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日本語教師日記121. なんとお呼びすれば?

初めての生徒、ちゃんと言えば生徒候補者と、
トライアルレッスンの日を迎え、スカイプなりzoomなりで繋がった瞬間です。
これから、もし気に入ってもらえれば、レギュラーにレッスンが始まるということです。

で、わざとではないのですがこんなとき、私はつい、

ははは!  こんにちは!
◯◯さん!

と、笑いながら言ってしまうことがあります。
というか、考えてみたらほとんどいつも、そうです。
それは、テクノロジーの発達のおかげで、10年ちょっと前なら会うことなど叶わなかった人たちと、このように会える奇跡がいつも嬉しいですので、
ヨロコビのあははは!  
であることは確かです。

と同時に、私は鉄面皮のようですが、意外に内弁慶でナーバスなので、
この、初めてのコンタクトが気恥ずかしくて、
つい笑ってしまうのだと、最近わかりました。
緊張のあまりの、わははは! なのでした。

で・・・

ははは、こんにちは!
◯◯さん?

ーーはい。(または、Yes!)

tamadocaです。はじめまして。
聞こえていますか?  
画像は?

と、デモ・レッスンが始まります。

一旦始まれば、普段の図々しい私が復活して、どんどん自分のペースでデモ・レッスンを行うわけですが、このときに絶対訊かれると言ってもいいのが、

先生をなんとお呼びすればいいですか?

というものですね。

映画なんかでよく見るのは、

John:  How can I call you ?
Mary: Mary.
John: OK, Mary.  Call me John.
Mary: OK, John.

いきなりのファーストネームですが、私はファーストネームで呼ばれるのは恥ずかしいので、3通りの「呼ばれたい名前」があります。

せんせい・tamadoca先生・tamadocaさん

そのどれでもいいですよ。

ついでに、日本では「あなた・彼・彼女」はあまり使わないこと、
ファーストネームはかなり親しくなってから、
会社ではまあ、使わない方が無難・・

など、相手の現状を見ながら解説を加えます。

つらつら考えてみるに、私は「ファースト・ネーム+先生」と呼ばれるのが、一番落ち着きがよくて好きです。

さんづけだと、「授業ではどうなのよ」とやはり感じるからですね。
いくらふざけてばかりでも、私、教える側の人間なので・・。

私からは、生徒のファーストネーム+さん  です。

ところで「さん」を私たちは、Mr./ Mrs./Miss/Ms. と思っていますが、
ファーストネームにも普通に使いますよね。
恵美子さん、裕二さんなどと。
その流れで、サイモンさん、リンさんなどと、これも普通です。

ところが英語では「ファーストネーム・さん」は、おかしいのだそうです。
だから私は生徒に違和感を感じさせながら、そう呼んでいるわけで、
考えたらちょっと申し訳ないですね。


今日は面白いことがありました。

生徒が、クリスチャンさんというのですが、

「私は日本に行ったら、どう呼ばれますか?」

と訊きますので、答えました。

「そうですね、クリスチャンさん、クリスチャンくん、かな?
クリス、も使ってる?」

ーーはい、ときどき。

「そうなると、クリスさん、クリスちゃん、 あれ?」

ーー先生も気が付きましたか?
クリス・ちゃん、と言ってくれても、
クリスチャン、って呼ばれているようになりますよね。

「本当ですね」

ーーあと、クリスチャンちゃん、って言われそうです。

「えっ、あるか! あるかな?」

ーーねっ!?


「クリスチャンさん、ねっ!? もいいですけど、
た行まで全部、覚えてきましたか?」

ーーあっ、すいません、覚えてません。

「たくもう〜。テストしますよっ!」



書いていて思い出しました。

私の友人で、Jonathan、ジョナサンという人がいました。

私はこのときは、呼び捨てで「ジョナサン」と言っていたのですが、
夫とこの人のことを話すときにどうも夫が、

「その君の生徒の・・ジョーナ、元気にしてる?」
とか、
「ジョーナにはそのことを言った?」
というふうに、妙に短縮して呼ぶのです。

あるとき、それが気になったので、

「夫はなんで、ジョナサンのことを、ジョーナと呼ぶの?」

と訊いてみたら、

「それが彼の名前だから」

って言うのですね。

「ジョーナじゃないよ? ジョナサンよ?」

と言ったら、

「君言ってるじゃん、ジョナ・さん、て。
・・・・・あ〜、もしかしてその人の名前、Jonathan? 」

ーーそうよ?    あっ、私がジョナ・さん、てさん付けしてると思ってたの?

「そう」

ーーだ〜っ、なんだそれは!


あとですね。

富士山のことをいまだに「フジヤマ」と言っている人に会います。
もちろん、すぐに指摘します。


「フジヤマは古いですぞ!
戦後すぐ、占領軍で駐留することになった米国軍属の人が言っていそう。
下手な和柄のアロハシャツを思い出します。
富士山、ふじさん、と言ってください」

ーーわかりました! フジさん。

「あっほら!
 今あなたは 「富士」に、「さん」をつけていると思っているでしょう!」

ー違うんですか?

「違いますよ。『さんー違い』です。
「山」の漢字の音読みが「さん」、訓読みが「やま」です。
別に、富士の山を尊敬して、『さんづけ』しているんじゃないですよ」

ーーそうなんだ〜。

「さん付け、だと思ってたでしょう」

ーーはい、思っていました!


んもう、何度同じ会話を外国人と交わしたことでしょうか。
飽きずに毎回訂正している私も、しつっこい性格です。

そういえば、午後に始まる授業、「ネイサンさん」なんですけど、
ひょっとして本人は私から、
「ねぇ、さんさん」って呼ばれてる感じがしていないかしら。
もう8年も教えてるけど、訊いてきます。

日本語には thー音がないための、混乱のお話で、今日は終わりますね。






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