エッセイ291.裏道が好きになる(2)
10月末から住むようになったここ、調布市はとても狭い道が多く、
車を運転してくれる夫はまだ緊張するということです。
私もその昔、免許を取りたての頃、
「こういうところは若葉マークの人は行ってはいけない」
というところに、そうと知らずに行き、困ったことが何度もあります。
一度は、行きには曲がれた角が、帰りには曲がれずにミニ渋滞を作ってしまい、後ろにいたミニ郵便局の車の郵便局員の人が走ってきて、代わりに曲がってくれました。
恥ずかしかったです。
友達が、
「ここ、どうみてもクランクの練習場でしょう」(しかも車幅ぎりぎり)
というような自宅前の厳しい袋小路を、
「大丈夫大丈夫。あなたなら帰れる」
というのでドアまで送ったのはいいが、帰り道に電柱に車体をこすり、車のドアのふっくらとした部分が「平ら」になってしまったこともあります。
私の運転については、免許を取ったその日から冒険に次ぐ冒険でした。
いきなり、甲州街道で荷下ろしをしているトラックだらけのところを走っていました。
死ぬかと思いました。
私の免許を取ったいきさつは、ちょうどこんな具合です。
私は最初から、
「この辺で走れれば」「ここで駐車ができれば」あなたはすごい。
と言われていた地域を走っていたのです。
もう二度とできないし、したくありません。
免許証は・・コスト高なIDカードとして活用しています。
さて、最寄り駅の一つは徒歩20分、もう一つは30分ということになっています。
雨の日以外は、たとえ駐輪場にお金を払って停めるのだとしても、自転車で行きたいものです。
そう思って1、2回バス道を走ってみたら、とても怖かったため、裏道を探してみることにしました。
昔、同じ2駅を通勤に使っていたときは、自転車かバスで2点間の最短距離を走っていました。なので、それ以外の方法を考えることがなかったのですが、考えてみたら、バス道に並行した裏道はたくさんあり、小さかった娘たちとよく歩いていたのでした。(その辺をすっぽり忘れていた)
そこで何も用事のない日に、ルート探しをしようと、自転車や徒歩で出かけてみました。
すると、あるある。
素敵な裏道がいっぱいあります。
そして、試しにここで・・と曲がってみると、ひょいと、昔馴染みの場所に出たりするのが面白かったです。
長く不在にしたときに預かってもらう郵便物を取りに行った郵便局。
「日本語教育能力検定試験」に2回落ちて😩、3度目の正直で合格した時、ワクワクしながら合格証の入った封書を受け取りに行きました。
その近くの、いつ行っても無人で、干物とワカメしか並べていないのに、
「鰻あります」「仕出しします」と張り紙のある、不思議な魚屋さん。
娘たちと一緒に通っていたピアノの先生の家。
親しかった人もだいぶ引っ越しで去り、町は残り。
無駄にまだらに覚えていることが、こっちの胸をキュンキュンと締めつけます。
老いて故郷に帰る人って、こういう感じなのかなぁ。
でも、新しい発見もあります。
ネットの地図を眺めていたら、自宅近くに大きな公園がありました。
そういえば道に迷った時、どう行ってもその木立にぶつかってしまうので、呪われているのかいと思った場所。
そこを経由で、徒歩30分の駅まで行ってみようと思い立ちました。
近所には、驚くほど、小さな赤い鳥居のあるお稲荷さんや、庚申塚があります。
また、車が曲がるときにこすっていく被害を防ぐため、黄色と黒のダンダラのポールや、塀を保護する「石」も、狭い四つ角にたくさんあります。
その感じは、かつて長女が住んでいた京都西陣と似ています。
嬉しいことに、野菜スタンドもたくさん。
無農薬で百円均一です。
小松菜と白菜と里芋を買いました。
こちらは家から歩いて1分です。毎朝見に行ってしまいます。
地図で見た公園は広くて静かで、平日昼間に一人で行くのはちょっとだけ怖いかもしれません。
とても高い木が鬱蒼としているので、別の公園かと思って近寄ったら、個人の家で、ずんずん門前まで入って行ってしまいました。
そういう大きな家がたくさんあります。
思いがけず、野川に出ました。
自転車で野川公園・武蔵野公園まで行って、BBQした時代もありましたっけ。
千と千尋の神隠しで、千尋が異世界に入り込んだ入り口のような山道もありました。
そこを抜けて住宅街を歩いて行くと、よく行ったスーパー銭湯の裏が見え、桐朋学園の門のところへ出て、こうなっているのかぁ・・と、少しわかってきました。
これは良い散歩道を見つけた。
コロナ禍とぎっくり背中で身体がなまりきっているので、これからたくさん歩こうと思いました。
道を探すのは、歩きが一番いいようです。
自転車だと、「ん?」と思っているうちに、ピューっと先まで行ってしまいます。
迷いかけているのを知らずにぐんぐん進んでしまい、戻れなくなったりもします。
このウォークに少し自信を得て、時間があるときは、もっといろいろな裏道を見つけてみたいと思いました。
裏道をどんどん好きになると思います。