日本語教師日記193.言葉を尽くした件(3)まで・までに、を 理屈っぽさ全出力で説明した件
実は私の夫は私の日本語学校時代の生徒です。グループレッスンだったのが他の生徒がどんどん減り、最後に一人になってしまいました。
当時からなんというのか、理屈っぽくて、私もとても理屈っぽいので、よく衝突しています。
けれども夫は、理屈で凹ませる・・じゃなくて、理屈を理解してもらうことができれば、とても素直に(コロっと)、考えを変えます。
日常は、理屈っぽさ炸裂の喧嘩祭りが多いのですが、意外に仲がよいです。
前回の続きですが、
「まで」=until, それまでそれをする
と
「までに」= その期限までにそれをする
の違いを説明されても、どうしてもしっくり来ないと夫が言うのでした。
生徒がこういうタイプだと、10も20も選択や穴埋め問題を出して、
やがてわかるようなってもらえますが、それはさすがにこの度は面倒臭い。
それで、理屈で外堀を埋めつつ、
これを読めばさすがにわかるでしょう
という例文を、できるだけたくさん示してみることにしました。
弁当を包んだり、ゴミ袋を手渡しながら、いろいろ言ってみたのですが、
朝の忙しい時にそれは無理でした。
首を捻りながら、
「同じでしょう?」
「同じ意味で使えますよね?」
「会社でも使っていて、支障ないけどなぁ」
と言いつつ、燃えるゴミを片手に家を出て出勤してしまったので、
電車の中で読むようにと、ドキュメントを送りました。
しつこいのか。親切なのか。
文中、色なども変えて、刺さりやすいようにと工夫してみました。
まず、「まで」と「までには」二つの別々の表現で、入れ替えはできませんと最初に断っておいてから、本当は日本語だけでわかってほしいのですが、この意味はこの文の中のこれですよ!と強調すべく、
二つの文の該当部分を色付けしました。
以下、継ぎ足し継ぎ足ししたスクショがゴタゴタあって
読みにくくて申し訳ありませんが・・・
ここでは、「やっているのは何時まで」かを訊いているのであって、
「何時までに」何かしなくちゃいけないかを訊いているのではありません。
・・・というのがわかったのではと思います。
続きます。
一つの文の中に、意味の違う言葉を入れ込みます。
レッスンでもよくやる手です。
↓
これでわかるのではないかなと期待しました。
最後ですが、読み返すと変な英語を書いてしまっていて、
自分でも何を言いたいのかわからない部分があって恥ずかしいです。
お許しいただくとして、こんなことを書きました。
「意味からして、『までに』は、ある時点「までに」それをしなければいけないということから、警告というか、それを仕損なってはいけませんよという感じを受けます。
それに対して、「までは」とても中立的です。
単に、ある時点「まで」それをしてください、と言いたいのです。
この文を読んで、はっきりと納得できたそうで、
その晩は二人ですっきりして、おいしくお酒を飲むことができました。
日本語教師の方ならよく経験するように、多くの生徒が、
その違いはなんですか、
同じではありませんか、
これさえ知っていれば絶対間違わないという違いを教えてください。
と言ってきます。
よく出てくるのが、
「なら・たら・ば・と」の違いを今すぐ教えてください」
というものです。
私は、似て非なる二つ、三つの言葉ではあっても、
違ったratioで大きなオーバーラップがあることは断った上で、
意味的に重ならないもの、ある場合は使えないもの
というのを、まず表にして見てもらいます。
見たからと言って、使い分けが即、できるようになるわけではないのですが、
これは気持ちが落ち着くようです。
学習者はいつも日本人の友達から、
「行けばと、行ったら、行くなら、行くとの違い?・・・・ええと、同じだよ」
と言われているので、もやもやが溜まっているからですね。
表を見て、一度落ち着いてもらい、
それからできるだけ多くの例文を見せるのは なかなか効果があるようです。
ですので、いつも頭の中からすぐ取り出せるように、
紛らわしい言葉の例文のミニマル・ペアのストックは
できるだけたくさんしまっておくようにしています。
教師の言葉は極力少なく、学習者の発話を促すのが良いことですが、
ときには言葉を尽くすことも必要になってきます。
そういうお話でした。