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エッセイ563. Meは何しに韓国へ(3)困惑したことなど


韓国での3日間に、全然喋れない私はいろいろな経験をしました。

仁川空港から乗った空港リムジン。
途中で停車している間に、運転手さんがスタスタと私たちのところに来て、
人差し指を唇に当てて、
しー
しー
とおっしゃるのでした。
そして、その人差し指を挙げて左右に振る。

友達を見て、しー と言って頷く。
「あ、すみません」
向き直って私に、しー といって頷く。
「すみません・・・」

私たち喋ってはいましたけれど、普通の音量だったと思います。
バスも5割の混み方でした。
おじさんは運転席に戻りながら、グループごとに立ち止まって、
しー
しー
とまた・・うなずきながら歩いていく。

その人たちが喋っているとも、意識にのぼらないほどだったのですが。

運転手さんは少し日本語がわかるようだったので、
またバスが停車してドアを開けた時に、聞きたいことがあって、
質問しに行きましたが、これは無視されてしまいました。

そして、静かにと注意を受けた後の運転が、とても荒かった。
どのぐらい荒かったかというと、NZのオークランドの、
本が読めない、乗っているあいだ、ずっと手すりにつかまっていたくなる、
あの路線バスぐらいには荒かったです。

友達A: ・・・横ゆれすごくない?
友達B・・・橋の上だから、風よきっと・・
私:・・・・・・なんかおじさん怒ってる?
友達C:いいえ、そんなことないわよ、風よきっと。

でも、橋を降りてもバスは細かく揺れ続け、降りたときにはほっとしました。



それから私は、とてもにこやかなお店のおじさんを、困らせてしまいました。

二日目に広蔵市場というところで、
和服に合いそうな素敵な布製のバッグを見つけました。
たっぷりギャザーをとって、ふっくらとした形に縫い上げた、がま口型のバッグです。
一つ買ってから他を見に行きましたが、一つ目のバッグが可愛いので、
もう一つ欲しくなって同じお店に戻りました。



ところが、最初に買った時は何でもなかったのに、
2回目では私は少し、頭が変になっていたのです。

今、1円は、11ウォンぐらいです。
10円=110ウォン
100円=1,100ウォン
当たり前ですが、1000円は、11,000ウォンぐらいです。

最初の頃、
えっコーヒーが3000ウォン! た、たか・・
じゃなくて、300円300円・・

ということが、何度もありました。
でも、二日目ともなれば、28,000ウォンと書いてあっても、
一呼吸おけば、これが3,000円ぐらいだ、とすぐにわかるようになります。
(でも一応いちいち驚きます)


そのお店で、一つ目のバッグを買った時はちゃんと理解していて、
値札に18,000ウォンとあり、当然、現金で18,000ウォンを払えたのです。

ところが2回目に戻ってきた時、
今度選んだバッグの値札にだって、18,000ウォンと書いてあるのに、
2,000ウォンのお札(1,000ウォン札を2枚)差し出してしまいました。



もしもし、そこな旅のお方。
これ、円にしたら220円分の、ウォン、ですけど。


しかし私は勘違いしたらまっしぐら。

ちゃんと脳内で、
(え〜これ、18,000ウォンだから、日本円にして2,000円ぐらいね?)
と思えたのに、1,000「ウォン」札を2枚で払おうとしました。


さあおじさん困った。
おじさんはニコニコしながら値札を指さし、
私の手の中の2枚の1,000ウォン札を指さして首を振り、

ね?

というふうに首をかしげました。

私も首をかしげて、

(18,000ウォンだから、このお札で良いのですよね? はい、2,000ウォン)

という表情をして、1000ウォン札を2枚持ったまま、

ね?

ね?・・・・・・だって・・・😂

日本のお人よ、お気を確かに!
18,000ウォンは、18,000ウォンですぞ?
2,000ウォンでは、18,000ウォンのバッグは買えませんが?

でも、私はそのとき、
「言葉が通じないというのはこういうことなのか」
と思いながら、思考停止に陥っていました。


あろうことか、

(あらぁ・・ちょっとあっちへ行っているうちに、バッグが値上がりしたか、
いえいえ、そんなわけはないから、そうね、
もともとこれは、さっき買ったのより10倍の値段の、高級なバッグなのね?)

と思ってしまったわけです。

18,000円では買えないなあと思い、

「ごめんなさい、買いません。さようなら」

と、後退りをしたら、おじさんは困ったように微笑みながら、
(ちょっと待て)
という身振りをし、レジから計算機を持ってきました。


たたたん、と叩いて、

これ、ウォンね?
18,000 ウォン

ーーはい・・

たたたん
そして、これ、円、ね?
1,980、円

ーーはい・・・・

・・・・・はい?

まだわからない。

私はおじさんに(ちょっと待ってください)という身振りをしてから、
お店の外で立って待っている友達のところへ行って、
「もうちょっと待ってね」
と言って、お店に戻りました。

結局、そのあとちょっとして、勘違いに気がついて、18,000ウォンを払って、お店を出てきましたが、そのとき、友達が助けてくれたのか、自分で気がついたのか、ちょっと前なのに覚えていません。

おじさんも、1,800円相当のバッグを買おうというのに、
ウォンにして220円相当のお札を持って、いつまでも首をひねっているイルボンヨジャに、さぞかし困ったことでしょう。

次に行くことができたら、買い物ぐらいはできるようにしてから行きます。
おじさんごめんなさい。



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ガラパゴス諸島から来た日本語教師 tamadoca
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