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日本語教師日記148. 急に駆け出して行く日本語教師と生徒(2)餃子の包み方

私は長い間、餃子のお皿への移し方を勘違いしていました。
食べるたび・・ではないですが、なんとなく、お店で食べる餃子と違うと感じていたのですが、原因がわかりました。10年ぐらい前まで、私は一生懸命に餃子をこんがり綺麗に焼いて、わざわざ、フライ返しを使って丁寧にひっくり返してお皿に移していました。だから、こんがり焼けた面は下になって見えなかったのです。

すごい間違いかと思って調べてみたら、そういうやりかたをする地方もあるそうですが、やはり、焼き色のついた方を上にする人が大半だそうですし、その方がおいしそうですよね。

私の実家の近くに亀戸というところがあります。
亀戸天神に藤を見に行った日は必ず、船橋屋で葛餅を買い、帰りに「亀戸餃子」という、命名がそのまんまな餃子屋さんで食べて帰りました。
そのお店で、長い「餃子ひっくり返し器」を操って焼きあがった餃子をガシガシ剥がしているのを見ていた記憶があります。
もともと「フライ返し=ひっくり返すもの」と思い込んでいるので、

(いいなぁ、あんな素敵な餃子ひっくり返し器で餃子をひっくり返したいなあ)

と思って帰り、餃子は必ずひっくり返すようになったのではないかと思います。

餃子しかない「亀戸餃子」。
一人必ず2皿以上注文の掟がありますが、楽勝です。
小さいしおいしいし、安いからです。


こんがり問題は、ある日天啓のように自分の勘違いに気づき、解決しましたが、もう一つ私が困っていたのは、餃子がうまく包めない、ひだが三つしか作れず、タネを少ししか入れることができないということでした。

Youtubeなどで検索しても、手際の良いみなさんは、

「ほら、ね? こうすれば誰でも綺麗に早く包めるでしょう?」

などと言いながら、手早く包んでしまわれるので、よくわからないのでした。

それで私の餃子は

タネの少ない=食べる皮の総量が多い

こういうものになるのでした。

さて、昨日のことですが、ある生徒さんが、餃子を包み終わらずにレッスン時間が来てしまいましたとおっしゃいます。

「聞けます、話せますから、包んでいていいですか?」
「どうぞどうぞ。最後まで包んでください」

となったのですが、ふと思いついて、

「Mさん、どうやったらそうやって、ふっくらとタネをたくさん包んで、
ひだも そんなにたくさんできるんですか?」

と訊いてみました。
残念なことに本日これで、私の包み方がこれまた、大きく勘違いした包み方だったことがわかりました。

Mさんの包んで見せてくれるのを目の当たりにして、
「うわぁ・・そうやるんだ。
Mさん、ちょ、ちょっと待っていてくださいね」

私はまたガバと立ち上がり、椅子を蹴立てて台所へ駆けて行き、冷凍庫から自分の餃子を引っ掴んで駆け戻り、Mさんに見せました。(上の写真のやつね)

「ね? 中身がこれじゃ、全然少ないでしょう?」
「全然少ないですね。皮をいっぱい食べていますね」

がっかりです・・

講義は続きます。

「みんなは、こういうふうに、タネをボール状にして皮に載せますね」
「はい、私はそうしています」
「ダメです。このように広げてください。ふち、ぎりぎりに」
「えっ、そうなんだ・・・」
「ぐるりと水をつけます」
「あっ、向こう側の半分しかつけていませんでした」
「だめです。そして、こうやって、こうやって、こう・・・」
「あっ、ちょっと早いです、もっと遅くお願いします」

・・・たちまち日本語レッスンそっちのけに。

「右手の人差し指は、向こう側になった皮の、その外側にあるの?」
「先生は右の手を使う人ですか?」
「右利きね、みぎきき。そうです。私は右利きです」
(そっちのけですが、新出語はすかさず導入しています)

「みぎ・きき、の人は、右の指は外です。
そして、左の指は中です」
「あっ、そういうことか。両手なんだ・・・しまったぁ・・・」
「ちょっと、上から私の手を撮って? 先生に見せるから」
そこにいた恋人の方にも協力を要請してくれました。

私は今まで、向こう側にある皮を左手でつまみ、右手でひとつ、ふたつ、みっつ、と先にひだを作って、それからもたもたと、ひだを作らなかった方へ一生懸命押し付けていました。
なんと効率の悪いことでしょうか。

「ちょ、ちょっと待って。練習します」

私はたまたまそこにあった、キャベツの切り口の模様のメモ帳の一枚をはぎとり、練習してみました。最初jはこう。難しいですね。

つまり、今まで私の左手は、つまむだけで休んでいました。その人差し指を中に入れ、ヒダをつくったら、手前にある右手の親指と、あっち側にある右手の人差し指で、ぎゅうっと押し合って皮同士をくっつけるのが正しいやり方なのでした。
書いていたらまたわからなくなってきましたけれど・・。

それから、生徒さんに的確な指導をいただき、最後にはここまでできるようになりました。


紙だし、くっつきませんからガタガタして見えますが、これを本当の皮でやったらきっと、今までよりずっとタネも入ることでしょう。

「先生も皮を作りますか」
「いや、買います。皮までは面倒臭いです」
「先生、作ったら見せてください」
「はい、近々作ります」

生徒さんから餃子の宿題をもらってしまいました。

そのほかに、チキンスープを作り、タネに混ぜたら、すごく美味しくできたと言っていらしたので、これもやってみようと思います。
餃子はあまり美味しく作れないので、今、やる気満々です。

Mさんありがとう。またいろいろ教えてくださいね。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。