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エッセイ150. おうちでロスト・イン・トランスレーション(10)語順違い地獄
私はせっかちで、バタバタしていることが多く、夫は普通の人よりずっとのんびりです。
でもその夫に、「せっかちだなぁ」と言いたくなることがよくあります。
それは英語で喋っているときで、なぜかというと、私が話し始めると
夫がすぐに遮る、または、まだ質問していないのに、予測変換のようにして、
つんのめって返事をする、ということがあるからです。
極端な例ですが、
昨日のことなんだけど・・・
昨日がどうかした?
という感じの「すかさず」感が、よくあるのです。
これは他の人に訊いたことがないので、うちの夫婦の組み合わせかもしれないのですが、結婚してはじめの頃に、すぐにこれに気がつきました。
実は生徒の中にもいます。レベルは問いません。
なんだか、突撃してくるタイプの人がいるんです。
ある人からは、
長い文が苦手なので、ゆっくり話していただけますか。
とリクエストをもらっています。
そうするとこちらもこういう話し方になります。
昨日〜・・・・・お天気が 〜 よかった ので〜・・久しぶりに 〜〜
いかんいかん。
これは、ティーチャートークと言われる、あまりよくない話し方なのですが、
そうやって間延びした話し方をしないと、途中でリタイアになってしまうそうなので、ある程度仕方なく、こういう話し方になります。
で、この人と話していますと、夫と全く同じような感じで、
こっちが話し出した途端に、遮るような感じで話し出すことがあります。
「昨日、ひさしぶりに ・・」
ーーおお! どうしましたか? 久しぶりに何があったのですか?
ああいや、いまから話しますので、聞いていてくださいね。
昨日 ひさしぶりに お天気が
ーーおお! お天気がどうしましたか?
はい、今から話しますので、少々お待ちを。
私はこの二人に対して、ずっと前に、すでにこの件について話して、
お互いに確認してわかったことがあります。
それは、英語と日本語の語順の違いによって、日本人(この場合は私)が、
1)長く話していながら、何も言っていないように聞こえる。
2)すでに、大事なことを話し終えたように聞こえるので(これが不思議)、
プチ・パニックになって、何か言いたくなってしまう。
ということなのだそうです。
面白いでしょう?
この人たちは、別に慌てているわけではないし、
性格ものんびりしているのですが、日本語を聞くときだけ、
なんだか前野メリーさんになってしまうのです。
日本語は、話者の一番言いたいことが、一番最後に来るので、
それまで待っていないといけない、ということが宿命的にあります。
しかし日本語は彼らにとって難しいので、
辛抱して聞いているうちに、最初の方に聞いたことを忘れてしまう
スノーボールを振った後のように、頭の中にいろんなものが舞い踊り、
よくわからなくなってしまう(T . T)
・・・のだそうです。
これには、私も賛成します。
私たち日本人は、例えば、行くか行かないかということを話そうとして、
外国語の語順のように、
行けません。なぜならば・・・
と、言いません。
それを言ったら、身も蓋もないように感じるか、相手への気遣いがなく、
自分の言いたいことを、言いたいように言っているように、聞こえませんか?
ですので普通は、大抵の人は、
「私は、行きたくはあるけれど、これこれの理由があり、またこのような事情があるので、残念ながら、行けません。」
というふうに、理由などを先に述べてから、結論を言っていますよね。
例)
行きたいんですけどね、私がまだコロナの2回目を打っていないのと、
◯◯さんのところに ワクチンの打てない赤ちゃんがいることを考えると、
大丈夫だとは思うのですが、ちょっと怖いので、今回は残念ですが、
遠慮します。
もちろん、「今から言いにくいことを言いますよ〜」というサインで、
ああ〜、あれね。明日ね。う〜ん。実はね・・・
というふうに前振りをする人も多いです。
それにしても、言いにくいことは、つい長くなるのは確かですし、
言い訳がましくなっていくのも本当ではありますが、
そうでなくても、このぐらいの長さは、日本語では普通に話すと思うのです。
ところがそれを聞く外国人、つまり、「結論を先に言う言語を使う人」には、
・この人は何を言い出し、何を言っていて、
これから何を言おうとしているのだろうか。
・この人はなにか、言いにくいことがあって、結論を先に引き伸ばしているのだろうか。
・この人は何か、やましいところがあって、言い訳をし始めているのだろうか。
と感じることがあって、なんとなく不穏な気持ちになるのだそうです。
それを夫に言われたとき、私は、
「別にやましくないです! 私は、ただ話が長いだけです!」
と、開き直って、怒っていました。
これは、私たち日本人が、英語で話さなければならない時に、
相手が whichとか、whoseとか thatなどを多用して、
それに続く長い部分を話し始めると、
あわわわ・・😰
となりがちなのと同じですね。
つまり、お互い様のようです。
私が英語を聞き、話している間には、日本語に変換しないでやっているので、
そこまで辛くはないのですが、やっぱりそういうことはあります。
この前、くだらないことで夫と意見が違った時に、
あなたはなんですぐ遮るわけ?
vs
君は何を言いたいわけ?話は簡潔に!
という、繰り返された不毛なやりとりがありました。
私は言いました。
あっ、わかった。あなたは今でも、
私がが喋り始めて最初の方に言ったことを 素早くキャッチして、
そのことについて私が言っているのかと思ったのに、
私が長々と、くるくると、いろんなことを言うから、いらっとしてるでしょう!
その通りだそうです。
一言で言って、私の話し方は、要領を得ず、掴みどころがないのそうです。
多くの日本人と外国人に調査をしたら、絶対、
・日本人は話が長い、と思っている外国人
と、
・外国人はすぐこっちの話に突撃してくる、遮る、と思っている日本人
が、同じぐらいの割合でいるような気がします。
そんな私は今日も夫に、
僕は欲しない・それを見ることを・トゥナイト
I do not want to watch it tonight.
と言われ、一生懸命自分の自然を押し殺して、英語で、
私は欲する・それを見ることを・なぜならばあなたは
I want to watch it, because you
ひどい人である・すでにそれを見た・勝手に・私に告げずに。
are horrible to have watched it already without telling me.
というように話しているのでした。
わ〜、私頑張ってるんだ・・・。
これもまた、ご家庭内ロスト・イン・トランスレーション。
👹🔥 語順違い地獄、と呼ばせていただこうと思います。🔥👹
そして我が家では夫と妻の両方が、
「この結婚が保っているのは、ボクの・アタシの 、おかげ」
と思っているのは間違いないと思います。
(実は私のおかげです)
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