エッセイ467.国際小包はやっぱり大変
しばらく前に友人が、海外で暮らす子供さんに送った「おふくろ便」
のことを書いておられました。
私が娘宛便に送るものと共通のものがあったので、なんとなく嬉しかったです。
新米とか、柿の種ですね。
コメント欄で盛り上がりました。
ご存知の方も多いと思いますが、今、国際郵便物は、
内容・重さ・値段などを、指定の「ラベル」に自宅のPCで入力し、
それをプリントして郵便局へ持っていくことになっていて、これがなかなか面倒です。
日本にしかないものが、結構あって、それをなんと英語で説明するかということです。
お煎餅はrice cracker です。
個数と重さと値段を記入するようになっていますが、
個数と重さと値段がいちいち違うものを入れるので、最初は悩みました。
今では お煎餅だけの総重量を、袋の数で割り、
1袋あたりの値段も違いますから、合計額を袋の数で割ります。
正しくはないが、間違ってもいない。
玉虫色の苦肉の策です。
ご飯関係は、すしの子、ふりかけ、釜飯の元(レトルト)です。
これはかつて、NZの税関で申告するときに、一生懸命説明しました。
「炊いたライスに・・これをふりかけて、味をつけるもので・・」
みたいに。
恥ずかしかったです。
で、
「ご自分で作ったものではなく、市販の商品ですね?」
「しっかり封がしてあり、開けていないですね?」
と訊かれ、イエスと言ったら通ったので、それに縋って以降はすべて、
rice spice
と書きます。
なんだか、まずそうですよね。
今の私は、食べ物で何か訊かれたら、
市販の製品であり、封がしてありますと答えることにしています。
郵便局では、担当の方が、ラベルをよくお読みになります。
それは、向こうで、ラベル表記のために引っかかって開けられたり、
自費で戻されたり、それが嫌なので、
「届けてもらえず、捨てられても良い覚悟」で出す、
ということになってしまうことがあるため、
それをさせまいとする、深い親切です。
「すしの子って、スシ・パウダーでいいですか?」
「う〜ん・・・大丈夫でしょう」
「ふりかけは?」
「ライス・スパイスでいいでしょう」
というようなやりとりがあるたびに、だんだんわかってきて、
荷物を送るのが楽になってきます。
長女はアトピー気味で、枇杷の種から作ったサプリとか、
枇杷茶とか、肌に合ったローションなどもよく送ります。
サプリなら多分引っ掛からなかったのですが、
栄養タブレット
と記入してしまったときは、
「タブレットって、意外と開けられます」
と言われて、悩んだけれども、仕方ないと思ってそのまま出しました。
それが引っ掛からなかったので、そのあとは堂々とタブレットと書いています。
「コスメティックス」と書くと、もっと具体的にお願いしますと言われます。
スキン・ローション、スキン・クリームなどと書かなければいけません。
で、必ず、
「スキン・ローションは、スプレー缶ではないですね?」
と言われます。
なんと言っていいかわからないので、つい、手ぶりをしながら、
「いえこの、このように開けて、こう、ぎゅっと・・逆さにして・・」
と言っていた時期がありますが、今はもう慣れたので、ジェスチャーはせず、単に
「スプレーではありません」
と言えるようになりました。
今オーストラリアは夏で、網戸に穴でも空いているのか、
蚊が飛び回っているとかで、蚊取り線香を所望してきました。
金鳥の蚊取り線香のうち、一番強いのを選んで、他のものと一緒に箱詰めにしましたが、
封はせず、定規、ガムテープ、ハサミ、段ボール用カッターを持って郵便局に行きました。
蚊取り線香の缶そのものは、なんとなく禍々しい感じで、万一開けられて見られると、
これはなんでしょうか?
的な状況になると予測できたので、箱を作り直すことも考えて行ったのでした。
家で作ったラベルに載せる表記を、「incense」(お香)としてあります。
お線香は、お香のまっすぐなやつだから「線・香」なのでしょうが、
ぐるぐる渦巻きになっているお香だから、と言う意味の言葉は、
英語でも日本語でも見つかりません。
ぐるぐるしていても、「蚊取り・線・香」です。
悩みました。
でも、
「蚊をとるのである、蚊を殺すものである」
だから、【モスキート・キラー 】
などと書くと、絶対引っかかると思いました。
「お香であるのには違いなく、蚊がたまたま、煙に当たって自主的に床に落っこちても、
それはこの「お香」のせいではないかもしれない」
というこじつけを頭の中で作り上げてから、郵便局へ行きました。
案の定、一回奥に引っ込んだ美人の郵便局員さんが、
少し困ったような顔をして、私の方へ戻っていらっしゃいました。
(大体毎回、一度で済みません)
「あのこの・・蚊取り線香なのですが、
向こうで、読む人によっては、箱を開けることがあると思います」
「お香、が引っかかりましたかね?」
「そうですね。というのは、貨物にはペットも乗っていることがあるため、
何かこう、爆発したり、煙や匂いなどを発する可能性のあるものは、
チェックされるんですね」
「ああ・・・そうなんですか」
「はい、申し訳ありません。
その際は、成分をチェックするので、この製品の成分を今から調べてまいります」
「すみません」
・・・私も、金鳥のHPを開け、成分を見て見ましたが、ちんぷんかんぷん。
しばらく経って担当の方が戻ってきて、
「主成分がピレストロイドで、これは送っても良いことになっているのでいいとは思うのですが、捨てられる可能性もあります。お急ぎですか?」
「はい、割と急ぎです」
「結果として通過できても、届くのがものすごく遅くなる可能性があります」
「わかりました、ではやめます」
「次回、遅くても構わないようなときに、お送りになったらいかがでしょうか」
「そうします。ではちょっと、荷造りを改めてきますので・・・」
私は、4時過ぎで人気のいなくなった「ゆうちょ」コーナーで、
箱から蚊取り線香を取り出し、定規で測って、箱の高さを変える線を引き、
ギコギコと段ボール屑を落としながら切れ目を入れて、
箱を小さくして荷造りをしました。
カウンターに持っていくと、
「本当に申し訳ありません」
とおっしゃいます。
「いえいえ・・でもこういうふうにラベルを作るようになって、
もう少し年配の方とか、PCやタブレットを使わない方などは、
お困りでしょうね」
「はい・・お困りだそうです」
無事に、蚊取り線香を抜いた荷物は、EMSという、
空きがあったらものすごく早く着く便となり、四日でシドニーに到着しました。
そうそう、つい昨日ですが、また同じ郵便局で、同じ方に担当していただき、
もう一つ、荷物を送りました。
「ライス・スパイスというのは・・・」
「お赤飯の元と、ふりかけです」
「種とか入っていますかね」
「いません」
堂々と言って送り出しましたが、郵便局を出た途端、
(乾燥してるけど、胡麻やあずきは種じゃん!)
と思いつきました。
種って、蒔くときは、みんな乾燥してますよね。
ああ私は、ご禁制の品を送り出してしまったのかしら。
まあ、もう、遅蒔きとんがらし。
私は今、郵便局の方が、日本で一番親切なんじゃないかと思うようになりました。
いつもみなさん、ありがとうございます。
こういうのが本当に過保護なダメ母なところです。