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日本語教師日記205.よく揉まれに来てください。

生徒も中級ぐらいになってくると、日常的に使いたい文法は習得しています。
読み書き、聞くことにも慣れてきて、言いたいことはなんとか言えます。
言えないのがその言葉を知らないから、というときは、辞書を引けば大丈夫。
せっかく辞書を引いて得た新しい言葉は、すかさずノートに書く。
できれば、自分の新出語用のノートを作っておいて、言葉リストを作る。
そういう地味なことが、もうできるようになっています。

このレベルの人の辛さは、伸び悩みです。

「いつまで経っても、私の日本語は、子供のような話し方だ」
「私の日本語は、なんだか一向に深まらない」

と訴える人がいます。

すでにある程度は自信もついていますから、
もっと自然な日本語を話したいなぁと思うようになって当然ですね。

私はこんなことをお話ししてます。

「日本語が上手に話せている人って、一文がまず、長いですよね。
でもよく聞いていると、『けど』『から』や『てコネクター』で繋いでいて、
言っていることはあなたのそれと、そう変わらなかったりします。
あなたも、なるべくブツ・ブツ、と文を切ってしまわないで、
ぐっと耐えて、今より3cmだけでいいから、長い文を言ってみよう」

「それと、日本語が上手い人は、名詞修飾を多用して、
『練れた喋り方』をしていますね。
そんな日本語で喋れるように、練習してみましょう」

(必要があれば、この前ご紹介したやりかたで、
ここで、名詞修飾の練習をします)


では、自然に聞こえる日本語に近づく練習をしましょう。

「昨日のことを話してください」

「はい。昨日私と先生たちはユニクロに行きました。
先生たちは同じ学校です。駅の中のユニクロに行きました。
と、最近、急に寒いでしたから、暖かいジャケットを買いました」

「はい、そこまで。
まず、今の倍のスピードで話してください。
そして、『と』は名詞と名詞の間でだけ使ってください」

「はい。
じゃぁ・・
私と先生たちは昨日、ユニクロに行きました
先生たちは同じ学校です。
と、・・そして、駅の中のユニクロに行きました。
そして、最近、急に寒いでしたから、暖かいジャケットを買いました」

「はい、ありがとう。では、これを見てください」
(抑えて欲しいことをドキュメントに入力します)

⚠️ 母語でなら一文で言えそうなことは、日本語でも一文で言ってみてください。

⚠️「そして」を 言わなくても日本語になるか、やってみましょう。
「てconnector」をもっと使ってもいいですね。

⚠️ 「寒いでした」? 大丈夫?

・・・

「では、これに気をつけて、もう一度、どうぞ」

「はい、私と先生たちは、昨日、駅の中のユニクロに行きまして、行って、
と、温かいジャケットを買いました。最近急に寒いですから」

「いいですね。80点。
『私と先生たち』というと、ちょっとわかりにくいです。
Yさんも先生ですけれど、そこがはっきり出ていませんね。
Yさんは、学校の先生で、職場の友達というとやはり先生なわけです。
なんと言ったらもっと自然だと思いますか?」

「私たちは?  私と同僚の先生たち、ですか??」

「私は同僚の先生たちと、とか、同僚の先生たちと・・これで十分かもしれません」

「なるほど、もっと自然ですね」

「慌てなくていいですから、ゆっくり、少しずつ長い文にしていくといいですね。
それから 『急に寒いです 』は、ちょっと不自然ですね。わかりますか?」

「寒くなりました? ですか?」

「そうですね。『寒くなってきましたから』というと、
一層、少しずつその変化がきている感じがしますね。
では、もう一度言ってみてください。
今度はいつものあなたのスピードで」

「はい。昨日、同僚の先生たちと、駅の中のユニクロに行って、
温かいジャケットを買ってきました。急に寒くなってきましたから」

「素晴らしい。じゃ次いきますね」



その他、言葉の並べ替えも有効です。
その練習です。

Put the Nihongo pieces into the right order.
(言葉を正しい順番に並べてください)

①  
English order
Although my wife and I eat sushi, we do not like sea urchin very much so we said so to our party host.
 
この英語の文を、下にある言葉を使って日本語にしてください。

あまり
いった
うには
パーティーのホスト
あまり
すしは
つまと私は
そう
食べるけど
すきじゃないから

難しくて目眩がしますね。
答え:
妻と私はすしは食べるけど、うにはあまり好きじゃないから、
パーティのホストにそう言った。

もう一つ頑張ってみてください。

② reason first:理由を先に言ってください。
I do not want to go anywhere because it’s rainy, cold and I have no money.
〜し、〜し  の復習もできます。

おかね
ないから
だし

さむい
いきたくない

どこも

答え:雨だし寒いし、お金もないから、どこも行きたくない。

もう一つ。

③ Reason(both Sat/Sun worked/got tired)  
→ result (I decided to take a day off on Monday)

げつようびは
しごとをして
きめた
どようびと にちようびの
つかれたから
りょうほう
やすみをとると

答え:土曜日と日曜日の両方仕事をして疲れたから、
月曜日は休みを取ると決めた。

これが楽にできるようになった人は、英語の単語だけを与えて、
それを見ながら、好きなように話してもらいます。
それをディクテーションします。

The moment
opened the window
the bat

だいたい、

窓を開けたとき、こうもりが中に入りました。

というようなことを皆さん言いますので、ここですかさず「たら」の復習 ができますし、入ってくる・入っていく・の使い方を練習できたりします。
ヒント0で自由に話してもらうとつっこみ・・ではなくて、
お互いに気付きがあり、復習のためのよい叩き台となります。

フリースタイルでどんどん話して行くと、
マスターしたつもりの事が、結構ふらふらしていたことに気がつきますので、
鋼のメンタルの人には有効です。

手を変え品を変え、頭から湯気が出るほど練習してもらいます。
ローマは1日にしてならずなので、授業料の元を取るつもりで、揉まれにいらしてください。

熱く燃えるレッスンは早く終わります。

「はい、じゃ終わりますね」
「え、もう時間・・」
「でしょう?  楽しい時間は早く終わってしまいますね」
「そうですね〜」

と、生徒に言わしめることができたら、まあまあ成功かな?



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ガラパゴス諸島から来た日本語教師 tamadoca
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