ったまま埃のように溜まっていたものが、割とその場でどうにかなるようになりました。
これが、すごく快適です。

また、置き場所のない掃除用具が、台所のすぐ脇のお風呂場の洗濯機の脇に固めて置いてありますので、以前に比べて飛躍的に、掃除の頻度があがりました。埃や汚れは、溜まるほど、取り掛かるのが億劫になりますが、たまらないうちにちょこちょこっとやると、割と綺麗が保てる物なのですね。
主婦歴そろそろ30年、私は今更何を言っているのでしょうか。

収納が、リビングの作り付けの戸棚しかありませんので、失くしてはだぶって買っていたり、使うときに見当たらなくて無駄な時間を捜索に費やしていた物、例えばガムテープ・荷造り紐、爪切り、鋏、セロテープ、マスク・・そういったものが、いつも同じところにあって、すぐに見つかるのも快適です。

家を出た途端に忘れ物に気がついても、取りに帰っても「2階まで上がっていく」ことがないので、気持ちも軽いです。


昨日に続いて、小さな住まいの良いところを考えてみたら、いろんなことをすぐやるようになる、探し物の時間なども減るということだと今日は気がつきました。

夫婦の仕事部屋が、入口を入ってすぐの廊下の左右に、振り分けで位置しています。5畳というサイズですが、文句は全くありません。

年取ってその小さい3LDKは理想的だね

と言ってくれた友達がいましたが、今まさに、そう思って暮らしています。


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ガラパゴス諸島から来た日本語教師 tamadoca
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