![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/97612823/rectangle_large_type_2_54f9957a5ef537cd9092cbaff82f22ec.png?width=1200)
日本語教師日記153. 母語にひっぱられる学習者(2)明日会っています は、間違い
SNS投稿で、写真やビデオが大量で重たくて、
あのマーク(名前わからないけど)が出てきました。
コロコロコロコロ、一生懸命回っています。
このときのメッセージが、「完了しています」でした。
アメリカ渡来のSNSですから、
全てを英語から日本語に訳しているわけですが、
この、「完了しています」はおそらく英語でよく見る、
processing=処理中です
の直訳なのでしょうか。
私がふと気になったのは、この場合に
「完了しています」と言うと、
ちょっと現状からずれている点です。
processing であるかはわかりませんが、
「完了しています 」 と訳しているのは、
「今処理中で、それが完了する途中のところです」
と表現しようとしているのだと思うのです。
でも、「完了しています」は、
「もう(すでに)完了しました」の意味ですね。
完了しようとしているプロセスの最中ではありません。
他の例でいうと、
A:すみません、note展の会場はこちらですか?
B:あ、note展は昨日終了しています。
のように、今まさにせっせと終了中ではなくて、もうすでに終わってしまっている、という意味かと思います。
だから、処理中であるとのメッセージが「完了しています」だと、
ちょっと違和感があったのかもしれません。
(コマケーナ! と言わないでくださいね)
ときどき、英語からの直訳でしょうか、「終了中」とメッセージを見ることもあり、日本語的には「終了」は、終わることそのもの(終了します・終了しました)ですから、厳密に言うと、「終了中」もちょっと厳しいかな。
さてここからが本題ですが、今日、日本語能力検定試験N1軽く合格の超上級者が言いました。
明日、上司と会社で会っていますから。
惜しい、英語なら、I'm meeting my boss tomorrow at the office.
で、I'm meeting….は全く正しいのですが。日本だと「はいやり直し」となります。
正解は、会う予定
本決まりでなければ、会うつもり または単に 会います でもいいです。
考えてみれば、日本語と英語の 現在・過去完了形
【なになにしています、していました】と
【I am ~ing, I was ~ing】
は、全く同じと言うわけではありません。
🔷今まさにそれをしていると言う意味の、
現在(過去)進行形は・・
例) 赤ちゃんは今寝ています。
The baby is sleeping now.
例) 昨日の4時ですか? 仕事をしていましたよ。
4pm yesterday? I was working.
これは、英語と日本語で同じだと思います。
でも、
🔷🔷 今まさにしているわけではない、習慣的なことや、
続けていることとなると、どうでしょう。
四月からここで働いています。
I have been working here since April.
は、同じだと思えるのですが、
毎朝走っているので、雨の日はがっかりです。
のような習慣的なことは、英語にすると、be ingを使わず、
I run everyday….
だそうです。
🔷🔷🔷 それから、上記よりもっと継続的なこととして
日本語では「〜ています・いました」を使いますね。
東京に住んでいます。
任天堂で働いていました。
継続的なアクションではなく、継続的な状態です。
同じことを言いたいとき、英語ではbe ingは使いません。
I live in Tokyo. とか、
I work for Nintendo.
です。
たまに、I am living in NY.
というふうに、be ingを使います。
ところがこれは、一時的に何かの理由でそこに住んでいるという意味なのだそうです。
なので、
「NYに住んでいます」は、普通は "live in NY"となります。
語学においては、「化石化」ということが起きるのだそうです。
最初に習ったことが化石のようにこびりつき、
後から入ってきたことは なかなか入っていかず、
使いこなせないということです。
だから私も、なんとかの一つ覚えで、動詞も形容詞も、英語は貧しいです。
読めば、「こんなふうにも言えるのね」と思うのですが、
自分が話すとなればだめだめです。
ほかに、I am ~ing は、未来に起きることとして使われます。
日本語の 「〜ています」にはありません。
これが、今日の超上級者が間違えた部分です。
I will meet him.
I am meeting him.
超上級者は、相手と会うアポイントメントができていましたので、英語話者としては当然の、I am meeting him.を使ったのですが、日本人なら誰が聞いても、
あれ?
となるところです。
I will meet him. も、I am meeting him. も、同じように聞こえますが、
will は、そのつもりだったり、希望だったりする一方、
I am meeting him.は、予定として確定したことなのだそうです。
そこから、日本語でもそうかと思って、「明日会っています」「来週、友達に話しています」というような、よく聞くと奇妙な日本語が飛び出すわけです。
「私は明日母に会っています」
と言う場合は、はっきりと、「その時には会っているはずである」という意味になりますね。
この辺を間違えても、通じることは通じると思いますが、
やっぱり授業ですので、きっちりとお伝えします。
みなさん頭を抱えて、
「日本語って、なんで習えば習うほど難しくなるのですか?」
とおっしゃいます。
私は、
「本当にいいことですね。私が失業しない所以ですね」
と、しゃあしゃあとお答えしています。
生徒ごめんね!
いいなと思ったら応援しよう!
![ガラパゴス諸島から来た日本語教師 tamadoca](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30283394/profile_987b806594c9116f849faf698ef2a4e5.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)