エッセイ522.お風呂場のお話(2)冷や汗をかきました
続きです。
上の写真は、押しても両端はフレームについていて、真ん中だけ数センチ開くだけになったお風呂場のドアです。
お風呂場の中で風呂蓋が倒れて、床にぴたりと2枚重なった状態にあり、押して内側に開くドアがそれにつっかえて、数センチしか開かなくなったというお話でした。
開かなくなるところまでドアを押してみても、何か棒状の物を突っ込むほどの隙間は開きません。
隙間があったとしても、扉を押しても中央数センチぐらいしか向こうへ引っ込まないということは、浴室の狭さから考えても、蓋の幅が、ドアフレームから風呂桶までの幅にほぼいっぱいなようで、何をしても開かないのはよくわかりました。
まず第一に考えたのは、樹脂製の不透明部分をどうにかして破り、
そこから手を入れて、床にぴったり倒れている蓋を持ち上げ、
風呂桶側に立ち上がらせ、そこですかさずドアを押して開ける、
ということでしたが、泥棒ではないので、事件でよくいう、
「バールのようなもの」で扉樹脂部分を叩き破ることはできない。
それができたとして、ガラスよりは破片の飛び散り具合はマイルドであろうけれど、そのあと、重いスチール部分まで含めて、1枚のドアを買うことになったらどうしよう。
実はコストが一番心配!
二軒前の借家を退去するとき、私が松葉杖でつけてしまったいくつもの階段の傷も、ヘアアイロンでつけてしまった床の変色もお咎めなしでしたが、
風呂のドアのひびだけは、すごくお金がかかったそうです。
風呂のドアというのは、意外な伏兵だったのでした。
この家は「現状受け渡し」なため、玄関ドアの4センチぐらいにあった傷を後日修理したのですが、それが万単位のかかりになったため、私はドア全般の修理は怖くなってしまったのです。
さて、風呂場のドアの四周をよくみると、各所にネジの頭部が見えます。
ネジ好きの私としては、これはネジを外せばどうにかなるかもしれないと、一瞬考えました。でも、どうみてもフレームにぴたりとはまっているドアですから、ネジを外したとしても、どうにもならない気がしました。
ただの、
「ネジが全部外れたフレームにくっついた開かないドア」
になるだけでしょう。
夫にLINEで事情を話しました。
「それで、ドアの樹脂部分を壊すか、
家の外から窓をどうにかしてお風呂の中に入るか、
Uさんに連絡するだと思うので、Uさんの連絡先教えて」
と言ったところ、夫は、自分が帰るまで待ってもらいたいというのでした。
私がUさんの連絡先を知っていたら、夫に言うよりも先にUさんにLINEしていたでしょうが、わかりませんでしたので、とにかく、夫と娘の侵入事件を思い出し、自分もできるかもしれないと思ってお風呂場の外に行ってみました。
一番外側にお風呂場の網戸があり、その次にに窓があります。
こちらがわから目視で見ても、ネジの頭は見つかりません。
セキュリティばっちりで安心しましたが、今日ばかりはネジの頭が欲しかった。
すごすごと家の中に入ります。
脱衣場に戻ってしげしげとドアを眺めてみますと、何やらステッカーがはってあるのに気がつきました。
ドアの真ん中にくっついています。
題して、「非常時のドアの外し方」
これを夫に見せて
「やってみる」
と言ったところ、
「やるのはいいんだけど、君は中間の桟を片手で掴んで上の部品を押し下げるのはできないでしょう。踏み台に乗ってやるでしょう?
左右の部品を下げた状態で、ドアと一緒にお風呂場側に落ちながら倒れたら・・」
ーーふむふむ・・・
「風呂桶とかが壊れるでしょう!」
・・・風呂桶の心配をしてくれました。
でもまあ、このままでは気持ちも落ち着きませんので、低い踏み台に乗って、まず左側、説明では「戸先障子」というそうですが、そちらの側のつまみを下げ、
「ドアを押して、枠から外します」
をやってみました。
奥に向かって、向こう側へ押すのか、下側に押すのか、その、外れるような押し方が明記してありませんが、しかたない、次。
次は
「吊り元障子上部のつまみも同様に押して下げ、ドアを押して軸を上枠の軸受から外します」
とあるのを、やってみました。
左のつまみをあらためて押し下げ、右も押し下げ、踏み台から降りて、両手でドア中部にある桟をしっかりつかんで下に向かって押してみますと、バネのような抵抗感と共に、ドアの上端が下端の枠の方に少し引っ込み、ドア上部だけは、上の枠から外れました。
上が自由になったそのドアを、そろりそろりと風呂場側に押して、さらにもっと押して、くの字に半分折りにし、それから全体を抱えて持ち上げて、そろりそろりと下の枠からもドアを外し、枠から自由になったドアを、脱衣場の中に運び入れました。
外側から私を見た人がいたら、さぞかしハラハラするでしょう。
・・・・開いた・・・・
キング・オブ営業マンUさんに連絡しないで済んだ。
バールのようなものでドアのプラスチック部を叩き壊さないで済んだ。
家の外から怪しく、窓とスチール格子を外して(外せないのだけれど)踏み台に載って自分の家の中に侵入しないで済んだ。
全て、済んだ済んだ、よかった・・・ということになりました。
開いて、傍へ立てかけたドアと、やっぱり風呂床いっぱいいっぱいに二枚重ねで倒れていた風呂蓋です。
いろいろな原因で、ドアを枠から外さないといけないことも世の中にはあるのでしょう。
ドアの開け方がついていたよかった・・・
元の住人の方が、このステッカーを剥がさないてくれていてよかった。
風呂場の内側には、中からかけるロックもありますが、私はそんな恐ろしいものを使うことはできません。
封じ込めはいろいろな人がやっていて、知り合いの中には、自宅トイレから出られなくなった人、私の母も認知症が重度になってからトイレから出られませんでしたし、車の中に一人残ってしまった赤ちゃんにも会いましたし、2022年には私も実家の一室からしばらく出られなくなったことがあります。
それで一種の封じ込め恐怖症になり、今では家に一人でいるときは、いろんなドアは紙一枚ぐらいは開けて中に入ります。
帰宅した夫は、ひょいとドアを持ち上げて、たちまちにはめなおしました。
なんか来世は、背が高くて腕力のある男性に生まれ変わりたいと思いました。
開かなくて入れなかったのは今回のお風呂場のドアですが、開かなくて自分が外に出られなかった渋い体験もご参考までにつけておきますね。
え、要らない?
まあ、そう言わず。
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