エッセイ385.アニメ「古の王子と3つの花」
7月21日の封切りを楽しみにしていた、「古の王子と3つの花」を見てきました。
ミッシェル・オスロ監督のアニメーションです。
ずっと以前にオスロの「キリクと魔女」というアニメを見て、とても印象深かったのですが、それ以上を追うこともなく、忘れていました。
恵比寿ガーデンシネマ、日曜日の最終の回でがら空きでした。
この先は、これからご覧になるかたは、読まない方がいいと思います。
映画は、博物館か工事現場か、と思うような場所で、女の人が周りに集まった人たちが口々に言う、「こんなお話をしてくれ」というのに応える形で始まります。「スーダンがいい」「エジプトのお話を」、その他たくさんのリクエストがありますので、「とても一つのお話にできないよね」というような流れとなり、女の人が、「だいじょうぶ、3つのお話に分けますから」と言います。映画を見ている観客には、これから3つのオムニバスを見るのだなとわかる仕掛けになっています。
三つのお話は、とても素朴な恋人たちの話です。
悪い王様、宰相、領主がいて、二人の仲を邪魔したり、勇敢な王子を試したり。王子たちは恋する人と一緒になるため、知恵を絞ります。
わかりやすく、安心して見ていられるのがとても楽しいです。
一つ目のお話は、エジプトが舞台です。
ファラオ(王)でなければ王女に求婚できないと言われ、
クシュ国の王子が、上エジプト・下エジプトと遠征します。
殺戮による征服ではなく、神殿を大事にして修理をしたり、
知恵を以て敵の軍を平げたりしていきます。
エジプトの壁画のとおり、体は正面向きで、顔は横向きの人物です。
神様たちが一人ずつ、若者に加護を与える約束をして空に昇っていくときの雄大さ。
ぜひ、映画館で見たい映画だと思いました。
二つ目は、18世紀のフランスです。
人物は、藤城清治を思わせるような、とても繊細な影絵です。
少し動く目玉にしか表情を読むことはできません。黒一色の人物たちの背景は、透き通るガラスだったり、強く弱く射す、いろいろな灯りだったりします。
お話は、白雪姫とロビンフッドを合わせたような感じ。そして、ボーイソプラノで歌われる歌が、とても綺麗です。
三つ目はモロッコのお話。
お城から出られないお姫様を、漂泊の王子が知恵を頼りに救い出します。
金とそのほかの鮮やかな色で、目が覚めるような場面の連続です。このお話も、一切の暴力もなく、のんびりとした時間が流れていきます。人物が、三つのお話の中では一番リアルで可愛らしく、感情移入ができます。
三話で1時間28分の上映時間だそうです。
何の心配もなく、おとぎ話をうっとり聞いていた子供のころに戻れるアニメだと思いました。
お話を追うのと、綺麗な色彩に目が回って、あっという間に見終わってしまいました。
大きなスクリーンで見られるうちに、あと一度 見にいくつもりでいます。
お勧めです!