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日本語教師日記202.僕の先生

今日はとりとめもない話になります、お許しください。

私は、日本語教育能力検定試験がなかった頃に日本語教師になりました。

当時も日本語学校常勤の人は主に事務の人で、教師の方は時間給で不定期勤務。
不安定なことこの上なく、日本語教師は稀に退職後の男性と、
主婦の方か、独身の若い目の女性が多かったような記憶があります。

私はわりと若い年齢で日本語教師になったのと、最初はフルタイムの他の仕事もやっていたため、
早朝とアフターファイブに、企業や大使館への派遣が多かったです。
生徒たちの年齢は自分と同じぐらいから、定年近い人まで幅広かったです。
だから結構、甘やかされたというか、いろいろ連れて行ってもらったりしました。
大使館でのコンサートとか、なかなか入りにくいようなところに行けて、良い経験となりました。

あれから幾星霜、私より年上の生徒さんは今や数えるほどしかいません。
もうずっと、若い頃に生徒たちにさんざん奢ってもらったため、今は恩返しで、
生徒と食事などをすることがあると、
「いいからいいから。私ぐらいになったら、若い人たちにご馳走してあげて」
なんてことを、言うようになってしまいました。
ついに、自分がそれを言う側になってしまったわけです。

この前爆笑してしまった、Quora Japan という、国際的「知恵袋」みたいなサイトで読んだもの。
きっと転載してはいけないと思うので、思い出せるだけ書いてみますね。

問い:自分も年取ったなぁと思うエピソードを聞かせてください。

答え:職業柄いろいろな企業に行くのですが、ある出版社に行った時のこと。
そこはカジュアルな服装がOKなところだったのですが、みていると子供がいる。
今時のだぶっとしたトレーナーに、デニムのショーパン、白ソックスに厚底のスニーカー。
あれ? 社会科見学の子供かな? と思ってから気づきました。
「この人たち、新入社員だ」と。
ちょっと前までは、若い人を見ても「息子ぐらいの・・」という捉え方だったが、
今や、孫と思ってしまう。
「俺、お年寄りになっちゃったんだぁ〜!」

この最後の一言で大笑いしましたが、笑っている場合ではないことに気づきました。

さて生徒と話していて、二つ驚かれることがありますが、一つ目はまず私の年齢です。

ビギナーだと、レッスン1ぐらいに、最短の名詞文として、
自己紹介も早くできるようになったほうがいいですから、

私は(・・・・)です。
S は N です。

から入りますね。
カッコの中に他には、名前・国籍・仕事・年齢を入れていきます。

国籍は、国の名前に「じん」をつければいいので、最初は簡単。

次に仕事ですが、エンジニアとか、デベロッパーとか、モデルとか、ピアニストとか、
カタカナの職業に就いている人は、簡単で良いですね。
そうでなくても、あり得るのは「会社員」「先生」「学生」「留学生」
ぐらいですし、自分についての言葉だけを覚えて貰えばよいのでこれも楽です。

さて年齢です。
レッスン1では1〜10は必ずその場で覚えてもらっています。
11 は、日本語では、10 と 言ってから、1、と言うわけですから、まあ、できます。
すると、名前・出身国・仕事・年齢は、レッスン1で言えるようになってしまう。
好調な出だしですね。
そして、当然ながら「先生は何歳ですか?」と、聞かれます。

「ひみつです」

と言う一言を教えることもできますが、
まあ人の年を聞いておいて言わないのも潔くないですので、言います。

すると、驚かれます。
まあ、画面越しなので、シワシミ、肌の乾燥、くすみなどは
対面よりは、見えにくいこともあります。

礼儀正しい人は「えー!」は言いませんが、子供はすごく驚きます。
「えええええーーーっ!OMG!」などと言います。

大人だと「おお、若いですね」などと気が利いたことも、言ってくれます。

二つ目ですが、背が低いのも驚かれますね。

ここしばらく円安でもあるし、日本が素敵ということになったそうで、
私の生徒も、とにかくみなさん、来ます。
毎年のように来る人もたくさんいます。
名古屋まで会いに来てくれる人も結構いましたが、今は場所的に会いやすいので、
出張や旅行で来日した生徒とよく会います。

で、初対面で会うと、私の背が小さいのことに ものすごくびっくりされるわけです。
高いスツールに座っていて、生徒が来たので滑り降りると、
生徒が、
「うわっ、先生って小さかったんですね」
と言ったりします。

170cmぐらいの人から、
「私と同じぐらいかとばかり思っていました!」
と言われたこともあります。
バカを言っては困ります。

そういうのが続いたので、最近は背の話になると、
「私は昔は154cmだったけど、今は150cmにまで縮みました」
と、ちゃんと言うようにしています。
びっくりされます。

それを聞いた15歳男子が、ネット検索で、150cmをフィートに換算してくれて、

「僕より20cmぐらい低いです」

と言いました。

別の16歳男子は言いました。

「先生は、僕の人生で会った一番背の低い人より、まだ低いです」

「アメリカ人でもいるんだ、私ぐらいに小さい人が」
と言ったら、
「その子は小学校3年生です」
と言いやがりました。

オンラインでは、お互いに上半身しか見えません。
流石に下はパジャマだった、ということはありませんが、
出かけていくわけではありませんので、お互いにかなりカジュアルです。

「今日は半袖ですね」
「先生も半袖ですね、暑いですか?」
「暑いですよ。ちょっと立ってTシャツ見せてください」
「はいどうぞ」

夏は、アニメの柄のTシャツを来ている人がとても多いです。
会うたびに、違う帽子をかぶってくれている人もいます。

週に一回、人によっては何年も、同じ私の顔が出てきて、多少は飽きるかもしれませんが、
お友達には私のことを話すことはあるのでしょうか。
僕の先生はすごくちっちゃくてなんて。

5年前のレッスン記録を見ると、結構残っている人、
名前も顔も覚えていない人(すぐやめてしまったため)
・・などなどいろいろいますが、日本語という、厄介で難しくて面白いものを、
一緒に苦労して勉強している連れです。

私も生徒はみんな(ほとんど)可愛いですが、
生徒にとっても 楽しく喋れる相手でいたいなぁなんて、ときどき思うのでした。



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ガラパゴス諸島から来た日本語教師 tamadoca
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