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エッセイその40. 夫婦は違っているからいいのかも:脳の作りの章


今朝、夫がお皿を洗っている脇にキャンプチェアを据え、
淹れてもらったコーヒーを、威張って飲みながら喋っていました。

話は、昨日・一昨日と私が投稿した記事、
夫婦の違いについての考察に及びました。

私は普段から 夫をめちゃくちゃネタにしていますが、
たまには(少しは)申し訳なく思い、
こんなことを書いてしまいました、と告白します。

しかし夫は、「なるほど、慧眼ですね!」と笑うばかりで、
ちっとも気分を害したりしません。
改めて考えてみると、なかなかの人物ではないでしょうか。

それは置いておいて、夫がこんなことを申します。

いや〜、昨日、クライテリアンチャンネルで探した「レミゼ」、
観ていたんですが、思っていたものと全然違っていました。


よく聞いてみますと、昨晩、次女と一緒に、
いろいろな映画のおかしなところ、ダメなところをぶった斬るという 
そういうYoutubeの動画を観ていたのだそうです。

「みんな感動しているけど、ここがだめ、ここがおかしい」
と次々と挙げられることが、夫には大変よく納得できたのだそうです。

そこで夫は、クライテリアンチャンネル、すなわち
モノクロの古い名画専門配信チャンネルの中を探して、
過去のレミゼがどんな作りかを、観てみようと思いました。

「最初の、船を引っ張りながら歌うシーンですが、
古い方では、引っ張るのは銅像で、また、全然歌いませんでした。

それでも、少なくとも、一曲目を聴いてから寝ようと思っていたのですが、
神父に赦されて教会を出た後に、山の上で歌うシーンですね、
あれはさすがににあるかと思って観ていたのですが、
ジャン・バルジャンは歌わないで、どんどん歩いて行ってしまいました。
おかしいなあと思って、1時間ぐらい観ていたあとで、諦めて寝ました」

だそうです。

私はしばし絶句してから、言いました。

夫おっと、それは制作年代はいつぐらい?

「え〜、30年代半ばかな? 40年代かもしれません」

あの〜、なんでその古い白黒のレミゼを、ミュージカルだと思ったの?

「えっ、違いますか。・・・あっ、違いますかね」

そうね〜。
サイレントからトーキーに移行したのが、確か20年代半ばだから・・
ミュージカルはまだまだだったんじゃ?
そして、名画を映画化するときに、そのぐらい昔だったら、
いきなりミュージカルは、ないない、じゃない?

「あっ、そういえばそうですね!」

しかもなんだけど、確か、あの映画の元になったミュージカルは、
英国で80年代半ばに作られたと思う。
私が初めてブロードウェーに行った時、
ロングランで何年目! と騒いでいて・・
あれがだいたい、30年前だからね。

「なるほど!」


ここで夫を擁護しますが、私が今言ったようなことを、
夫も私より知っているぐらいなのです。

でも、彼の脳は飛躍しやすい脳と言いますか、
一つのことで「うお〜!」と思うと、
他のことは紐付けがなされずに、一直線ということが、多いのです。
というか、だいたい いつもそうです。

一方私は、一つのことが浮かんでくると、
どうでもいいことも、割と大事なことも、
納豆の糸のように、いろいろ引っ張りながら思い浮かぶ方です。

だから話も長いし、脱線するし、まとまりがつかなくなります。

どっちがいいとかではなくて、お互いに、
それで損をしたり、よかったりすることが、

「いっぱいあるよね」
「あるよね」

と話が一致したのでした。


夫は、人から道を教えられそうになると、
頭がか〜っとして、「もう何も言わないでちょうだい!」
という状態になります。

ところがそれでいて、何年も前に一回しか行かなかった場所に、
ヤマカンで辿り着くことができるのも、夫の方です。


私は、じっくり家で地図を見て、GoogleMapを見ながら歩いても
目的地にたどり着けないことは、結構あります。


その昔、今になってもどうしても腑に落ちない経験をしました。

ニュージーランドで新婚旅行中、
「妖精の滝」というのを目指して歩いてたときのことです。

急坂を、一回も登る部分がなくて、どんどん下っていきます。

「この道でいいの?」

いいんですよ。

「車停めてから、斜め下方向に、ずーっと下っているよね」

その通りです。滝はこの谷の一番下にあるのですから。

「でもさ、下ってばかりだと、見終わったら上がるばかりじゃない?」

当然そうなりましょうな。

「もう薄暗いし、疲れたし、妖精の滝まで行くのは 私には無理かも」

まあまあそう言わず。
なるようになりますから。

それで、あ〜あと思いながら😩 下りに下って、
とうとう妖精の滝に着きました。

帰り道が不安でならなかった私は、

はい! 見ました!
妖精の滝、見ました!
素晴らしい!
さあ、帰途に就きましょう。

と夫を急かしたのですが、夫がなんか、変な方向に向かって登り出したのです。

え〜、ちょっと待って〜な。

と 追いかけて行ったのですが、ものの数分も登らないうちに、

うっそ〜〜! 😲

1時間前に車を停めた、誰もいない駐車場に出て、
そこには私たちのレンタカーが、静かに私たちを待っているではありませんか。


あれはなんだったんでしょう。
そういう夫を愛でる神様がいて、そういう奇跡を起こしたのかしら。

そのことを今言ってみても、夫は忘れているので、もうわかりません。

あるいはあれは、私が目を開けたままで見ていた、白日夢だったのでしょうか。

なんか、人間は死ぬと、
それまで不思議だったことが全部解明されるそうなのですが、
私はこの「妖精の滝の一件」は 是非、死んだ後でいいので、
本当のところを知りたいと思っています。


最後までありがとうございました。


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