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日本語教師日記131.インドの師匠(3)

日本とインドというのは、意外につながりがありまして、例えば、インド独立の活動家、ボースは、英国から追われる身になって日本に亡命、かの新宿中村屋に匿われて、その娘の俊子と結婚、日本初の純印度式カリーを広めた人です。

と、偉そうに蘊蓄うんちくを傾けましたが、それは、今改めて、これを読んできたからです、すみません。

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でも、ポーラテレビ小説、「パンとあこがれ」で、登場人物の名前は全て仮名になっていますけれど、ちゃんとボースさん、出てきました。
なんと、河原崎長一郎さんが、顔を薄黒くメイクして、純印度式・インド人の方の役をやっていました。昔は乱暴です。

というわけで、だから私の中では、(ドラマは全部忘れていますけれども)、「日本のインドカレーは、中村屋に隠れてたインドの人が紹介したらしい」ということだけ、入っています。
あと、中村屋の「月餅」の中では、「木の実餡」のものが、一番好きです、どうでもいいですが。(それと、新宿とつく、というだけで、私はしょっちゅう、新宿中村屋と、高野フルーツパーラーを混同してしまいます。私だけ?)

話がばらけてきたので戻しますが、長年日本語教師をやっていると、インドの方を教えることもたまにありまして、ざっくりとしたイメージで言いますと、えこ贔屓はいけませんが、・・・
インドの人面白い!  
また、日本語が上手になるのが、すごく早い人が、とても多いです。

そう言いましたら、インドの師匠、JPさん、
親からもらった名前が長すぎて誰もフルネームで呼んでくれないJ Pさんが、
身を乗り出して訊いてきました。

「インド人には、どんなイメージありますですか、先生さん?」

JPさん(仮名)は、私のインド学を深めてくれる大切な師匠です。

「イメージですか。
私のイメージは大体ステレオタイプで、しばしば、失礼ですよ?」

「失礼でもいいですから、教えてください」

「わかりました。え〜、こういうことを聞きました。
《国際会議をめちゃめちゃにするのは造作もないことだ。
インド人を2人放り込めばいい》。
これはあれですか、私は本当だと思うのですが、
JPさんはどう思われます?」


J Pさん、画面の向こうで大拍手をしています。

「先生さん、その通りですね! インド人はめちゃくちゃですね!」

とても生真面目で、長年日本で働いた経験もあるJ Pさんは、
今はインドで、日本側とインド側の板挟みとなり、苦労されているそうです。

「インドはでか〜いですから、北と南と全然違いますですね。
インド人は、ぜーんぜん、人の言うことを聞いていませんし、
自分の言いたいことだけを、
わーわーわーわー、言いますですね」

「JPさん、大変でしょう?」

「も〜のすごく大変ですね!」

胃が痛いそうです。本当にお大事に。

彼は、同僚や上司が日本に帰省するときは、インドに戻るときに、日本のカレールーと、日本のチョコレートを買ってきてくれるようにお願いするそうです。

「なぜなら、インドのスイーツは、大変に甘いですね、先生。
ですから、インドの人はみな、太っていて、お腹が出ていますです。
私は日本のチョコレートが好きになって、おみやげにお願いしますね。
あと、日本のカレーは、インド人は大好きですね」

ちょっと待ったJ Pさん。

「カレーの本場のインドのひとが、そんなことを言っていていいんですか?」

「おいしいですので、仕方ないですね!」

ということです。

脱線ついでにお話ししました。

「JPさん、さっきの日本人の持っているインド人のイメージですけどね。
ヒゲはやして、ターバンをしているんですね。
でもあのみなさんは、シーク教徒ですよね?」

「先生さん、なぜ知っていますか?」

「えーあの、 映画の "English Patient"で、すごいいい男のシークの人が出てきて、ターバンをくるくると取って、すごい長髪をばさっとするんですね。
あの方達は、一生、髪を切らないそうですね」

「その通りですよ先生さん」

「JPさんね、先生さん、の、さんは言わなくても大丈夫ですよ」

「はい、そうでした。それで?」


「それでね、私だけじゃなくて、インドの人っていうと白いターバンと思っている日本人は結構いるかと思うのですが、その原因というか理由はですね、
昔、明治金鶏インドカレー、というカレールーがありました。
今もあるかもしれません」

「ほうほう・・・先生、でも、明治はチョコレートの会社ですね?」

「そうなのですが、キンケイカレーというのも作っていたのです。
でね、そのパッケージにあるインド人が、まさにシークなんですわ」

「えっ、そ〜うなんですか!」

「そうです、少しお待ちください」

私はもう一台のタブレット(踏んで壊してキーボードは使えないけれど、セカンド・ディスプレイとしては使えます)に手を伸ばし、その写真を探して見せてさしあげました。


これです。

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初期のやつです。
少し、やらしい感じで、モディ首相に似ていると思います。

こっちはなかなかいいですね。


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どちらにしても、濃いです。

この、カレーの人たちを見ていると、思い出す人がいます。
達磨さんです。
中国禅宗の開祖とされる、ボーディダルマ師、日本では達磨大師ですが、こちらも純印度式の、インド人のお方です。揃いも揃って、コクがある顔貌ですね。

せっかく検索してきましたので、並べておきましょう。


まず、モディ首相。

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惜しい、黒髪で黒髭だったら絶対達磨大師。


長谷川等伯画伯による達磨はこちら。

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いつかはJPさんに、日本のポーションミルクの「スジャータ」というのが、
釈迦にミルク粥を捧げて、悟ったばかりのところをすかさず助けた少女の名前だからって、命名したということを伝えて、感動してもらいました。

日本のカレーとチョコレートの好きなJ Pさんと共にこれからも、
日印の交流を、草の根レベルで応援していきたいと思います。

そうだ、来週のレッスンでは、達磨に片目を入れる理由とか、ダルマ落としの郷土玩具についてもお話ししようと思います。

これぐらいだったら、全て日本語で話せてしまう、とても優秀なインドの師匠なのでした。

散漫なお話を、失礼致しました。


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